ロールの保管と搬送

マテハンを用いて自動化を進める場合、T11パレット、樹脂コンテナ、トレイなどを用いて、標準化した荷姿で搬送・保管するのが一般的です。これはマテハン装置との機械的なインタフェースを統一したり、社外との流通を効率化したりするための合理的な判断です。しかし、時には大きかったり、長かったり、いびつな形をしているなどの理由で、一般的な標準の枠にはめることが難しい荷姿があります。加えて、工程間搬送のような社内物流のためだけなら、わざわざパレットや容器を使わず直接運びたいと考える場合もあるでしょう。今日はそんな取り扱いが難しい荷物の一つ、「丸いもの」の自動化についてご紹介します。

丸い荷物が取り扱われる業種

「丸い物」にはどのような荷物があるでしょうか。金属製品を作る工場では、フープ材や金属ワイヤーを巻いたケーブルドラムがよく扱われます。時には3000kgほどにもなる丸い荷物を、安全を確保しながら効率的に取り扱うのは大変な仕事です。紙製品工場では紙の原反ロール、アパレル製品工場では生地の原反ロール、電池工場ではセパレータフィルムの原反ロール、パッケージフィルム工場ではグラビア印刷用シリンダー、塗料や化学品工場ではドラム缶、蒸留酒工場では木製の樽、家具流通業ではカーペットロール、タイヤメーカーではタイヤやホイールなど、さまざまな業種に転がりやすいロール状の荷物があります。

鋼板コイル

ケーブルドラム

紙の原反ロール

繊維の原反ロール

セパレータフィルムのロール

軟包装グラビア印刷用シリンダ

薬品のドラム

絨毯ロール

トラック・大型建機向けタイヤ

ウィスキー、ワインの樽

ロール状荷物の一般的な保管・搬送方法

では、このような荷物の保管や搬送をどのように効率化すればよいでしょうか？荷物の形状、材質、強度、品種数、取扱い量によりいくつかの選択肢が考えられます。一番安心なのはパレットを使う方法です。ロール状の荷物を横に倒した状態で通常のパレットに載せてしまうと、転がってしまいます。そこでパレット上にV字勾配のアタッチメントをつけたロール専用パレットがよく使われます。そのほか、通常の木製パレットに載せてバンドで固定する方法、通常のパレット上に縦置きする方法、ボックスパレットを使う方法、専用パレットを使う方法などがあります。パレットで標準化することで、一定範囲以内の大小長短さまざまな荷物に対応でき、事業環境の変化による荷姿の変更にも比較的柔軟に対応できます。

Ｖ字アタッチメントつきパレット

通常のパレットにV字のアタッチメントをつけて転がりを防止。

通常のパレット

底面が広く形状が安定している荷物は、通常のパレット上に立てて保管。

ボックスパレット

底面積が小さく不安定なロールや形状が安定しないロールは、ボックスパレットで取り扱い。

専用パレット

お客様独自の専用パレット

「社外への流通にパレットが必要なのは仕方ないけれど、社内の工程間に余計な物を増やしたくない。パレットなしで取り扱えないか。」というご要望もよく聞かれます。ロール状の荷物を直に搬送することが可能かは、荷物の形状、強度、品種数、そしてお客様の品質管理に対する要求レベルにより左右されます。例えば荷物が柔らかく形状が安定しない場合、ロールのサイズが大小長短さまざまある場合は、直接搬送することのハードルが上がります。荷物を直接搬送する場合、スタッカークレーンやコンベヤなどのマテハン設備と触れ合うことになるため、荷物の表面に少しでも傷や汚れがついたら品質管理上問題となる場合も、直接搬送は向かないでしょう。

では、パレット保管、直接保管それぞれの具体的な方法をご紹介しましょう。