自動倉庫の種類と特長

自動倉庫システムは、原料の載ったパレット、部品の入ったコンテナ、製品の段ボールケースなど様々な荷物を、クレーンやシャトル台車が棚に自動で運び、保管し、仕分けする、コンピュータ管理された倉庫のことです。高さ方向の空間を有効活用できるほか、省力化・省人化、在庫管理精度の向上などの利点があります。設置環境や保管物に合わせて、冷凍・冷蔵仕様や危険物仕様などがあり、冷凍食品や化学品などさまざまな荷物の保管にも利用されています。ロボットと組み合わせたシステムとしての利用も多く、工場や物流センターのDX推進の代表的な設備と言えます。

1. 自動倉庫の搬送装置の種類

自動倉庫は、荷物を保管する棚、フォークリフトや周辺設備とのインタフェースとなるコンベヤ、コンベヤと棚の間で荷物を搬送する装置により構成されています。搬送装置は、大きく3つの種類に区分されます。

最も一般的なものは「スタッカークレーン式」と呼ばれるものです。床に固定された下部レールと棚上部に取り付けられた上部レール上を、5~40m高さのスタッカークレーンが前後に走行すると同時に、荷を積載するキャレッジ部を昇降させ移動します。目的の棚到着後、キャレッジ上のフォークを棚の中に差し入れ、荷物の掬い降ろしを行います。1960年代から製造業や流通業からサービス業まで、様々な業種・業態で活用されています。

近年多く見られるようになったタイプに「シャトル台車式」があります。入庫コンベヤから荷物を保管するラックの段までは垂直搬送リフターが行い、その後の搬送と保管は各段に配備された電動式シャトル台車が行います。パレット系は飲料を代表とする大ロット品の高密度保管に、ケース系では流通業における出荷前荷揃えに活用されています。

もう一種類は「リトリーバ式」と呼ばれもので、2列のラック間をリトリーバが昇降すると同時に、リトリーバ上のキャリッジが左右に走行し、コンテナの入出庫を行うものです。省スペースで、オペレーションもシンプルなため、サービスパーツなどの小物ピッキング作業に特化した自動倉庫に採用されています。

具体的な製品の一覧は、自動倉庫システムトップページをご覧ください。

2. 格納物による自動倉庫の種類

パレットに積んだ原料、製品、金型、コイル材、ロール物鋼材長尺物など重量物に対応する「パレット式自動倉庫」と、樹脂コンテナ、段ボール箱、トレイに対応する「ケース式自動倉庫」があります。機械や金属製品の工場では、パレット式自動倉庫とケース式自動倉庫を併設し、パレット式自動倉庫には材料や完成品を保管し、ケース式自動倉庫は部品や仕掛品を保管するなど、並列して導入する場合も多くあります。

3. 自動倉庫のラックの種類

パレット式自動倉庫には、棚を建物の屋根・壁と切り離して設置する「ユニット式自動倉庫」と、自動倉庫の高層ラックに屋根壁を取り付けた「建屋一体型自動倉庫」があります。

  • ユニット式自動倉庫:設置する建物が既設か新設かを問わず、設備規模も自由なため、最も一般的な構造です。マルチテナント型物流センターなどの賃貸倉庫への設置も可能です。
  • ビル式自動倉庫:数万パレット規模の大規模倉庫や、危険物保管倉庫で採用されることが多い構造です。建築物として建築基準法の適用を受けるため、計画にあたっては自動倉庫と法規制の両方を理解した建築士の参加が不可欠となります。

なお、ケース式自動倉庫は、耐震性や格納規模などの理由から、ビル式自動倉庫は殆どありません。

4. 自動倉庫の格納物と設置環境

1973年に日本初のパレット式冷凍自動倉庫が稼働して以来、数多くの冷凍・冷蔵倉庫に自動倉庫が導入されてきました。近年は冷凍食品、宅配弁当、ふるさと納税の返礼品といった冷蔵品保管のための冷蔵自動倉庫ニーズが伸びているほか、コンビニや外食チェーン店舗向けの多品種少量供給に対応するため、冷凍ケース自動倉庫も活用されるようになりました。そのほか、電子部品や電池材料など一定のクリーン環境下で求められるクリーン仕様、石油類・薬品などの危険物倉庫に設置が可能な防爆仕様、工作機械と組み合わせたFMS用の耐油・耐粉塵仕様、荷扱いが難しいロール物対応仕様などさまざまな特殊環境に対応した自動倉庫もあります。また、ケース自動倉庫は、病院の医療機器・医薬品の保管納骨堂といった静かさを求められる場所でも採用されています。

5. 自動倉庫の制御と在庫管理

自動倉庫は、物流現場における省力化に有効ですが、加えて安全管理や在庫管理面での改善も期待できます。

近年の自動倉庫は、ほとんどが在庫管理コンピュータ付きの仕様となっています。自動倉庫の在庫管理システムは、クレーンや入出庫コンベヤなど周辺設備を制御・モニタリングする機能を持っており、サーバや端末から遠隔操作することも可能です。設備の運転状況がモニターで確認ができるため、異常時でも状況を的確に把握し、速やかに対処することが可能となります。

自動倉庫メーカーが提供する在庫管理コンピュータは、多くの物流現場で求められる機能や管理項目をパッケージ化しているため、スムーズに導入でき、在庫管理精度の向上に貢献します。既に導入している上位の倉庫管理システム(WMS)やERPとの連携も可能です。

6. パレット式自動倉庫のバリエーション

パレット自動倉庫は、幅広い業界、用途、環境で活用されており、入出庫能力や格納効率、ロットの大小に応じて、システム構成のバリエーションがあります。

  • シングルディープ:1台のスタッカークレーンが、左右1列、合計2列の棚にアクセスする、最も一般的な構成です。汎用性が高く、導入後の物流変化にも比較的柔軟に対応ができます。設備構成やクレーンの動きについては、パレット自動倉庫モデルシステムをご覧ください。
  • ダブルディープ:1台のスタッカークレーンが左右各2列、合計4列の棚にアクセスする構成です。シングルディープに比べ格納効率が高いため、冷凍倉庫や危険物倉庫、メーカーの完成品倉庫など、比較的ロットが大きく格納効率を重視するシステムに採用されています。
  • デュアルクレーンタイプ:1通路内に2台のクレーンを設置し、シングルディープ比約1.5倍の入出庫能力を発揮します。仲卸業者など注文を閉めてから短時間で出庫完了が求められる運用や、荷物が長尺物・重量物で速度を上げられない場合に採用されています。

シングルディープ

ダブルディープ

デュアルクレーン

7. ケース式自動倉庫のバリエーション

ケース自動倉庫は、自動車部品工場などで使用される樹脂コンテナを保管するもの、紙・フィルムのロール物を直接掴んで入庫・保管するタイプ、通販の物流センターなどで様々なサイズの段ボール箱をそのまま高密度に格納するものまで、取り扱う荷物の形状・サイズに合わせて移載装置のバリエーションがあります。処理能力を高めるためキャレッジに2つの移載装置を搭載し2個の荷物を同時に入出庫するタイプ、格納効率を高めるためのダブルディープタイプもあります。

コンテナ向けフォーク移載機

サイドフック移載機

ロール物用移載機

8. 自動倉庫の地震対策

自動倉庫は、省人化や在庫管理精度向上など導入メリットがある一方、時には40mと背が高いシステムになるため、地震時の倒壊に対する漠然とした不安を持たれることがあります。しかし、過去の大地震において、法令に準拠し設計施工された自動倉庫構造体への被害報告は殆ど見られていません。一方で、地震がおさまった後の再稼働を妨げる問題に対し、さまざまな対策が用意されています。

自動倉庫の地震対策ソリューション

9. 自動倉庫・物流業界の用語

立体自動倉庫システムは、一般財団法人日本規格協会、一般社団法人日本産業機械工業会が原案を作成した「JIS B8941立体自動倉庫システム―用語」において用語が規定されています。

物流・マテハン用語集

10. 自動倉庫の運転資格

スタッカークレーン式パレット自動倉庫は、労働安全衛生法 第59条、労働安全衛生規則 第36条、クレーン等安全規則 第21条にて、クレーンの運転の業務に係る特別の教育の受講が必要な場合があります。

クレーン特別教育について、詳しくはこちら

11. 自動倉庫の見学と導入計画

自動倉庫などの物流システムメーカーでは、常設展示場に自動倉庫や周辺設備の実機を展示しており、入出庫時の動作やスピード、規模感を体感できます。デモ機の在庫管理コンピュータから、実際に操作を体験することも可能です。

実機を見学・操作

コンサルティング

エンジニアリング・設計

自動倉庫の具体的な検討手順についてはこちら

12. 自動倉庫の耐用年数

自動倉庫、移動ラック、ソータなどのマテハンシステムは、減価償却資産の「機械及び装置」にあたり、国税庁の設備の種類(業種)ごとの耐用年数では、およそ8年から12年となっています。しかし耐用年数=設備の寿命ということではなく、定期的な保守・メンテナンス、リニューアルを実施する事で20年以上お使いいただけます。

13. 自動倉庫の維持・管理

自動倉庫は非常に便利な機械装置ですが、消耗部品の損傷や経年劣化、在庫管理コンピュータの異常などが発生すると、出荷業務の遅延といった問題に繋がります。そのため、自動倉庫メーカーでは各地にサービス拠点を設け、機械の定期点検やコンピュータのシステム保守などの保全メニューを提供しています。

自動倉庫システムは、保管数が100パレット前後のコンパクトなものから、数万パレット規模のシステムまで、設置スペースや必要とする格納量にあわせて導入が可能です。システム構成も、自動倉庫単独のシンプルなものから、無人搬送車やロボットと連携した複合システムまで、用途・機能・自動化レベルに合わせた応用が可能です。人手不足や保管量増強などの課題を解決したい時、新工場・倉庫の計画で物流自動化を検討される際は、是非当社にご相談ください。

ダイフクの最先端がここにある。マテハン体験型総合展示場 日に新た館

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