当社は1957年、我が国初のチェンコンベヤをトヨタ車体(株)刈谷工場へ納入して以来、今日まで数多くの自動車組立ライン向け搬送システムを手掛けてきました。また、並行して、ドア組立ラインやエンジンライン、塗装ライン、さらにはエンジン検査装置など各種周辺システムを自動車生産の広範な分野へ納入。コストダウン・生産合理化に実績をあげ、国内外の自動車メーカーから高い評価を頂いています。

その周辺システムの中から、2004年8月に開発した塗装システム「E-DIP(イーディップ)」、およびエンジンの品質・機能検査を行う「エンジンテストベンチ」の2製品を取り上げご紹介します。

環境対応の新塗装システム「E-DIP」

自動車塗装システムE-DIPは、下塗り塗装工程向けの新型搬送システムです。塗装プラントなどのエンジニアリング大手である(株)大気社の塗装技術と、当社の搬送技術を融合して共同開発しました。

E-DIPは、下塗り塗装の「前処理・電着塗装」工程で、従来のチェンコンベヤに代えて新たに開発したディッピングキャリア(写真1)を採用。液剤・水使用量を大幅に削減して環境負荷の低減を図るとともに、塗装品質の向上やランニングコスト削減、生産リードタイムの短縮などを実現しました。

  • スイングソーターの納入1号機

    写真1: ボディを搬送するディッピングキャリア

  • E-DIP概念図

    図1: E-DIP概念図

環境負荷の高い塗装工程

近年、自動車メーカーでは品質や生産効率の向上に加え、CO2やVOC(揮発性有機化合物)削減など環境問題への対応を重視しています。特に塗装ラインは、乾燥と塗装を繰り返す多くの生産プロセスを有する工程であり、塗料、水、電気、ガス(油)などの燃料を大量に使用するため、その合理化・効率化が急務となっていました。

自動車の塗装ラインは、大別すると下塗り・中塗り・上塗りの3つの工程から構成されます。下塗り工程はさらに、プレス加工後にボディに付着した防錆油・潤滑油や鉄粉などを洗浄して塗料を鋼板に付きやすくする「前処理工程」と、防錆塗装を行う「電着塗装工程」に分かれています。従来、下塗り工程での塗装は、オーバーヘッドタイプのチェンコンベヤにボディを吊り下げて搬送し、洗浄液・電着液を満した槽に繰り返し漬けるというものでした。

E-DIPでは、ボディをディッピングキャリアで搬送して塗装槽への入出時の角度や槽内での動きをコントロール(図1)。槽内でボディを揺動することにより細部のゴミや気泡を除去して塗装品質を向上したほか、出槽時の角度を従来方式よりも大きくすることで液切れを良好にして液剤の持ち出し量を低減しました。これにより水洗時の使用水量や排水に混入する液剤量の低減などランニングコスト抑制も実現しました。

さらに、ディッピングキャリア方式は入出槽時・水洗時の距離を短くできるため、チェンコンベヤ方式に比べライン長さを大幅に削減することが可能なうえ、槽自体も小型化でき生産リードタイム(パスタイム)の短縮化にもつながります。

さまざまな効果を創出

1)入槽・出槽を最適化

ボディのサイズ・構造に応じて、搬送ピッチ、入槽・出槽角度、およびその速度を最適な状態に設定でき、多品種混流生産への対応が可能です。また、工程短縮やボディの次工程への液持ち出しを最小限に抑制、入槽時にボディに無理な水圧がかからないため変形を防止します(写真2)。

槽内、エア抜け状態

写真2: 槽内、エア抜け状態

2)塗膜品質を向上

前処理の第一ステージでは、ボディを急傾斜させ大量の水を流し込むことにより、ボディ内部の鉄粉ゴミを効果的に外部へ洗い出すことが可能。このため、次工程への鉄粉ゴミの持ち込み量を大幅に低減でき品質向上が図れます。
ボディを液中で揺動させながら搬送するため、ボディ内のエアポケットがなくなり、全体をくまなく処理できます。特に、前処理の化成工程と電着塗料工程においては、ボディを揺動することで均一な膜厚形成が可能です。
スプレーゾーンにおいては、ボディ上に搬送用レールやアームなどの遮へい物が一切ないため、天井角度を急傾斜にでき、ボディへの水滴落下が防げます。
ボディ搬送の可動部がすべて装置片側に配置されているため、工程内へのグリース落下や磨耗による鉄粉などの落下が皆無です。

3)液の持ち出しを低減

次工程への液の持ち出しを最少に抑えることで、給水(=廃水)量を40%以上、薬品・塗料ロスを25%以上削減します。これにより、廃水処理装置、純水装置、回収フィルタ装置など関連設備のサイズを小型化することができます。

4)容易なメンテナンス

従来のコンベヤ方式ではバーチカル部でレールやチェンの磨耗が発生するため、定期的な交換が必要でした。E-DIPは水平走行のため磨耗がなく、装置(工程)内にもコンベヤレールなどの遮へい物がないため、煩わしいメンテナンスや交換作業は不要です。
走行レールとキャリアは槽の片側に設置する構造。前処理装置と電着装置とを平行に配列し、両装置の間にE-DIPを集約配置することでメンテナンスが容易になり、作業環境も改善します。

5)ライン長短縮・省スペース

キャリアは装置内に収納できるため、従来必要だった空ハンガーのストレージ用スペースは不要です。
ボディの急傾斜が可能なため槽の入出口スロープ角度は最大でよく、槽全体をコンパクト化できます。また、出液時スプレー後の水切りゾーンも同様で、装置全長が従来方式に比べ25%以上短縮できます。

6)工程の選択が可能

ディップ工程やシャワー工程において、車種により処理方法の選択が可能。これにより処理の違う複数車種を同一ラインで生産することができます。

実証試験を実施

当社の実験場において、お客さまの要求仕様を満足するための各種実証試験を行っています。特に液の持ち出し量については自動車メーカーと共同で測定を実施、効果の確証が得られています。

自動車心臓部の品質・性能検査装置「エンジンテストベンチ」

当社は自動車生産ラインの搬送システムだけでなく、自動車の根幹をなすエンジンの完成検査の分野でも先駆的な製品を開発してきました。1962年には、国内で最初の自動車エンジンテストベンチ(ターンテーブル方式)をいすゞ自動車(株)藤沢工場に納入。現在までに、約140ライン・1,700台以上のテストベンチを世界各国のメーカーへ納入してきました。

ターンテーブル方式とインライン方式

テスト装置は配置・搬送方式により、ターンテーブル方式とインライン方式の2つに大別されます。ターンテーブル方式は、直径20m前後のターンテーブル上に10~30台のテストベンチを配置、テーブル本体がメリーゴーランドのように旋回します(写真3)。インライン方式では、テストベンチを直列に1列、または複数列に配置します(写真4)。

ターンテーブル方式は、検査員の移動距離を少なくできるのが最大の特長。各々の検査員が特定の検査を受け持ち、一連の検査を分業することにより、検査員個人の能力差の影響を極力少なくできます。また、テスト準備工程からテストベンチまでの搬送経路を短くできるため仕掛品が減少するとともに、テストベンチの旋回が検査作業のペースメーカーとなり、作業の遅れを容易に発見して対応することができるなど、生産効率が向上します。一方、インライン方式は、テストベンチ台数1台の小規模生産から対応することが可能です。異音検査の場合などには、各テストベンチを防音壁で囲い検査環境を向上できる利点もあります。

エンジンテスト装置の納入は、1980年代前半頃まではターンテーブル方式が圧倒的に多く、その後は徐々にインライン方式との差が縮まり、90年代に入ると逆転しました。これは、大量生産から多車種混流生産、高品質追求生産へと続く自動車生産方式の変遷を反映した結果だといえます。

  • ターンテーブル方式

    写真3: ターンテーブル方式

  • インライン方式

    写真4: インライン方式

  • モータリングベンチ

    写真5: モータリングベンチ

計測技術

ホットテストでは、検査員の五感による検査品質を向上させるため、ファイアリングベンチ上で運転されるエンジンの状態を、いかにして実際の車両搭載状態に近付けるかが重要な課題であり、エンジンのマウント手段が試行錯誤されてきました。現在では、車両で使われるインシュレーターマウントで支持される子パレット方式が主流となっています。

検査方式が五感検査から定量検査に移行することにより、要求される計測項目は飛躍的に増大しました。エンジンの完成要件としては、正常な燃焼状態を決める吸気(燃料)、圧縮、電装、潤滑、タイミングの5大要素と、フィーリングと品質面からの要件としての音・振動と洩れの2大要素があります。この7大要素それぞれに対して5~10の必要検査項目があり、各項目ごとに計測物理量とその計測条件・センシング手段、データ解析と正誤判定方法を確立しました。また、センシングのための条件と不良改修の直交率の面から、各テストに対する最適な工程配置を決定しています。現在、プラグギャップつぶれ、同取り付け不良、タイミングベルトずれ、点火タイミングなどのセンシング技術、判定ソフトを各20種類近く開発、数多くのユーザーから高い評価を得ています。

コンテナベンチ

ASEANなど発展途上国での生産ラインでは、五感検査に対する検査環境の向上を狙いとして、防音ルーム内にテストベンチを設置するインライン方式が主流となっています。ただ、この方式ではベンチをルーム内へ搬入が可能なサイズに分割し、現地で再組立する必要があるため、復元時の品質は途上国の作業品質に影響されることが懸念されていました。また、自動車メーカー各社の工場立ち上げにおけるリードタイム短縮施策に伴い、現地据付期間・生産準備期間の短縮に対する要求が高まってきました。

この要求に対応するため2001年、防音ルーム一体型のテストベンチ「コンテナベンチ」を開発。翌年、国内ユーザーへ1号機を納入、現在までに欧州、北米なども含め35台を納入しています。

コンテナベンチは、輸送サイズと作業空間確保(写真6-1、6-2)の両立を計るため、ルーム壁を左右上下に伸縮式として収縮時は標準輸送コンテナのサイズになります。これにより現地据付期間は1日、工場出荷時の品質も確保できるようにして、現地調整レスを実現しています。

  • コンテナベンチ 収縮(運搬)時

    写真6-1: コンテナベンチ 収縮(運搬)時

  • コンテナベンチ 拡張(設置)時

    写真6-2: コンテナベンチ 拡張(設置)時

環境エンジンに向けて

将来、FCEV・EV*の台頭に伴い、内燃機関としてのエンジンは減少していくものと予想されています。当社はパワートレイン検査システムのリーディングカンパニーとして、時代の変化や顧客ニーズを先取りして研究開発に取り組んでいく方針です。

近年、自動車メーカーの現地生産の拡大に伴い、マテハンシステムにおいてもグローバル品質の確保や世界同時立ち上げが厳しく求められています。また、個々の設備についてもさらに「環境」「品質」「省エネ」「コストダウン」への取り組みが重要なポイントとなっています。当社は今後も自動車生産ラインに幅広く関わっていく中で、物流技術を生かした開発を手掛けニーズに対応した製品・システムを提供していく考えです。

  • *FCEV: Fuel Cell Electric Vehicle(燃料電池車)
  • * EV: Electric Vehicle(電気自動車)

< DAIFUKU NEWS No.175 (2005年3月)より >