当社は1993年、世界初の非接触給電*によるモノレールシステムを開発、クリーンな環境を実現する次世代型搬送システムとして注目を集めてきました。移動体へ、文字通り触れることなく電力を供給するシステムで、同年第1号機を関東自動車工業(株)・岩手工場へ納入(写真)。以来、世界中のお客さまで採用され、当初の自動車業界中心から半導体・食品・製薬などさまざまな業界へと市場を拡大してきました。

  • *当社では、非接触給電を「High Efficiency Inductive Power Distribution Technology」の頭文字をとってHIDと称しています。
モノレールシステム「ラムラン」HIDタイプ

写真: モノレールシステム「ラムラン」HIDタイプ

開発の経緯

HIDの基本技術は1990年、ニュージーランドのオークランド大学ボーイズ教授を中心に考案されました。当社は同大学とHID技術を実用化するための共同研究開発を行い成功。従来のトロリー線と集電子を使った接触給電方式が持つ「集電子の磨耗」、「磨耗粉の発生」、「離線によるスパークの発生」などの問題点を最新の技術によりすべて解決しました。同大学とは技術ライセンス契約を締結、当社はマテハン分野におけるHID独占使用権および販売権を有しています。現在、このHID技術は世界各国で特許登録されています。

HIDシステムの構成と各要素の役割

HIDシステムは、次の4つの要素で構成されています(図)。

HID電源盤

商用電源を無接触給電に適した周波数に変換し、誘導線へ電力を送り出す。

誘導線

移動体のレールに沿って敷設する特殊電線。この電線の周囲に磁場を発生させ、移動体へ電力を効率良く伝達する。

ピックアップコイル

誘導線と対向する形で移動体に取り付けられ、誘導線による磁場から電力を受取る。

受電ユニット

ピックアップコイルが受取った電力を安定化させ、インバータやサーボ・ドライバなどに良質の電力を供給する。

HIDシステムの特長と特許

特長

HIDシステムの特長は、「誘導線とピックアップコイルが非接触であること」、および「誘導線は絶縁物で覆われていること」であり、次のような使用上のメリットがあります。

(1)高い信頼度と耐久性

接触給電の集電子は、安定した接触を得るために三次元の精緻な機械機構を必要とします。HIDシステムでは構造がシンプルで、また無接触であるため長期間にわたって安定した給電が可能です。

(2)メンテナンス・フリー

従来の集電子は周囲環境によっては磨耗が促進される場合があります。HIDシステムは無接触のため集電子やトロリー線の摩耗がなく、メンテナンス費用の大幅な削減が可能となります。

(3)クリーンな環境に適合

接触給電のような磨耗粉の発生が皆無であり、粉塵を避けるクリーンルームのような環境下では必須の給電システムです。

(4)オイルミストや水蒸気の発生する環境に適合

粉塵やオイルミスト、水蒸気などが発生する場所では、接触式の給電を採用できない場合があります。HID給電ではこのような環境でもまったく問題なく使用できます。

(5)安全な給電システム

給電線は絶縁されており露出部がないため、万一給電線に触っても感電することはありません。また移動体への給電は電磁結合により行われ、電気的なスパークの発生もなく、極めて安全な給電システムです。

特許

非接触給電のアイデアは約100年前のアメリカの特許に見ることができます。この技術は電磁誘導の法則をはじめとする先人達の技術蓄積がベースになっています。一方、非接触給電システムを実用的なレベルに引き上げるためには、シミュレーション技術の発展、高い周波数領域で使用できる素子の実現、および回路技術の向上が必要でした。

当社では、オークランド大学とのタイアップ以来、数十件の特許を主要国に出願してきました。核になる特許は下記の2点です。

(1)ピックアップコイルの形状と誘導線まわりの構成に関する特許

移動体が3次元に走行することを想定し、誘導線のサポートとピックアップコイルの最適形状をシミュレーションにより求め、現在のE型コアとしています(図)。受電効率と設備費用とのバランスをとった移動体に最適な構成としたことに関する特許です。

(2)受電ユニットに関する特許

受電ユニットは、移動体の台数変動、モータ起動時や回生時の電力変動に対して、安定した電力をインバータやシーケンサなどの制御機器に供給する必要があります。数キロワットの電力を効率良く簡潔な方法で制御することに関する特許です。

終わりに

HIDシステムは自動車業界、半導体・FPD(フラット・パネル・ディスプレイ)業界以外にも、光ファイバー・食品・食品用容器製造などでも採用頂いています。現在、多くのユーザーが設備に対して求められていることを一言でいうなら「高いアベイラビリティ(可用性)」。具体的には、メンテナンスが不要(または最少)、設備レイアウト変更に要する時間が短い、故障しない(壊れない)、トラブル発生時の復旧が早いことなどが挙げられると思われます。一方、地球環境への影響低減や人(作業者)に対する快適環境を提供することも時代の潮流です。非接触給電技術はこれらの要求実現を支援する重要な技術として、今後もさまざまな業界でご採用頂けるものと期待しています。

< DAIFUKU NEWS No.161(2001年8月)より >