当社は1966年、わが国初の立体自動倉庫を開発しました。その目的は、(1)土地の有効活用、(2)保管効率の向上、(3)倉庫作業の省人・省力化、(4)管理レベルの向上による業務の軽減およびコストの削減、などにありました。当時、倉庫といえば平屋倉庫が一般的。庫内の荷役・保管作業は人手作業が主体、保管物管理は台帳と伝票方式など、その物流機能は現在に比べると低レベルなものでした。そうした中で登場した自動倉庫は、従来の倉庫の概念を打破する画期的な物流技術革新となりました。

誕生から40年余、いま自動倉庫はスタッカークレーン、周辺(荷捌き)設備を含めた機種の拡大、技術の進歩による高能力・高性能化などとともに、納入業種・業態、使用目的を急速に拡大しています。当社の自動倉庫市場と技術の変遷、さらに今後の動向についてご紹介します。

市場の変遷

1970年代~コンピュータ化で普及に弾み

立体自動倉庫はその名の示す通り、いわゆる倉庫を立体化し自動化したもので、1970年代初頭まではメーカーの製品倉庫、原材料倉庫として採用されるものが大半でした。また、当時の自動倉庫は必ずしも安価とは言いがたく、その採算ラインが高かったため、納入先も大企業が中心でした。

1966年、当社はわが国初の自動倉庫を松下電器産業(株)・電動機事業部(当時、以下同)へ搭乗運転式の「ラックビルシステム(ビル式自動倉庫、以下RB)」を納入しました(写真1)。また、自動倉庫の格納位置がX、Y、Zの座標で管理でき、コンピュータによる制御がきわめて容易であることに注目しスタッカークレーン「ラックマスター(RM)」の無人化に着手。1969年には旭化成工業(株)・延岡工場に国内初のコンピュータコントロールによる完全自動化RBを納入しました。

自動倉庫がコンピュータで制御できるようになったことで、荷の出し入れと同期した在庫管理が可能となり在庫管理精度が向上し、これにより導入分野は一気に広がり始めました。例えば、管理アイテム数が数万にのぼる自動車サービスパーツセンターとして、トヨタ自動車販売(株)・春日工場、日産自動車(株)・相模原パーツセンターに世界最大規模の自動倉庫を納入(写真2)。また、商品の性格上、間違いが許されない製薬会社などでも、在庫管理・入出庫管理精度の強化を主目的として自動倉庫が採用されました。

1970年代半ばになると自動倉庫の有用性が市場に認知され始め、ビル式に比べより手軽で安価な自動倉庫の要求が高まってきました。このニーズに応えるため規格型のユニット式パレット自動倉庫「コンパクトシステム(CS)」や、ケース自動倉庫「バケットビルシステム(BBS)」(現「ファインストッカー(FS)」)を開発、販売を開始しました。

  • わが国初の自動倉庫「RB」

    写真1: わが国初の自動倉庫「RB」

  • 世界最大規模(当時)の自動車パーツ管理用自動倉庫「RB」

    写真2: 世界最大規模(当時)の自動車パーツ管理用自動倉庫「RB」

  • 世界最先端(当時)と言われた工作機械FA工場

    写真3: 世界最先端(当時)と言われた工作機械FA工場

1980年代~広範な分野で導入

1980年代は、わが国工業製品の競争力が欧米のそれを凌駕し始めた時期で、製造業では活発な設備投資が行われました。自動倉庫の用途も、従来の製品倉庫機能主体から生産現場へと拡大していきました。その中心となったのは電気、電子、精密機械などの製造現場。部品の保管・供給機能、24時間稼働のためのバッファ機能、工程間・工程内で「段取り、仕分けを受け持つ機器」としての用途でした。こうした背景の中で、工程間・工程内自動倉庫と無人搬送車(AGVなど)、さらに生産設備までをコンピュータで統合した生産システム(いわゆるFMS、FA)が構築されました。当社は高度なFAシステムをファナック(株)、富士通(株)、(株)牧野フライス製作所(写真3)をはじめ多くの先進企業へ納入しました。当時開発したマシニングセンターのFMSは現在も根強い需要が継続しています。

一方、製品倉庫は物流センターとしての機能を求められるようになりました。自動倉庫と各種周辺装置を組み合わせて自動化レベルを高め、システム化したセンターが多く建設されるようになり、当社もトッパン・ムーア(株)、(株)サンゲツ、山之内製薬(株)はじめ数多くのユーザーへ高度にシステム化した物流センターシステムを納入しました。これらの物流センターでは、本社の情報システムと物流センターシステムが専用回線で結ばれ、納品リードタイムの短縮、納品精度、在庫管理精度の向上が図られました。またこの頃から、国内製造業の海外進出に伴って自動倉庫の輸出が始まり、現在では海外企業にも多く納入するようになっています。

1980年代半ばになると、当時の経済環境や人手不足と相まって、主に大企業中心に導入されてきた自動倉庫が、中小の製造業にも採用されるようになり市場は急速に拡大しました。これと歩調を合わせるようにパソコンの普及が始まり、パソコンとパッケージソフトを利用して比較的安価に在庫管理システムが構築できるようになりました。これによりCSに代表される小型自動倉庫でも、コンピュータ制御で荷の入出庫と同期した在庫管理などを行うことが一般的になりました。

1990年代~各種高能力タイプが登場

1980年代終わりから1990年代前半にかけて、製造業以外の農業、倉庫業、卸小売業、銀行保険業、公官庁など、今まで物流の自動化とあまり縁のなかった業界でも、自動倉庫採用が始まり市場の幅がさらに拡大しました。例えば、農業分野では玄米の保管庫、果物のCA冷蔵設備、野菜の出荷前予冷設備、きのこの培養設備、さらに果物や野菜の選果場の仕分け出荷設備として自動倉庫が使われています。

1990年代後半になると、倉庫業、卸小売業ではデフレの進行と共に増加した消費財の輸入品基地としての自動倉庫や、SCM(Supply Chain Management)を実現するための物流センター内の自動倉庫など、より最終消費者に近い物流段階での採用が始まりました。これらの物流センターでは、パレットタイプの自動倉庫に加えて、高能力で多様な荷姿形状、サイズの荷を取り扱えるようになったFSが出荷前荷揃え設備として、また、ピッキングのための段取り設備として、従来の保管機能とは異なった目的で採用されるようになりました。当社では、FSの高能力化や、移載装置のバリエーションを拡大しこれらのニーズに対応してきました。さらに2002年には従来のFSに比べサイクルタイムを約2分の1に短縮した高能力ケース自動倉庫「マジックソーティングシステム(MIII)」を開発し、通過型流通センターの荷扱い速度にケース自動倉庫が対応できるようになりました。

このように、物流を取り巻く環境が大きく変化し物流に要求される機能が変わってきたこと、また1970~1980年代に建設された自動倉庫の老朽化が進んだことが相まって、設備のリニューアル需要も多くなってきました。

特殊環境下の自動倉庫

特殊環境下における自動倉庫について簡単にご紹介しておきます。

初期の冷凍自動倉庫は1970年代の一時期建設されましたが、採算性が良くないことが理由となり、長いあいだ建設が中断されていました。しかし、冷凍技術の進歩、社会・物流環境の変化により採算性が向上し、1990年代に入ると食品卸や水産加工業などで自動倉庫の建設需要が高まりました。

危険物倉庫は、1990年消防法が一部改正・施行され本格的な自動倉庫(建築面積1,000m2以下、高さ20m以下)の建設が可能となり、それまで小規模のユニット式自動倉庫(工程間倉庫)が中心だった同分野でも、保管機能を重視したビル式の自動倉庫が多く建設されるようになりました。

半導体製造ではその集積度が上がるにつれて、製造工程内では高いクリーン度が要求されます。クリーンル-ム内では、作業者が最大の発塵源であることから工程間搬送、工程間バッファの無人化が必要となります。この工程間バッファ設備としてクリーンルーム用自動倉庫「クリーンストッカー(CLS)」を開発。現在、大手半導体メーカーをはじめ、世界各国の工場で多数のCLSが採用されています。また、この技術は液晶・PDPなどの生産ラインにも生かされています。

技術の変遷

RM~用途・機能で豊富なバリエーション

初期のRM駆動部はポールチェンジモータとスベリ継手を組み合わせていたため速度は走行90m/分、昇降20m/分程度、処理能力は20~30パレット/時程度でした。これを1970年代終わりにはDCモータへ、1980年代にはインバータ制御へと移行し、より高速化を図ってきました。現在では走行速度200m/分、昇降速度100m/分、時間当たりの処理能力も60パレット/時間に向上しています。

RMはその使用目的、機能に応じてバリエーションを拡大。現在では、複数の通路を1台のRMで兼用するトラバーサタイプをはじめ、移載機では、棚の奥行き方向に2棚分格納するダブルディープタイプ、2つの荷を積載するツインフォークタイプなど、多種多様なタイプを品揃えしています。FSのRM移載機も、第三次産業への顧客の広がりに伴い、多様なサイズのカートンケースを直接取り扱えるよう、フォーク式からクランプ式、サイドベルトによる引き込み式などへ多様な機種を開発しています。

RMの運転方式には、搭乗運転、テンキーまたは棚番カード設定、コンピュータ制御などがあります。現在ではほとんどの自動倉庫がコンピュータ制御を採用しています。ただ、金型のように格納物が限定され、かつ品種数も少なく、固定したロケーション(棚位置)で運用する場合は、使い勝手の良さから現在でもテンキー/棚番カードによる運転方式が使われています。また、搭乗運転方式は国内では、極めて限られたシステムにしか使われていません。

マイコン搭載で制御を高度化

開発当初はリレー回路で構成していましたが、ほどなくトランジスタを用いた基板となり、1970年代の終わりにはマイコン搭載の基板へと変わってきました。当初、移動ケーブルを用いていたRM本体と地上側の信号のやり取りも、1970年代後半になると誘導無線になり、さらに1980年代には光伝送へと変わってきました。

1980年代にはマイコンの性能向上と低価格化も進み、RMの高性能化に大きく寄与しました。例えば、RMの停止位置制御方式は、従来の検出板に代えラック自体の位置を検出することで、各棚ごとに自動的に停止位置を決める「位置学習制御(当社特許)」を開発しました。この技術は自動倉庫の信頼性を向上するとともに、現場での調整期間を短縮しました。1980年代終わりから自動倉庫システムの制御は、周辺設備も含めて従来の集中制御から分散制御へと移行することに伴って制御回路のパッケージ化を進め、その品質・メンテナンス性の向上、工期短縮などを実現しました。

自動倉庫の市場が製造業中心から第一次、第三次産業に拡大するにつれて保守要員を持たない顧客企業が多くなり、トラブルの早期発見、早期復旧がより重要となってきました。これに対応するため1991年、業界他社に先駆けてメニュー方式によるグラフィック表示のモニタリングシステム、異常履歴管理システムのほか、通信回線を用いたリモートモニタリングシステムを標準装備した制御モデル「9Xモデル」のデリバリーを開始。同時に社内にSSC(System Support Center)を開設して、納入ユーザーに対しオンラインによる24時間365日のサービス体制を整えました。

STV、ロボットなど周辺設備も充実

初期の自動倉庫の周辺装置は、ほとんどがコンベヤラインで構成されていました。1980年代、荷扱い速度と信頼性の向上をねらいに、メインライン部に機械的変速機構を有する外部駆動方式の自走台車が登場しました。しかし、処理能力、走行速度、稼働時の騒音、メンテナンス性などその性能は市場の要求を満たしているとは言い難いものでした。これらの諸問題を解決するため、1987年、高速・高能力で静粛性の高い自律分散制御の有軌道台車「STV(Sorting Transfer Vehicle)」を商品化しました。これによりシステムの標準化が可能となり、信頼性の向上、納期短縮、コストダウンを実現しました。現在STVは、自動倉庫システムにはなくてはならない周辺装置となっています。

物流センターでは、パレット単位で格納されている商品から小口出荷に対応するために、ケース単位のピッキング作業が必要となります。従来、ケース単位の出荷に伴うピッキング作業は多くの場合、人手作業で行われていました。この作業は重労働で腰痛の原因にもなるため、ケースピッキングの多い物流センターでは作業の自動化が大きな課題となってきました。1995年、これに対応するためロボットと画像処理を利用した位置認識装置を組み合わせたケースピッキングシステムを開発。自動倉庫システムと連動させた高能力のシステムを構築し、ケース処理の多い飲料系メーカーなどへ納入しました。

  • 欧州で電気製品の保管に採用された自動倉庫

    写真4: 欧州で電気製品の保管に採用された自動倉庫

  • 中国でパソコンの完成品を保管する自動倉庫

    写真5: 中国でパソコンの完成品を保管する自動倉庫

今後の市場・技術の動向

すでに、国内では自動倉庫があらゆる産業分野に普及しており、最盛期のような成長は望めません。しかし、自動倉庫が保管、仕分け、段取りのみならず生産設備の一部として、もはや必要不可欠な要素になっていることから、今後も同程度の需要は継続するものと思われます。

世界的にみると自動倉庫導入件数が多いのは日本と欧州。わが国ではすべての産業分野において幅広くさまざまな目的で使われており、結果として小型の自動倉庫の件数が多くなっています。一方、欧州では大企業の導入が中心で比較的大型の自動倉庫が多く、その機能もいわゆる物流センターとしてのものが大半となっています(写真4)。北米では物流センターはラック、コンベヤ、フォークリフトなどで構成することが多く、自動倉庫の採用は少ない傾向にあります。中国・韓国・台湾など東アジア地区では、近年の経済成長に歩調を合わせ自動倉庫市場が急成長しています。中国では従来、進出した外資企業が自動倉庫を採用するにとどまっていましたが、タバコ産業などの先進的な現地企業での導入も始まり、1970年前半のわが国に類似しており今後の成長が期待できます(写真5)。

自動倉庫は高性能化とともに、その使用目的・用途に応じてバリエーションを拡大。現在では、一般的に必要と考えられる機能はほぼ出そろった感があります。今後はメンテナンスフリーや、予防保全を指向したシステムの開発に加え、計画時におけるシミュレーションを活用した、より高度なトータルシステムの構築などが軸になると考えています。

当社はこれからも、お客さまのご要求に真摯に耳を傾け、お客さまとともに、より最適で新しいシステムの構築に全力を上げて取り組んでいく方針です。

< Daifuku News No.169(2003年9月)より >