生物多様性保全
基本的な考え方
当社では、滋賀事業所を中心に緑豊かな環境に囲まれて働く中で、従業員一人ひとりが自然環境との共存の意識を育んでいます。2014年に始動した生物多様性保全活動「結いプロジェクト」では、滋賀事業所の約120万m2という広大な敷地の自然を守るため「水と緑」「自然と人」「人と人」をつなぐ3つの“結い”を目指し、事業所内で確認された絶滅危惧種・希少種の保護などに取り組んでいます。
2023年に改定した「ダイフク環境ビジョン2050」では、重点領域の一つに「自然との共生」を掲げ、事業活動が自然資本に与える負の影響の最小化に向けて取り組んでいます。生態系サービスの持続可能な利用と生物多様性の保全を推進するため、今後はグローバル全体で活動内容の充実を図っていきます。
主な取り組み
ダイフクと生物多様性の関係性
当社では、事業活動と生態系との関係性を明確にするため、製品プロセスや土地利用などと生態系との関係を一覧できる「ダイフクと生物多様性の関係性マップ」を作成しています。このマップにより、自然豊かな滋賀事業所での土地利用における生態系への影響を注視し、生物多様性に配慮した活動を行っています。

滋賀事業所での保全活動
滋賀事業所は滋賀県下最大級の敷地面積を有する工場です。事業所内の生態系調査の結果、1,000種以上の在来種のほか、環境省レッドリストおよび滋賀県レッドデータブックに掲載されている野生生物が70種以上確認されています。この豊かな自然環境を将来に引き継ぐため、社内外のコミュニケーションを促進する「結いプロジェクト※」を通じて、さまざまな生物多様性保全の取り組みを進めています。
- ※結いプロジェクトとは、生物多様性保全を通じて、「水と緑」「自然と人」「人と人」を結び付ける諸活動
生態系調査結果(絶滅危惧種、希少種など)
滋賀事業所内で生息または生育する野生生物のうち、「環境省レッドリスト2020」および「滋賀県レッドデータブック2020年版」において、絶滅のおそれのある種として掲載されている種は以下の通りです。
- 環境省レッドリスト2020
- 絶滅危惧II類(VU):絶滅の危険が増大している種
準絶滅危惧(NT):現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種
(2023年4月時点)
カテゴリー | 分類 | 種和名 | 種数 |
---|---|---|---|
絶滅危惧II類(VU) | 鳥類 | ハヤブサ | 1 |
両生類 | カスミサンショウウオ、ヤマトサンショウウオ | 2 | |
昆虫類 | トゲアリ | 1 | |
植物 | キンラン、キキョウ | 2 | |
準絶滅危惧(NT) | 鳥類 | マガン、ハチクマ、ハイタカ、オオタカ | 4 |
爬虫類 | ニホンイシガメ | 1 | |
両生類 | トノサマガエル | 1 | |
昆虫類 | ネアカヨシヤンマ、キイロサナエ、フタスジサナエ、オグマサナエ、ミヤケミズムシ、コシロシタバ、スジヒラタガムシ、ミユキシジミガムシ、クロマルハナバチ | 9 | |
植物 | ヒメコヌカグサ、イヌタヌキモ | 2 | |
合計 | 23 |
-
ハヤブサ
-
ヤマトサンショウウオ
-
ニホンイシガメ
-
オグマサナエ
-
キンラン
-
トノサマガエル
-
トゲアリ
-
イヌタヌキモ
- 滋賀県レッドデータブック2020年版
- 絶滅危機増大種:県内において絶滅の危機が増大している種
希少種:県内において存続基盤が脆弱な種
要注目種:県内において評価するだけの情報が不足しているため注目することが必要な種
分布上重要種:県内において分布上重要な種
その他重要種:全国および近隣府県の状況から県内において注意が必要な種
(2023年4月時点)
カテゴリー | 分類 | 種和名 | 種数 |
---|---|---|---|
絶滅危機増大種 | 鳥類 | マガン、ハチクマ | 2 |
昆虫類 | ネアカヨシヤンマ | 1 | |
植物 | タヌキマメ | 1 | |
希少種 | 哺乳類 | カヤネズミ | 1 |
鳥類 | ヨシガモ、ミコアイサ、カイツブリ、アオバト、バン、ホトトギス、イカルチドリ、コチドリ、ハイタカ、オオタカ、ノスリ、アオバズク、チョウゲンボウ、ハヤブサ、セッカ、ルリビタキ、キビタキ、タヒバリ、ベニマシコ、ウソ | 20 | |
爬虫類 | ニホンイシガメ | 1 | |
両生類 | ヤマトサンショウウオ | 1 | |
昆虫類 | オツネントンボ、カトリヤンマ、フタスジサナエ、オグマサナエ、エゾトンボ、キトンボ、ミヤケミズムシ、ミズカマキリ、クロマルハナバチ | 9 | |
植物 | コヒロハハナヤスリ、キンラン、タチコウガイゼキショウ、イヌタヌキモ、オケラ | 5 | |
要注目種 | 哺乳類 | ニホンザル | 1 |
鳥類 | コサギ | 1 | |
爬虫類 | ニホントカゲ、ジムグリ、ニホンマムシ | 3 | |
両生類 | ニホンアカガエル、トノサマガエル、ヌマガエル、シュレーゲルアオガエル、モリアオガエル | 5 | |
魚類 | ギンブナ | 1 | |
昆虫類 | トラフトンボ、ヨツボシトンボ、ハッチョウトンボ、クロカタビロオサムシ、シラホシハナムグリ、ヘイケボタル | 6 | |
分布上重要種 | 昆虫類 | コノシメトンボ、ウスタビガ本土亜種、オオセンチコガネ、クロカナブン、タマムシ | 5 |
その他重要種 | 鳥類 | コシアカツバメ | 1 |
魚類 | ドンコ | 1 | |
昆虫類 | アオイトトンボ、キイロサナエ、ナツアカネ、ヒメアカネ、ハルゼミ | 5 | |
植物 | コガマ、マメスゲ、サトヤマハリスゲ、マツカサススキ、ヒメコヌカグサ、コムラサキ、キキョウ | 7 | |
合計 | 77 |
結いの森整備
「結いプロジェクト」の一環として、「結いの森」(滋賀事業所内の保全池・学習広場等)を整備しています。地域特有のアカマツ林や希少種であるヤマトサンショウウオなどの生物多様性保全を行うとともに社内外の学習の場として活用しています。2021年度は、枯れ松の撤去と結いの森沿路のチップ材敷設を行いました。
保全池(人工池)でのヤマトサンショウウオの繁殖
保全池
保全池で産卵を確認
ヤマトサンショウウオの成体
絶滅が危惧されるヤマトサンショウウオの保全に取り組んでいます。安定した生息環境を確保するため、2014年に保全池を造成し、事業所内に生息する幼生や卵の移殖を続けてきました。2021年度に保全池で初めて産卵・孵化したことを確認しましたが、2022年度も引き続き確認しました。なお、滋賀事業所の再開発によりヤマトサンショウウオの生息地が減少する恐れがあるため、2023年度はこの保全池以外に新たな生息地を造り、幼生を放流しました。
自然と触れ合う機会づくり

滋賀事業所では、生息する多くの動植物に従業員が触れ合う機会として専門家を交えた自然観察会、事業所にある自然の素材を使ったクリスマスリース作りや苔玉作りイベントなどを開催しています。2021年度は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、イベントの開催は中止しました。
社外での活動
滋賀グリーン活動ネットワーク「生物多様性と環境・CSR研究会」への参画

一般社団法人滋賀グリーン活動ネットワーク(SGN)内に設立されたワーキンググループ「生物多様性と環境・CSR研究会」に2015年から発起団体として参画しています。「生物多様性の基礎知識を学ぶ場の創出」「生物多様性分野を中心とするCSR活動の最新動向を知る場の創出」「会員同士の交流の場の創出」を目的に、会員向けセミナーなどのイベントを企画開催しています。
企業連携によるトンボ保全活動「生物多様性びわ湖ネットワーク」への参画

滋賀事業所の近隣企業※で「生物多様性びわ湖ネットワーク」を2016年に立ち上げ、県内で確認されている100種のトンボを指標とした生物多様性保全活動を展開しています。「トンボ100大作戦~滋賀のトンボを救え!~」と題したプロジェクトでは、①滋賀県のトンボ100種を探そう、②守ろう、③みんなに知らせよう、の3つの作戦を掲げて、企業敷地での定期的なモニタリング、ビオトープの整備や外来生物の駆除、自然観察会や活動の展示・発表、周辺地域の自然の現状把握、などに取り組んでいます。
- ※現在は、旭化成株式会社、旭化成住工株式会社、積水化学工業株式会社、積水樹脂株式会社、ダイハツ工業株式会社、株式会社ダイフクの6社で活動