気候変動
基本的な考え方
ダイフクグループは、国際的な枠組みである「パリ協定」や「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」などの気候変動に関する法規制を支持し、脱炭素社会やSDGsの実現に向けた環境経営を推進しています。エネルギー使用量の削減やものづくりを通じた環境貢献に積極的に取り組み、エネルギー使用量、CO2排出量などを毎年度行政に報告しています。
「ダイフク環境ビジョン2050」(2023年5月に改定)では、「気候変動への対応」を重点領域の1つとして設定し、製品・サービスを通じたCO2排出量の削減やサプライチェーン全体でのCO2排出量の削減、再生可能エネルギーの導入などに取り組んでいます。
今後もステークホルダーとの対話を通じて事業活動および製品・サービスの改善に努め、社会の発展に貢献するとともに、企業価値向上に挑戦していきます。
TCFD提言に基づく開示
当社は、2019年5月にTCFD※(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明しました。TCFD提言の気候関連財務情報開示の中核要素であるガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標に沿って情報を開示しています。2023年度に改めてシナリオ分析・財務影響評価を実施する予定であり、随時開示内容の見直しを進めていきます。
- ※Task Force on Climate-related Financial Disclosures
ガバナンス
当社は気候変動を含むサステナビリティ経営に関する審議項目の上程、報告、情報提供を適宜行うサステナビリティ委員会(委員長:CEO)を設置しており、各事業部門長・関係執行役員を委員に充てています。取締役会は、サステナビリティ委員会から報告を受け、必要な施策を決議します。
サステナビリティ委員会は、当社グループの持続的な成長を支える「サステナビリティ経営」戦略を立案・推進します。気候変動に関しては国内外のグループ全体にわたる省エネルギー、再生可能エネルギーの導入、環境配慮製品に関わる方針決定や、関係法令および情報開示への対応を行います。
戦略
シナリオ分析
気候変動リスクに対する事業戦略のレジリエンスを評価するため、気候変動関連のリスクと機会について、21世紀中の気温上昇が①4℃となる場合(現状のまま世界が温室効果ガスを排出)、②1.5℃未満となる場合(温室効果ガスの排出規制が急速に強化される)の2つのシナリオに基づいて分析しました。その結果、①では台風や水害など、②では炭素税課税などによる事業コスト増加の影響が見込まれますが、いずれのシナリオにおいても自動化投資の促進や環境配慮製品のニーズの高まりが見込まれ、コストを上回る製品・サービス需要が拡大する見通しであることが示されました。
シナリオ分析のプロセス
- サステナビリティ委員会事務局および外部専門家によるワーキンググループを設置
- 気候変動における物理的リスクシナリオと移行リスクシナリオを設定
- 各シナリオで将来起こりうる事象とバリューチェーン(調達、直接操業、製品・サービス需要)への影響をリスクと機会の観点から特定
- 特定した自社への影響ごとに、「ダイフクの備え」として現在の取り組み・今後の展望を整理
選定した気候シナリオ
- 物理的シナリオ:IPCC AR5 RCP8.5シナリオ(21世紀中の気温上昇4℃相当)
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- 洪水や気温の上昇について、深刻な影響
- 日本全国では、21世紀末における降水量が1986~2005年平均に比べ約25.5%増加、真夏日(日最高気温30℃以上)が52.8日増加
- 移行シナリオ:IPCC SR1.5(21世紀末までの気温上昇を1.5℃未満に抑える)、IEA SDS(2℃目標と整合)
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- CO2排出量を2050年前後には実質ゼロに
- 先進国で2025年に約6,300円/t-CO2、2040年に約14,000円/t-CO2の炭素税が課税
気候変動関連のリスクと機会
シナリオ (2050年) |
事象 | 影響 | ダイフクの備え | ||
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物理的シナリオ (4℃上昇) |
リスク | 急性 | 大雨の増加(洪水) | 入出荷物資・設備の毀損、自社工場等の操業停止 |
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慢性 | 年平均気温の上昇 | 夏場の高温による工場等での従業員の熱中症リスク |
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機会 | 物理 | 気温上昇による顧客からのコールドチェーン・Eコマース・省力化需要の高まり | コールドチェーン・Eコマース・省力化に向けた自社製品・サービス需要の増加 |
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移行シナリオ (1.5℃上昇) |
移行 | CO2排出規制強化による顧客からの効率改善(省エネ)需要の高まり | 顧客要望変化への対応が可能に(顧客のCO2排出削減に貢献する製品・サービス需要増) |
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リスク | 政策・法規制 | CO2排出関連規制の強化 | 炭素税等による調達コスト・操業コストの増加 ⇒グローバルのCO2排出量(2018年度)約40,000tの場合、炭素価格14,000円/t(2040年)とすると5.6億円/年 |
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移行リスク対策
当社グループのCO2排出量の内訳は、自社の生産活動に伴うCO2排出量が全体の1%程度であることに対し、顧客でのエネルギー使用に伴うCO2排出量が約30%を占めています。顧客による物流、生産における環境負荷低減ニーズのさらなる高まりを織り込んで、環境配慮製品(83製品:2023年5月時点)の開発・販売に注力します。また、事業運営における脱炭素化を進めるべく、グローバルの主要生産拠点の再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査や同エネルギー導入計画の立案を行っています。
物理的リスク対策
当社グループ全体で実施しているリスクアセスメントの中で、台風や洪水を含む自然災害を重要な影響を与えるリスクとして特定しています。サプライチェーンも含めた事業継続計画の実効性向上のため、事業影響度の分析や各事業部門における体制表の見直しを実施するとともに、生産拠点の多様化や重要部品における2社購買の実施など供給停止のリスクを低減しています。さらに生産および工事・サービス現場においては、高温化に対する作業環境の継続的な改善や安全衛生管理の徹底に努めています。
リスク管理
当社グループは、気候変動リスクを重要度の高いリスクの一つと位置付け、サステナビリティ委員会が一元的に管理しており、外部専門家の見解を取り入れ、必要に応じて取締役会に報告します。
指標と目標KPI
当社グループは、「ダイフク環境ビジョン2050」の中で「気候変動への対応」を重点領域の一つとし、以下の目標※を設定しています。2023年度以降は、こちらのKPIにもとづき実績を開示します。
- ※パリ協定の達成に向け、企業に対し科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出量削減目標の設定を求める「SBT(Science Based Target)イニシアティブ 」に目標を申請中です。2023年度中のSBT認定の取得を目指しています。
KPI (実績評価指標) | 2030年度(目標) | 2023年度(目標) |
---|---|---|
自社CO2排出量(スコープ1+2) | 50.4%削減(2018年度比) | 21.0%削減(2018年度比) |
購入した製品・サービスに伴うCO2排出量 (スコープ3 カテゴリ1) |
30%削減※1(2018年度比) | サプライチェーンCO2削減プログラム※2運用開始 |
販売した製品の使用に伴うCO2排出量 (スコープ3 カテゴリ11) |
12.5%削減(2018年度比) |
- ※1スコープ3のカテゴリ1およびカテゴリ11合わせての目標
- ※2調達先におけるCO2排出量削減に向けた取り組み(目標の共有と削減対策支援など)に関する当社独自の枠組み
なお、改定前の「ダイフク環境ビジョン2050」における、気候関連の指標と目標は下記をご参照ください。2022年度の実績は、以下の通りです。
KPI (実績評価指標) | 2030年度(目標) | 2022年度(目標) | 2022年度(実績) |
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自社CO2排出総量削減率(2018年度比) | 25%以上 | 5% | 34% |
環境貢献物件※1売上高比率 | 70%以上 | 46% | 72% |
CO2削減貢献量※2 | 累計30万 t-CO2以上 | 60,000 t-CO2 | 121,356 t-CO2 |
サプライチェーンCO2削減プログラム※3参加企業率 | 50%以上 | 34% | 2021年度に目標を達成(36%)し、制度の見直しを検討 |
- ※1ダイフクエコプロダクツ認定製品などを通じて、お客さまに環境配慮の面で貢献した物件(プロジェクト)
- ※2お客さまに納入した製品・サービスから排出されるCO2排出量を、基準である2011年度時点の製品・サービスによるCO2排出量から差し引いたもの
- ※3調達先におけるCO2排出量削減に向けた取り組み(目標の共有と削減対策支援など)に関する当社独自の枠組み
CO2排出量に関するデータ
CO2排出量(地域別)
CO2排出量(スコープ1+2)
CO2排出量(スコープ3)
CO2スコープ3における内訳
(t-CO2)
カテゴリ | 2018年度 (基準年度) |
2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 |
---|---|---|---|---|---|
1. 購入した物品サービス | 839,593 | 892,100 | 871,370 | 1,021,516 | 1,235,138 |
2. 資本財 | 10,653 | 36,502 | 10,013 | 15,923 | 17,316 |
3. 燃料・エネルギー関連の活動 | 1,232 | 2,163 | 2,098 | 2,298 | 2,328 |
4. 上流の輸送・流通 | 3,205 | 4,257 | 3,968 | 4,663 | 6,829 |
5. 事業において発生した廃棄物 | 532 | 517 | 526 | 565 | 604 |
6. 出張 | 542 | 568 | 576 | 588 | 601 |
7. 従業員の通勤 | 1,484 | 1,546 | 1,585 | 1,615 | 1,638 |
8. 上流のリース資産 | - | - | - | - | - |
9. 下流の輸送・流通 | - | - | - | - | - |
10. 販売した製品の加工 | - | - | - | - | - |
11. 販売した製品の使用 | 898,915 | 539,173 | 528,598 | 519,120 | 650,602 |
12. 販売した製品の使用後処理 | 801 | 5,757 | 5,637 | 5,977 | 6,505 |
13. 下流のリース資産 | - | - | - | - | - |
14. フランチャイズ | - | - | - | - | - |
15. 投資 | - | - | - | - | - |
合計 | 1,756,957 | 1,482,583 | 1,424,371 | 1,572,265 | 1,921,561 |
- ※スコープ3の算定範囲・算定方法は以下の通りです。
カテゴリ | 範囲 | 算定方法 |
---|---|---|
1. 購入した物品サービス | グローバル | 国内データは製品・資材の購入金額に係数を乗じて算出。海外データは生産実績にもとづき、国内データと比例させて算出 |
2. 資本財 | 単体 | (株)ダイフクの有形固定資産当期増加額(有価証券報告書のリース資産を除く)に係数を乗じて算出 |
3. 燃料・エネルギー関連の活動 | 国内グループ | 国内グループのエネルギー使用量(スコープ1+2)に係数を乗じて算出 |
4. 上流の輸送・流通 | 単体 | (株)ダイフクの販売活動に伴うCO2排出量に加え、原材料(鋼材、アルミ)の1次調達先からの運搬距離および重量により算出(新トンキロ法) |
5. 事業において発生した廃棄物 | 国内グループ | 国内グループの廃棄物排出量に種別ごとの係数を乗じて算出 |
6. 出張 | 国内グループ | 国内グループの社員数に係数を乗じて算出 |
7. 従業員の通勤 | 国内グループ | 国内グループの地区別社員数に係数(都市区分)を乗じて算出 |
8. 上流のリース資産 | 当社グループの事業と関連性がないため、算出していない | |
9. 下流の輸送・流通 | 当社グループの事業と関連性はあるが、当社グループは荷主であるため、輸送に伴う排出量はカテゴリ4にて計上している。海外については、物流に関するデータを入手できていないため算出していない | |
10. 販売した製品の加工 | 当社グループの事業と関連性がないため、算出していない | |
11. 販売した製品の使用 | 国内グループ | 国内グループにて受注した製品の稼働に伴うエネルギー量に、年間売上数と製品寿命を乗じて算出。出荷先の国ごとの排出係数も加味した |
12. 販売した製品の使用後処理 | 単体 | (株)ダイフクの販売した製品が全量リサイクルされる前提で、重量に係数を乗じて算出 |
13. 下流のリース資産 | 当社グループの事業と関連性がないため、算出していない | |
14. フランチャイズ | 当社グループの事業と関連性がないため、算出していない | |
15. 投資 | 当社グループの事業と関連性がないため、算出していない |
主な取り組み
気候変動への対応
当社グループが提供するマテリアルハンドリングシステムは、世界中のお客さまの物流施設や工場などで稼働しており、当社のCO2排出量の内訳は、製品稼働時のエネルギー使用に伴うものが多くの割合を占めています。そのため、環境配慮に基づく製品設計およびシステム全体の稼働最適化を通じた省エネ対策を推進しています。加えて、当社の生産活動はその多くが組立工程であり、部品製造などサプライチェーン上流に位置するサプライヤーによるCO2排出量も多くを占めています。そのため、当社は「サプライチェーンCO2削減プログラム」として、主要サプライヤーを対象にCO2排出量の現状把握と削減目標の設定を依頼しています。今後、「ダイフク環境ビジョン2050」の実現を目指すにあたっては、お客さまおよびサプライヤーとの連携を強化することが不可欠であると認識し、取り組みを深化させます。
事業運営においては、主に国内外生産拠点における省エネルギー(以下、省エネ)対策のさらなる推進と、再生可能エネルギー(以下、再エネ)の導入に取り組んでいます。2022年度は、事業部門ごとに設計・開発から生産にいたるまでの省エネ計画を策定し、それぞれの職場で対策を実行しました。滋賀事業所では、第三者によるエネルギー使用状況の調査およびコンサルティングを受け、各工場棟でさらなる省エネに向けた具体的な取り組みを進めています。海外拠点においても空調設備の高効率なものへの更新や電動フォークリフトへの切り替えなどに取り組んでいます。また、2022年11月より滋賀事業所で使用する電力をすべて再エネ由来へと切り替えました。2023年度から2024年度にかけて、中国、韓国、タイ、台湾、米国における各拠点においても太陽光発電システムの設置を計画しており、引き続き再エネの導入を加速していきます。2022年度末時点の総電力使用量に対する再エネ由来の電力比率は29.1%となり、2021年度末の9.8%から大きく上昇しました。
再エネ調達状況および予定
2022年度
- 当社滋賀事業所の使用電力をすべて再エネ由来へ切り替え
- Daifuku (Thailand) LimitedのPinthong工場とChonburi工場において再エネ証書の購入
- Contec Americas Inc.のMelbourneオフィスで再エネ証書の購入
2023年度(予定)
- 台灣大福高科技設備股份有限公司の台南本社で太陽光発電システム導入
- Clean Factomation Inc.の牙山工場で太陽光発電システム導入
- 大福自動搬送設備(蘇州)有限公司の本社で太陽光発電システム導入
- Jervis B. Webb Companyの本社にて再エネ電力プランへ切り替え
2024年度(予定)
- Hallim Machinery Co., Ltd.で太陽光発電システム導入
- Daifuku (Thailand) Limitedで太陽光発電システム導入
「日に新た館」に太陽光発電システムを設置

滋賀事業所内にあるマテハン・ロジスティクス総合展示場「日に新た館」では、2010年3月から太陽光発電システムを導入しています。2022年度は、約18万kWhを発電し、53tのCO2削減に貢献しました。
ダイフク滋賀メガソーラー

2013年11月、滋賀事業所内に太陽光発電システム「ダイフク滋賀メガソーラー」を設置しました。1万7,752枚のパネルによる最大発電容量は4,438kW(滋賀県最大級)におよび、年間約430万kWh(一般家庭1,000世帯分の年間電力使用量に相当)の発電(電力事業者へ売電)を行っています。
共同輸送の活用

巡回集荷する
部品材料のお取引先とパートナーシップを構築し、コストダウンと的確な納期管理を目的とした集配業務のサービスに取り組んでいます。各社がそれぞれで輸送していた荷物を、集荷情報の集中管理と物量コントロールにより地域単位ごとにトラック1台で巡回し、物流拠点の集約化と合理化を図ります。各社の物流コスト削減はもちろん、サプライチェーンのCO2排出量削減に努めています。
- ※取引先から個別輸送で納品されていた物品を、巡回して集荷すること。積載効率を高めることができ、燃料資源の節減とCO2排出量の削減にも貢献できます。
モーダルシフト※の活用
製品の輸送手段は、トラック輸送が中心となりますが、環境負荷の少ない鉄道および海上へ輸送方法を転換するモーダルシフトに取り組んでいます。納期調整とコスト管理により物流品質を確保し、可能な限り輸送面でのCO2削減に努めています。2022年度はモーダルシフトによりCO2を398t削減しました。
- ※自動車や航空機による輸送を、鉄道や船舶による輸送に転換し、CO2の排出削減を図ること
気候関連団体への加盟状況
当社グループは、「ダイフク環境ビジョン2050」達成に向けて、気候変動問題の解決を目指す各団体に加盟し、情報共有や政策提言の働きかけなどに関与しています。
加盟団体
- 気候変動イニシアティブ
- 日本気候リーダーズ・パートナーシップ(賛助会員)
- TCFDコンソーシアム
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