ローラコンベヤ活用の国産連洗から節水タイプへ

長年培ってきたローラコンベヤ技術を洗車機に応用した、いかにもダイフクらしい商品、それが連続洗車機「マジックスルー」シリーズです。「連続」のいわれは、トンネル状の洗車機を通過する間に、洗浄、すすぎ、ワックス、乾燥などの全工程をわずか1分程度で終え、次から次へと車を送り込むところから。当時導入されていた米国製の弱点を補完する形で1993年に商品化しました。その後の洗浄技術の発展とともに、安全性、洗浄品質の向上など、3度のモデルチェンジを経て、2009年10月に「環境にやさしい洗車機」として新しくデビュー。この間の市場動向にも触れながら、技術のあゆみを検証してみました。

連洗の構造を示した模式図

連洗の構造を示した模式図

1977年洗車機事業に参入

好景気にわく東京オリンピック開催前年の1963年(昭和38年)は“洗車機普及元年”といわれています。当時、全国にガソリンスタンド(SS)が3万カ所。ガソリン販売は過当競争を極め、洗車の無料サービスで集客をしていました。

当社が主力のマテハン分野とは異なる洗車機事業を開始したのは1977年(昭和52年)。それまで色濃く残っていた洗車無料の時代にようやく別れを告げ、完全有料化時代が幕を開けていました。主な設置先であるSS業界は活発な設備投資を展開、代替需要が増えて洗車機市場は安定化します。それに伴い商品開発が活発化するなど、好循環を始めていました。

マイコンがマテハンで活用されるようになった1980年代、洗車機の技術レベルは飛躍的に発展します。当社はリレー制御一辺倒だった洗車機の世界に、初めてマイコン制御を持ち込みました。洗車コースの設定や管理レベルが格段に向上したのです。市場の評価は高く、「従来機の倍の価格で販売された」といわれています。

1990年代に入ると、スケールメリット追求の観点から、敷地1,000坪以上という大規模SSが散見されるようになります。これら大規模店には、洗車処理能力が門型の4倍以上という米国製の連続洗車機が導入されていました。

国産連洗第1号「マジックスルー」を開発

当社が初代連続洗車機(以下、連洗)、「マジックスルー」を商品化したのは1993年。バブル景気崩壊後の景気低迷期。当時、国産のドライブスルー機はまだ登場していません。SSでのスタッフ洗車が主体で、それでなくても高額な洗車料金が高騰する傾向にありました。これに対し、少しでも安価な洗車を求めるニーズ、さらには台頭しつつあったセルフ洗車へのニーズを汲み取り、当社は連洗の開発に向かいます。この時、「高級化」「無人化」は洗車機のテーマでした。セルフ洗車の出始めの頃、すでに米国製連洗が国内でも活用されていましたが、高額の購入価格は普及に高い壁となっていました。しかも、米国製特有の事情があり、全長30mにもなり敷地をとる、プッシュローラ利用のためピット工事が必要、土地代・工事費・工期などすべてにおいて高額、など多くの課題を抱えていました。そこで当社は開発テーマを、省スペース・ピットレス・低価格・高速処理に絞ったのです。身近にあったローラコンベヤの活用を模索、流動棚「ランニングフロー」のローラを全高95mmと低床化し、ピットレスを実現しました。一方のプッシュローラ式は、不慣れなドライバーが搬送途中でハンドルやブレーキに触れようものなら、脱輪・追突など即トラブルにつながる、不安定かつ人為的事故の起きやすいシステムでした。当社は駆動ローラコンベヤを使用、車はパーキング状態で搬送されるため、タイヤはロックされ、そうした課題は解消されました。

ブラシは合成樹脂製とし、洗浄から乾燥まで全工程を90秒で処理する初代マジックスルーの誕生です。2本のローラコンベヤをコンクリート床に設置するだけでコンベヤ駆動用のピットを掘る必要がなく、工事の費用と期間を大幅に圧縮するなど画期的な波及効果ももたらしました。米国製に比べてスペース半減とコンパクトだったため、市場からは「ミニ連洗」と呼ばれました。当時、同時期に国内同業他社がチェーンけん引式ミニ連洗を商品化、発売しました。しかしニュートラル状態で搬送されるため、自走・追突事故が頻発し、ローラ式の当社製に切り替えるSSが続出して、半年で市場から撤退するという逸話が残っています。

「環境保全と経済性」の両立図る節水仕様

これまで見てきたように、90年代に洗浄性・安全性などの技術を取り入れたマジックスルーは、次なる目標として、ドライブスルー機、門型機に次ぐ節水機能の搭載に向かいます。 2007年、当社は環境保全と経済性の両立を図った「環境にやさしい洗車機」を初めて世間に問いました。増勢一途のドライブスルー機で実用化したもので、使用水量が従来比半減という画期的なものでした。それから2年後の2009年10月、「マジックスルーコンベニオス」に節水仕様を標準搭載しました。高速洗車が長時間続く連洗は、ドライブスルー機や門型機とは洗車条件を異にします。水量を一定程度確保しながら高速洗浄するため、ノズルの口径・ノズルの位置などの検証から入り、撥水コーティングやつや・光沢を引き出す液剤の効果を維持するための検証も重ねました。こうして従来75 ℓ必要だった水洗い洗車が44ℓ、撥水洗車にいたっては82ℓが49ℓとそれぞれ4割の水量節減を実現しています。

連洗の場合、ひと月に4,000台、5,000台を洗うケースもあり、節減効果は莫大です。水洗い、ワックスなど洗車メニューにより使用水量は異なりますが、月間4,000台で従来機約31万ℓの水量が、節水タイプでは18万ℓへ激減しています。この節水量は、ユーカリの木約60本が、1年間に吸収するCO2量に相当します。金額換算なら年間100万円以上の節約を可能にします。

節水型の連洗「マジックスルーコンベニオス」

節水型の連洗「マジックスルーコンベニオス」

グローバル、新たな市場へも展開。トレンド見据えた商品開発

連洗固有の「高速・大量処理」という機能をより享受しているのは、実は海外諸国です。欧米やアジアの一部の国など、世界の洗車機市場での連洗の占有率は約40%。これに対し、わが国では連洗はわずか5%程度です。ただ、当社の連洗は国内ではほぼ独壇場で、近年は韓国でも納入が進んでおり、今後も期待できるマーケットです。一方で国内ながら、欧米メーカーが席巻してきた市場があります。自動車メーカーの生産工場やP.D.I.(Pre Delivery Inspection :納車前整備)センター(以下、納整センター)です。しかしここへ来て、リニューアル需要が見込めるようになり、シェア拡大のチャンスが広がっています。

韓国で磨きをかけ、世界をねらう

アジアでは日本に次ぐ洗車台数を誇る韓国でもフルサービスが基本です。ただ、連洗の普及率は日本とは異なり、欧米並みで30%程度もあります。当社は1990年代前半に韓国への輸出を始め、今日までの累計は約600台にのぼります。2003年には現地販売法人・大福洗車機韓国(現・大福韓国 DCK事業部)を設立。現在、DCKの機種別販売比率をみても連洗が全体の25%程度を占めています。

なぜ韓国で連洗のシェアが高いのか?その理由はガソリン販売を優先し、洗車は無料ないしは格安のため。給油で来店する車の3割強は洗車するといいます。おのずと洗車台数は多くなり、短時間で大量にさばく必要があります。時間当たり最高60台以上の「高速・大量」処理能力が求められます。外観や洗浄性に関しても厳しい注文がつきます。洗浄ブラシは日本の5本に対し、7~11本を装備。洗車機の風格や見た目の洗浄感をアピールするエンターテインメント性も要求されます。また、乾燥に対する注文も厳しく、ブロワ(乾燥機)が多いのも特徴です。もともと日本と違い、機械洗浄前後の予備洗浄・拭き上げはスタッフによる手作業。“トンネル”の出口に乾燥専用ブラシを取り付けることもあります。乾燥が悪いとスタッフの作業量が増えるため、水滴が残らないことは機械選定の条件にもなるのです。このように、装置が多いため、必然的に本体とコンベヤが長いのも特徴です。本体は日本の約7mに対し、10~12mにもなります。

連洗のシェアが高い国々では、処理能力以外にも“見た目”が求められるなど、日本にはない発想があります。今後のグローバル展開には、グローバル仕様の大型連洗、つまり「グローバル連洗」が必要となります。ミニ連洗(マジックスルー)との対比からネーミングされました。2007年、韓国市場向けにグローバル連洗を開発。現在では3機種を保有し、年間40台以上を販売しています。韓国で販売される洗車機の部品の大半は、2009年まで続いた“円高ウォン安”の為替相場により、現地生産にシフトしました。さらに、今後の大きな市場としてアジア圏、特に中国をターゲットに据えています。

エンターテイメント性豊かな「グローバル連洗」(韓国)

エンターテイメント性豊かな「グローバル連洗」(韓国)

国内の新市場「納整センター」

洗車という意味では、街中を走る車だけではなく、工場でラインオフして消費者の手元に届けられるまでにも洗車のニーズはあります。以前から需要はありましたが、当時の日本には大型の連洗がなく、欧米メーカー製が使用されてきました。しかし、こうした欧米製連洗がリニューアル時期に入り始めています。国内自動車メーカー直轄や販売会社保有の納整センターも同じです。

自動車メーカーは車を代理店(販売店)に出荷する際、納車前整備や点検、オプション架装を集中的に行います。車は屋外に保管されていたため、洗車は必須作業です。そうした作業を行う拠点が「納整センター」と呼ばれ、管轄の販売拠点に配送するまでを担います。

生産車種や生産方式、在庫量など、メーカーにとって各社各様であるように、「洗車」に対する期待値もさまざまですが、トラブルがないこと、より良い洗浄と乾燥が得られることは各社共通です。また、安全性も強く要求されます。その点、従来のプッシュローラ式は脱輪などのトラブルが多く、大きな課題になっていました。原因はニュートラルでタイヤを後押ししながら搬送するからです。これに対し、マジックスルーは当社“お家芸”のローラコンベヤを採用。パーキング状態でタイヤは固定したまま搬送するため、こうしたリスクが皆無になりました。また、深さ約50cmのピットも不要で、土間上に固定するだけ。据付コスト・工期ともに大幅に削減、これらも高く評価されています。

作業者に苦痛を与える騒音は昨今は排除される方向にありますが、マジックスルーでは超静音ドライシステムを搭載することにより、従来比十数%のブロワ低騒音化を実現しています。

洗車後に納整作業をコンベヤ上で行うために追加コンベヤを設置したり、より良い洗浄を求めて異型車両用に洗浄プログラムを変更したり、より良い乾燥を求めて乾燥ブロワを追加するなど、さまざまな形の「マジックスルー」が誕生しています。混流生産が広く導入されたことで、そうした複雑な洗車への対応が求められているのです。

納整センターで活躍するマジックスルー

納整センターで活躍するマジックスルー

環境対応では節水・静音で先行

自動車業界にとって環境対策は重要なテーマになっていますが、洗車の世界も例外ではありません。2009年10月に販売を開始した節水型連洗は、自動車業界から熱い視線を浴びることになりました。節水仕様の場合、洗車に使われる水の量は、当社比で従来型連洗よりも40%削減できます。

納整センターでは連洗1台で1日300台程度の洗車が行われます。月に6,000台の節水効果となると莫大です。このように、洗車台数が多い納整センターにとって水の管理は非常に重要で、雨水や廃水の再利用を行っているセンターもあります。また、洗車後の廃水処理費用も多額なものになります。大規模な事業所では構内に廃水処理施設を稼働させていますが、その廃水処理能力をランクアップさせる費用は、洗車設備費用を凌駕します。自動車各社が真剣に取り組んでいる環境保全にとって、「マジックスルー」の節水効果は大きな武器として評価されています。

洗車機製造を開始以来30年余。ダイフクは業界に先駆けた技術やユニークなアイデアで魅力ある洗車機を開発し、お客さまの洗車ビジネスを支えてきました。今後も顧客視線に立ち洗車機事業を展開していく考えです。

< DAIFUKU NEWS No.193 (2010年1月)、No.194 (2010年3月)より >