ダイフク流課題解決GTPによりピッキング作業を大幅に効率化

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「心おどる、瞬間を。」を掲げ、ケーブルテレビや衛星放送などでのテレビ通販事業を展開する業界最大手のジュピターショップチャンネル株式会社様(以下敬称略)。毎日売れ筋商品が変わるという特有の物流特性に対応するために、同社では2022年4月に千葉県船橋市に新たな拠点を開設しました。稼働開始から半年が過ぎた新物流センターの状況について、管理本部物流部出荷グループの武井純様にお話を伺いました。

GTP:Goods To Personの略で、定位置ピッキングのこと。在庫コンテナと集品コンテナが作業者のもとに自動で供給される。カートピッキングに比べて、商品を探して歩き回る必要がないため、作業効率が向上し、作業者の身体的負担も緩和できる。
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テレビ通販はインターネット通販と同じ通信販売でありながら、ビジネスモデルが大きく異なるそうですね。

最大の違いは売れ筋商品の動向です。ネット通販はロングテール型のビジネスであるのに対して、テレビ通販は番組で紹介した商品が圧倒的に売れます。当社はカタログ通販やネット通販も手掛けており、安定的に売れている定番商品もありますが、その日最も売れる商品はやはりテレビ番組で紹介するものです。

当社の主力番組は毎日深夜0時開始の「ショップスターバリュー(以下SSV)」と、毎日お昼12時開始の「ゴー!ゴー!バリュー(以下GGV))」で、内容は毎日変わり、それぞれの番組で異なる目玉商品を紹介しています。注文は放送当日に集中しますから、仕入れは事前の需要予測と商品確保が重要です。なかには販売数量限定の商品もありますが、商品調達にはメーカーとの協力が欠かせず、およそ半年先まで商品ラインナップを決めています。

購買層を教えてください。

アイテムにもよりますが、女性が8~9割、年齢は50歳代以上が9割です。一番のおすすめ商品は深夜のSSVでご紹介しますので、寝る前にSSVを観るのが習慣というお客さまも少なくありません。また、小型商品の送料は1日6点まで購入しても変わりませんので、まずは夜間にSSV商品を注文してから、同日の昼間にGGVや当社ウェブサイトを見て商品を追加注文される方も多く、半数くらいのお客さまが複数アイテムを購入されます。また、番組に出演するキャストのファンで、その人が紹介する商品は買うという方もいらっしゃいます。

売れ筋商品が毎日変わるという中で、物流ではどのような工夫をされていますか。

当社の1日の出荷件数は平均約5万2,000箱(産地直送品含む)で、そのうちの約5割をSSV・GGVを中心とした商品を注文する単行(たんぎょう)オーダーが占めますので、「単行スピードライン」という4本の専用ラインを設置しています。そこでは単行オーダーだけを扱い、配送用の段ボール箱に梱包する作業に専念することで効率化を図っています。番組内容は毎日変わりますので、単行スピードラインで取り扱う商品も24時間ごとに切り替わります。アクセサリーやメイク用品、アパレルのような小型商品もあれば、布団や家電のような大型商品もありますが、ほぼすべての商品を単行スピードラインで対応しています。

全体の約5割を占めるSSVやGGV商品の単行オーダーを効率的に出荷するための専用ライン。

そのほかの注文には、どのように対応されていますか。

SSVやGGV商品とほかの商品を組み合わせる場合や、カタログやウェブサイトなどに掲載されている商品はダイフクから提案のあったGTP(Goods To Person)というピッキングシステムで対応します。この仕組みは2022年4月に稼働した新拠点「ショップチャンネル南船橋物流センター」で導入しました。従来のセンターでは作業スタッフが倉庫内を移動して商品を集めるカートピッキングを採用していましたが、生産性を高めるべく検討を重ね、新センターではピッキング作業を担当するスタッフのもとに商品が自動的に届く仕組みにしました。オーダーピッキング時には該当商品の入ったコンテナがケース自動倉庫「ファインストッカー」(5万7,728棚)から出庫され、コンベヤを経て作業スタッフの作業位置に届きます。またピッキングした商品を入れる空コンテナとピッキングが完了していないコンテナは「シャトルラックM」(5,000棚)に一時保管しており、作業スタッフはピッキングのために移動することなく、流れてくるコンテナに商品を投入するだけで済み、生産性が大幅に向上しました。売れ筋のSSV商品を出荷する単行スピードラインと、多様な商品に対応するGTPは作業エリアを分け、それぞれのエリアで作業スタッフが効率的に作業できるようにしています。

各ステーションの定位置で効率的にピッキング作業が行え、生産性を大幅に高めたGTP。

商品在庫を保管するケース自動倉庫(左)と、ピッキングが完了していないコンテナを一時保管するシャトルラックM(右)。

自動化設備により生産性を向上し、人手不足に対応

南船橋物流センターは千葉県船橋市にある大型物流施設「三井不動産ロジスティクスパーク(MFLP)船橋Ⅲ」内にあります。移転のきっかけと施設について教えてください。

きっかけは設備更新と拠点集約です。千葉県習志野市にあった基幹センターは2007年の稼働開始から10年以上経過し、設備更新を検討するタイミングでした。また、規模拡大とともに施設や設備を充実させてきた関係で、拠点が5カ所に分かれていたので、これらを集約して効率化を図ろうと考えました。拠点が1カ所ならば在庫の横持ちを解消でき、生産性の向上も期待できます。拠点を1カ所に集約したことで複数アイテムの注文もまとめて発送でき、送料負担が軽減されて、当社だけでなくお客さまにも還元できています。

MFLP船橋Ⅲは複数の企業が入居する大型物流施設です。物件選定の理由は規模や賃料などの諸条件に加えて、JR京葉線・武蔵野線の南船橋駅から徒歩9分という立地に魅力を感じたからです。多くの企業の物流センターがそうであるように、当社でも人材の確保は大きな経営課題になっています。ここであれば電車通勤が可能ですし、施設内にはラウンジや休憩スペースのほか、飲食店やコンビニなども入っています。周辺には大型マンションもあり、人材も確保しやすい環境だと感じました。

商業施設に囲まれたMFLP船橋Ⅲ。建屋は免震構造を採用している。

地上8階建ての建屋のうち、8~6階と5階の半分の約10万m2を当社が使用しています。在庫の増加に対応するためパレット自動倉庫とケース自動倉庫の導入を検討しました。マテリアルハンドリングのメーカーは多数ありますが、当初からダイフクさんは最有力候補で、滋賀の展示場「日に新た館」で実際の製品を拝見してお願いしようと決めました。導入に際しては当社の作業内容に合わせてDPSの表示器の角度や棚の傾斜を調整するなど、細部をカスタマイズしてもらっています。

マテリアルハンドリングシステムの導入にあたって、こだわった点はございますか。

課題であった在庫商品の保管には、ダイフクが新たに開発した超高密度パレット自動倉庫「シャトルラックD3(ディースリー)」を導入しています。このシステムはラックの奥行き方向に複数パレットを保管する構造で、入出庫に必要な搬送用のスペースを減らし、保管用のスペースを拡張することで超高密度で保管を実現します。センターではすべての商品は7階から入庫します。パレット単位で保管する商品は7階の入庫コンベヤに投入すると、高速搬送台車「STV」などを経由して、7階(3アイル、2,793棚)もしくは8階(4アイル、4,593棚)のシャトルラックD3まで自動で搬送、保管されます。SSV商品は販売計画に基づき、シャトルラックD3から出庫され、6階のパレット自動倉庫「コンパクトシステム」(741棚)で一時保管します。また、ケース単位で保管する商品も7階の入庫コンベヤに投入すると、6階のケース自動倉庫まで自動搬送されます。各階をコンベヤや垂直搬送機でつなぐことで、どの階に商品を在庫していても意識することなく出荷作業が行えるようなレイアウトにしています。

シャトルラックD3(左)とコンパクトシステム(右)で、パレット単位の商品を効率良く保管。

新たに拠点を設ける上で、省人化は重要なキーワードの1つでした。以前のセンターでは、箱の組み立てや送り状の貼り付けなど、すべて人手で作業していました。今回、段ボール箱を組み立てる製函機や、段ボール箱の蓋を閉じる封函機、オートラベラーを導入しており、作業効率が格段に向上しました。人と機械でどのように作業を分担すれば生産性が高まるのか、今も考え続けています。例えば、GTPには9つのステーションがあり、そのうちの1つは将来的にロボットを入れられるように広く空けています。いまはまだ具体的な計画はありませんが、いずれトライアルで導入するかもしれません。

作業の最適解を見出すのは簡単ではなさそうですね。

はい、経験値を高めながら、運用面をチューニングアップしていく必要があると思っています。その一例が梱包作業の改善です。配送用の段ボール箱のサイズは出荷指示の時点で自動的に決まる仕組みになっており、梱包用レーンでは作業スタッフが同じサイズの箱にどんどん商品を梱包していく仕組みにしています。そのレーンが満杯になると、マニュアル対応のレーンに流れる仕組みにしたのですが、そのレーンではスタッフが最適な箱を選んで組み立てなければならず、非効率であることが分かりました。これについてはソフトウエアの修正で対応し、さらなる効率化を目指しています。

製函機(左)で組み立てられた段ボール箱に、梱包レーン(中央)にいる作業スタッフは緩衝材などで商品を保護し箱詰めを行う。コンベヤに投入後、封函機(右)を経て、出荷ラベルが自動貼付される。

単行スピードラインや梱包レーンで箱詰めされた商品は合流した後、サーフィンソータで方面別に仕分けされる。

「当社の商品は日配品ではなく、生活を豊かにするものがほとんどです。お客さまの心がおどる瞬間を想像しながら、バイヤーは商品を探してきますし、番組スタッフやキャストは放送をしています。私たち物流担当者も思いは同じ。すべてのお客さまが箱を開けて商品を目にする瞬間を日々意識して仕事に臨んでいます」(武井様)

ジュピターショップチャンネル株式会社
管理本部 物流部 出荷グループ
武井 純 様

2006年、ジュピターショップチャンネル株式会社入社。千葉県習志野市の茜浜物流センターを中心に5カ所にあった物流拠点を集約し、2022年4月に千葉県船橋市の三井不動産ロジスティクスパーク船橋Ⅲ内に新しい物流センターを開設するプロジェクトで、マテハン選定および設計に従事するなど、移転計画から立ち上げまでを率いる。現在は出荷グループで生産性向上に向けた業務に携わる。

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