生物多様性保全

ダイフクグループ 生物多様性に関する行動指針

基本的な考え方

ダイフクグループは、生物多様性保全への対応を、持続可能な社会の実現のために取り組むべき重要なテーマと認識しています。「ダイフクグループ環境方針」および「ダイフク環境ビジョン2050」のもと、中長期的な視点に基づく具体的な年次計画の実行によって「自然資本に与える負の影響ゼロ」を目指します。

行動指針

理解する
  • 計画的な教育・啓発を行い、グループ全役員・社員が生態系サービスの持続可能な利用や生物多様性保全の重要性について理解を深めます。
  • 国際的なガイドライン等を参照し、原材料調達から製品の廃棄に至る全ての事業活動が、生物多様性へ与える影響の把握・評価に取り組みます。
行動する
  • 生物多様性の保全に関する法規制や国際的なルールを遵守し、行政、NPO/NGO、地域住民、取引先、社員など多様なステークホルダーと連携・協働します。
  • ものづくりにおけるCO2排出量の削減や資源循環の促進、有害物質削減などにより生物多様性への負の影響を最小化します。
  • 土地の利用において周辺地域の生態系に配慮するとともに、各拠点で生物多様性の保全につながる取り組みを行います。
開示する
  • 自然資本に関する情報や生物多様性保全への取り組み情報を積極的に開示し、ステークホルダーとコミュニケーションを図ります。

制定:2023年8月31日

TNFD提言に基づく開示

当社は、2025年2月にTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)フォーラムへ参画し、TNFD提言の自然関連財務情報開示の中核要素であるガバナンス、戦略、リスクと影響の管理、指標と目標に沿って情報を開示しています。

  • Task Force on Nature-related Financial Disclosures

一般要件

マテリアリティの適用:
TCFD開示と合わせ、自然による当社への財務影響(シングルマテリアリティ)を開示しています。
開示のスコープ:
戦略」の「1. スコープの設定(Scoping)」をご参照ください。
自然関連課題がある地域:
戦略」の「2. 優先地域の特定(Locate)」をご参照ください。
他のサステナビリティ関連の開示との統合:
気候変動(TCFD)や他のサステナビリティ関連の開示と整合しています。
考慮する対象期間:
戦略」の「4. リスクおよび機会の評価(Assess)」をご参照ください。
先住民族、地域社会と影響を受けるステークホルダーとのエンゲージメント:
ガバナンス」の「ステークホルダーエンゲージメントの監督」をご参照ください。

ガバナンス

自然関連のリスクおよび機会に対する監督・執行体制は、気候関連と同様のガバナンス体制としています。詳細は、「TCFD提言に基づく開示」をご参照ください。

自然関連目標のモニタリングとインセンティブ

自然関連課題に対する計画・目標は、中期経営計画の枠組みの中でサステナビリティ経営委員会が進捗管理を行い、取締役会が監督しています。

自然関連の取締役会等での議題(2024年度)
取締役会
  • 2030長期ビジョンおよび2027中計の開示(4月、5月)
  • 「ダイフク環境ビジョン2050」における目標の見直し(4月、8月)
サステナビリティ推進委員会(2回開催)
  • サステナビリティアクションプラン進捗報告
  • TNFDに基づく開示について
  • 現地法人とのサステナビリティミーティングの結果

ステークホルダーエンゲージメントの監督

当社グループは、世界各地に事業拠点を有しており、事業を円滑に行うためには、近隣地域との良好な関係構築が欠かせません。そのため、国や地域によって異なる文化や法規制を理解した上で、社会貢献活動や各種団体との連携を通じて、ステークホルダーとの積極的なコミュニケーションを図っています。
当社グループは、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」や「国連グローバル・コンパクト」などの国際規範を支持しており、2021年に策定したダイフクグループ人権方針においては、人権への影響を受ける、あるいは受ける可能性があるステークホルダーを認識し、顕在化した、または潜在的な人権への負の影響に関する対応について、適切に対話と協議を行っていくこととしています。また、当社グループの調達活動においては、事業活動を行う地域の人々の健康と生活環境に負の影響を与えないよう、ダイフクグループ調達方針およびサステナブル調達ガイドラインを策定し、当社のサプライチェーン全体へ周知しています。
人権尊重を含むサステナビリティに関する取り組みの計画や進捗は、サステナビリティ推進委員会で管理され、最終的には、サステナビリティ経営委員会からの報告を通じて、取締役会が監督しています。
詳細は、以下をご参照ください。

戦略

当社グループはこれまで、事業活動と生態系との関係性を明確にするため、製品プロセスや土地利用などと生態系との関係を一覧できる「ダイフクと生物多様性の関係性マップ」を作成し、生物多様性に配慮した活動を行ってきました。
TNFD提言に基づく開示にあたっては、「ダイフクと生物多様性の関係性マップ」を前提に、TNFDが提示するLEAPアプローチに沿って、自然関連のリスクおよび機会の特定・評価を行いました。

  • LEAPアプローチ:LEAP(Locate, Evaluate, Assess, Prepare の頭文字)と呼ばれる自然関連のリスクと機会の管理のための統合評価プロセス

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ダイフクと生物多様性の関係性マップ

1. スコープの設定(Scoping)

当社事業のバリューチェーンを整理した上で、ダイフクおよび国内の自社グループ企業を対象範囲としました。バリューチェーン上流については、自社における重要度と自然への依存・影響の観点で主要なサプライヤーと原材料の選定を行い、対象範囲としました。主要な原材料については、高リスク天然一次産品、鉱物に関する規制、責任ある鉱物調達の対象鉱物を考慮して鉄、アルミニウム、銅を選定しました。

  • 高リスク天然一次産品:SBTs for Natureによって生産が自然に重大なマイナスのインパクトをおよぼすとされている商品または製品

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スコープの説明図

2. 優先地域の特定(Locate)

優先地域の特定方法

優先地域は、事業上の重要性(事業と自然の関連性)と、自然面での重要性(生態学的に要注意と考えられる地域)から特定しました。
事業における重要性の観点では、Scopingにて設定した自社グループ国内企業および主要サプライヤーについて分析を行い、当社グループの主要な事業活動(製造)であり、自然への依存・影響が比較的大きい生産拠点を対象としました。また、原材料(鉄、アルミニウム、銅)の採掘・加工地については、世界での埋蔵量や日本の貿易状況等から主要な採掘国および鉱山、加工国を推定し、対象としました。
これらの生産拠点・原材料採掘・加工地における自然面での重要性を把握するため、WWF Risk Filter※1、 Global Forest Watch map※2、事例収集により評価を行いました。評価は、TNFDが提唱する「生態系の完全性の低下」「生物多様性の重要性の高さ」「生態系の完全性の高さ」「水リスクの高さ」「生態系サービス提供の重要性」を要件としました。

  • ※1WWF Risk Filter:企業の生物多様性リスクおよび水リスクを評価するツール
  • ※2Global Forest Watch map:森林破壊、土地利用などのマップを提供するツール
優先地域の特定結果

評価の結果、下表の通り、自社グループの国内生産拠点のうち、「ダイフク滋賀事業所」と「ダイフク・マニュファクチャリング・テクノロジー本社」は、水リスク(洪水、水質)が高いことから優先地域に特定しました。両拠点の位置は下図の通りです。
そのほか、サプライヤーの生産拠点、原材料(鉄、アルミニウム、銅)の採掘・加工地についても、いずれかの要件で重要度が高いため、優先地域に特定しました。原材料の採掘・加工地は、チリ、ペルー、ブラジル、メキシコ、南アフリカ、コンゴ民主共和国、ギニア、アラブ首長国連邦、ナイジェリア、カタール、中国、韓国、台湾、タイ、インド、インドネシア、マレーシア、オーストラリア、ニュージーランド、アメリカ、カナダ、スウェーデン、オーストリア、ドイツであると推定しています。

拠点名 生態系の完全性
の低下
生物多様性
の重要性の高さ
生態系の完全性
の高さ
水不足/洪水/
水質リスクの高さ
生態系サービス
提供の重要性
ダイフク 滋賀事業所 Medium Medium Low High
(洪水、水質)
Low
ダイフク・マニュファクチャリング・
テクノロジー 本社
Medium Medium Low High
(洪水、水質)
Low
コンテック 小牧事業所 Medium Medium Medium Medium Low
  • Very High、High、Medium、Low、Very Lowの5段階で評価

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優先地域の特定結果:説明は上
Made with Natural Earth.

3. 依存および影響の評価(Evaluate)

当社事業のバリューチェーンの各工程における自然への依存および影響についてENCOREを用いて評価を行い、ヒートマップに整理しました。
その結果、バリューチェーン各工程で自然への依存および影響があり、特に、原材料(鉄、アルミニウム、銅)の採掘における依存および影響が大きいことが分かりました。具体的には、以下の通りです。

【依存】
  • 水関連の機能(水の供給、水質の浄化、流量の調整)
  • 自然災害への防災(植物による風水害の緩和(例えば、防風林など))
  • 気候調整の機能(植物による降雨調節、地球規模の気候調節機能 )
【影響】
  • 淡水域/海域における開発
  • 非生物資源(鉱物)の採取
  • 温室効果ガスの排出
  • 大気・土壌・水質の汚染
  • 廃棄物(鉱さい)の発生
  • 騒音等の攪乱

当社グループの製造、移設工事・点検・修理においては、自然への依存度は高くないものの、製造工程で発生する有害物質による土壌・水質汚染の影響は大きくなっています。

  • ENCORE:事業活動が自然にどのように依存し、自然に影響を与えるかを把握するツール
自然への依存のヒートマップ

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自然への依存のヒートマップ
自然への影響のヒートマップ(依存度)
自然への影響のヒートマップ

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自然への影響のヒートマップ
自然への影響のヒートマップ(依存度)

4. リスクおよび機会の評価(Assess)

Evaluateで依存・影響が大きいと評価した内容を「自然要因ドライバー」として整理し、そこから当社グループで将来的に想定される自然関連リスクおよび機会の洗い出しを行いました。
リスクおよび機会は、Locateの結果を踏まえつつ、当社グループの事業への影響度を定性・定量で評価し、これらの結果を「リスク発現・機会実現までの期間」「リスク発現・機会実現の可能性」「財務影響度」を軸に整理しました。それぞれのリスクおよび機会について、適切な対応策を実行していきます。
「期間」「可能性」「影響度」の定義は以下の通りです。

期間 短期:3年未満、
中期:3~10年、
長期:10年以上
可能性 小:やや不確実、
中:中間、
高:やや確実
影響度
売上高
小:60億円未満、
中:60~600億円、
大:600億円以上
利益・コスト
小:6億円未満、
中:6~60億円、
大:60億円以上
当社および国内グループにおけるリスク・機会
分類 自然要因ドライバー 主なリスク・機会 期間 可能性 影響度 リスク・機会への主な対応
移行リスク 政策規制 【原材料の採掘・加工】
海底利用、鉱物資源採取、大気・水・土壌汚染、廃棄物、騒音等の規制強化
自然関連の規制強化による調達コストの増加 中期~長期 ①サプライチェーンでの環境負荷低減
評判 【原材料の採掘・加工】
海底利用、鉱物資源採取、大気・水・土壌汚染、廃棄物、騒音等による悪影響
鉱物資源の採取・加工に伴う悪影響による評判悪化 中期~長期
政策規制 【自社製造】
大気・水・土壌汚染の規制強化
自然関連の規制強化による運営コストの増加 中期~長期 ②環境汚染防止の強化
政策規制市場 【自社製造、製品使用】
環境負荷の低減に関する規制
環境負荷低減に対する市場要請の高まり
環境負荷の少ない製品開発・設計の対応遅れによる売上の減少 中期~長期 ③マテリアルハンドリングシステムの環境価値と社会価値の追求
④有害物質関連規制への対応
物理リスク 急性・慢性 【原材料の採掘・加工】
水不足(干ばつ)、風水害の増加・激甚化
水不足、風水害による原材料調達コストの増加 中期~長期 ①サプライチェーンでの環境負荷低減
機会 資源効率市場 【原材料の採掘・加工】
鉱物資源の減少、循環型社会への移行
バージン原材料の削減による調達の持続可能性の向上 長期 ⑤省資源に対応した製品設計
資源効率 【自社製造】
資源効率の向上(水使用量、廃棄物発生量、エネルギー使用量等の削減)
資源効率化等による運営コストの減少 長期 ⑥水使用量、廃棄物発生量、エネルギー使用量等の削減
評判 【バリューチェーン全体】
自然関連の取り組み評価の厳格化、情報開示要請の高まり
自然関連の取り組みや情報開示によるESG評価や評判向上 中期~長期 ③マテリアルハンドリングシステムの環境価値と社会価値の追求
⑦自然保全活動の推進、イニシアチブへの参画
⑧自然関連の情報開示の充実化

なお、自然関連のリスク・機会を洗い出し、評価するにあたっては、気候関連のリスク・機会と同様、移行リスクおよび機会は1.5~2℃シナリオ、物理リスクは3~4℃シナリオにおける世界を想定しています。

5. 自然関連のリスクおよび機会への主な対応(Prepare)

当社グループでは「ダイフク環境ビジョン2050」を掲げ、「マテリアルハンドリングシステムが環境負荷ゼロで動く世界を実現する」という方針のもと、特定したリスク・機会に対して以下の対応を進めています。

①サプライチェーンでの環境負荷低減

2023年度に新たな基準として策定したサステナブル調達ガイドラインでは、エネルギーや水資源の効率的な利用、汚染物質や廃棄物の削減について明記しています。サプライチェーンにおけるリスクを把握・軽減するため、取引先に対して本ガイドラインの周知・浸透を図るとともに、その遵守状況の確認や監査を行っています。
このほか、製品の含有化学物質に関する判断基準を示すグリーン調達ガイドラインを策定し、有害性が懸念される物質が少ない製品を優先的に調達しています。さらに、2022年にはサステナビリティ推進委員会傘下の環境経営分科会で「グリーン調達プロジェクト」を発足し、当社製品に含まれる含有化学物質の適切な管理に向けた取り組みを進めています。

②環境汚染防止の強化

当社では、PRTR制度(Pollutant Release and Transfer Register)に基づき、特定化学物質の管理を行っています。
生産工程では、主に製品の塗装工程で塗料や有機溶剤を使用しており、部門ごとに使用量のデータを収集し、集計・届出を行っています。
また、主要拠点である滋賀事業所では、自社保有の3つの排水処理施設により排水を管理・処理していましたが、2022年度より順次公共下水への切り替えを行い、2023年3月に完了しました。これは、万が一適切に処理を行えず、異常排水を放流した場合のリスクや薬剤を取り扱うことによる従業員の生命や健康への影響、排水処理に要するコスト等を総合的に勘案して決定しました。処理方法の変更に伴い、下水道法で定められた水質基準を遵守しています。

  • 事業者が人々の健康や生態系に有害なおそれのある化学物質をどれだけ環境(大気、水、土壌)へ排出しているか国に届け出ることにより、化学物質の自主的な管理と環境汚染の未然防止を目的とした制度
③マテリアルハンドリングシステムの環境価値と社会価値の追求

2024年度より、製品・システムを環境価値と社会価値の両面から評価する「サステナビリティ性能評価」を開始しました。環境価値については、すべての製品開発時にLCA(Life Cycle Assessment)を実施し、CO2排出量、資源消費、生態毒性、エネルギー消費、大気汚染および水資源消費に関する環境影響を評価しています。また、当社グループ製品の稼働による消費電力や製品に使用する資源の最小化を目指した設計やさまざまな技術の活用に取り組んでいます。
当社グループの製品は、一般産業、半導体、自動車などの工場自動化や、物流センターの省力化、空港運営の効率化を通じて、人手不足や労働環境の改善、生産性の向上などに幅広く貢献しています。これまで培ってきた「モノを動かす技術」にAI等をはじめとした先端技術を掛け合わせることで、新たな課題解決に向けた技術の開発・導入にも積極的に取り組んでいます。

④有害物質関連規制への対応

欧州の化学物質規制「REACH規則(Registration, Evaluation, Authorization and Restriction of Chemicals)」では、欧州域内で製造・販売する製品に含まれる化学物質について、行政への登録や安全性評価が義務付けられています。また「RoHS指令(Restriction of the use of certain Hazardous Substances in electrical and electronic equipment)」では、電気電子機器において特定有害物質の含有を制限・禁止されています。
当社グループはこれらの有害物質関連規制の最新動向を注視し、グリーン調達ガイドラインの運用を通じて、サプライチェーン全体で連携しながら、海外も含めた法規制の順守に努めています。また、国内の主要取引先については、本ガイドラインをご理解いただき、化学物質の適切な管理を推進していただくため、受領書兼同意書を取得しています。

⑤省資源に対応した製品設計

当社グループは製品の原材料として主に鉱物資源(鉄、アルミニウム、銅等)や化石由来原材料(樹脂等)を使用しています。これらの鉱物資源や化石由来原材料は、世界全体での需要増大とともに資源の枯渇が進み、将来的に調達が困難になる可能性があります。一方で、循環型社会(サーキュラーエコノミー)への移行に伴い、鉱物資源・化石由来原材料のリサイクル材(再生材)の供給が増加し、活用が進むことも想定されます。
以上のことから、当社グループの調達における持続可能性向上のため、軽量化による原材料の削減やリサイクル樹脂の活用等、省資源に対応した製品設計を推進しています。

⑥水使用量、廃棄物発生量、エネルギー使用量等の削減

当社グループは、製造工程から出る不良品や梱包材などの廃棄物の削減・リサイクルを促進しています。グループすべての生産拠点で廃棄物重量の削減目標を設定し、進捗を管理しています。特に埋立処分量の削減に向けて分別回収を徹底し、再資源化率の向上に取り組んでいます。
また、水使用量の削減を目指して、生産活動およびオフィスにおける節水に努めています。滋賀事業所の最も水使用量の多い工場棟では、2022年度から節水システムの導入に取り組み、2023年度には年間水使用量を前年度比で約45%削減することができました。
水使用量およびエネルギー使用量の削減については、「TCFD提言に基づく開示」をご参照ください。

⑦自然保全活動の推進、イニシアチブへの参画

当社グループの主要拠点である滋賀事業所では、2014年から「結いプロジェクト※1」と名付けた生物多様性保全活動を行っています。
このプロジェクトの一環として、事業所内で希少種が生息する「結いの森」の整備や、滋賀県レッドデータブックに記載されているハッチョウトンボの生息地である湿地の保護に取り組んでいます。また、生物多様性保全の重要性を広めるため、滋賀県内の教育施設での講演の実施や、博物館で他企業と共同でトンボに関するパネル展示を行うなど、地域との連携を深める活動も展開しています。
また、当社グループは「ダイフク環境ビジョン2050」達成に向けて、自然関連問題の解決を目指すイニシアチブへ参加し、情報共有や政策提言の働きかけなどにも関与しています。
詳細は、「主な取り組み」「自然関連のイニシアチブへの参加」 をご参照ください。

  • ※1生物多様性保全を通じて、「水と緑」「自然と人」「人と人」を結び付ける諸活動
  • ※2「民間の取り組み等によって生物多様性の保全が図られている区域」を環境省が認定する制度で、2030年までに陸と海の30%以上で生態系を保全しようとする国際目標(30by30目標)を達成するために2023年から始まった認定制度
⑧自然関連の情報開示の充実化

ウェブサイトや統合報告書(ダイフクレポート)を中心に、継続的に自然関連情報の開示内容の充実を図っています。また、年に1回、当社グループの成長戦略などについて機関投資家と対話する場としてIR Dayを開催し、サステナビリティ関連情報も含めた説明の機会を設けています。

リスクと影響の管理

当社グループのリスクマネジメント体制

自然関連のリスクマネジメント体制は、気候関連と同様の体制としています。詳細は、「TCFD提言に基づく開示」をご参照ください。

自然関連の依存および影響、リスクおよび機会の管理

自然関連の依存および影響、リスクおよび機会については、TNFDが提示するLEAPアプローチに基づき評価を行いました。(詳細は「戦略」をご参照ください。)優先して対応すべき自然関連の依存と影響、リスクと機会については、サステナビリティ経営委員会、サステナビリティ推進委員会のほか、リスクマネジメント委員会も連携した上で、適切な対応策を講じてモニタリングしています。

指標と目標KPI

当社グループは、「ダイフク環境ビジョン2050」の中で「資源循環の促進」「自然との共生」をそれぞれ重点領域の一つとし、以下の目標を設定しています。

マテリアリティ KPI (実績評価指標) 2030年度(目標) 2024年度(目標)
資源循環の促進 廃棄物の埋立率 1%未満 国内:1%未満
海外:5%未満
廃棄物排出量売上高原単位※1削減率(2023年度比) 23% 4%
水使用量売上高原単位※2削減率(2018年度比) 60% 40%
自然との共生 主要拠点※3における生物多様性保全活動実施率 100% 10%
サステナビリティアクション※4のグローバル展開 プログラムの拡充・啓発 プログラムの拡充・啓発
  • ※1廃棄物排出量(t)/売上高(億円)
  • ※2水使用量(千m3)/売上高(億円)
  • ※3従業員数100人以上の拠点
  • ※4サステナビリティに関する啓発・教育のための当社グループ独自の社員参加型プログラム

グローバル中核開示指標

TNFD提言におけるグローバル中核開示指標の実績は以下の通りです。指標の番号は、TNFD提言に基づくものです。現状、開示ができていないグローバル中核開示指標については、今後のデータ収集により開示を目指していきます。

No. 自然の変化の要因 指標 項目 報告範囲 2024年実績
気候変動 GHG排出量 Scope1+2
Scope3
ESGデータ」参照
C1.0 陸/淡水/海洋利用の変化 総空間フットプリント 組織の管理下にある総表面積 グローバル生産拠点のみ 2,309,146m2
C1.1 陸/淡水/海洋の利用変化の範囲 持続的に管理されている陸/淡水/海洋生態系の範囲 滋賀事業所「結いの森」 26,300m2
C2.0 汚染・汚染除去 土壌に放出された汚染物質の種類別総量 PRTR法対象物質 汚染防止と資源循環」参照
C2.1 廃水放出 排出された水の量 ESGデータ」参照
PRTR法対象時物質 汚染防止と資源循環」参照
排出される水の温度 グローバル 生産活動において、水温はほとんど変化しない
C2.2 廃棄物の発生と処理 有害廃棄物および非有害廃棄物の種類別の総発生量 国内主要拠点のみ 有害廃棄物:0t
非有害廃棄物:0t
廃棄された有害および非有害廃棄物の重量 グローバル生産拠点のみ 埋立処分量:534.5t
単純焼却量:115.9t
廃棄された有害および非有害廃棄物のうち埋め立てが回避された重量 グローバル生産拠点のみ リサイクル量:1,839.5t
リサイクル率:93.0%
C2.4 温室効果ガス(GHG)以外の大気汚染物質総量 ばいじん、SOX、NOX、PRTR法対象時物質 汚染防止と資源循環」参照
C3.0 資源の利用・補充 水不足地域からの取水量と消費量 水不足地域からの取水量 環境経営」参照
C3.1 陸/海洋/淡水から調達する高リスク天然一次産品の量 高リスク天然一次産品の量(鋼材、アルミ材) ESGデータ」参照
C7.2 自然関連のマイナスのインパクトにより当該年度に発生した多額の罰金、科料、訴訟の内容と金額 環境法規制違反による罰金額(水を含む) ESGデータ」参照

主な取り組み

滋賀事業所での保全活動

滋賀事業所は滋賀県下最大級の敷地面積を有する工場です。事業所内の生態系調査の結果、1,000種以上の在来種のほか、環境省レッドリストおよび滋賀県レッドデータブックに掲載されている野生生物が70種以上確認されています。この豊かな自然環境を将来に引き継ぐため、社内外のコミュニケーションを促進する「結いプロジェクト」を通じて、さまざまな生物多様性保全の取り組みを進めています。

  • 結いプロジェクトとは、生物多様性保全を通じて、「水と緑」「自然と人」「人と人」を結び付ける諸活動

生態系調査結果(絶滅危惧種、希少種など)

滋賀事業所内で生息または生育する野生生物のうち、「環境省レッドリスト2020」および「滋賀県レッドデータブック2020年版」において、絶滅のおそれのある種として掲載されている種は以下の通りです。

環境省レッドリスト2020
絶滅危惧II類(VU):絶滅の危険が増大している種
準絶滅危惧(NT):現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種

(2023年4月時点)

カテゴリー 分類 種和名 種数
絶滅危惧II類(VU) 鳥類 ハヤブサ 1
両生類 ヤマトサンショウウオ 1
昆虫類 トゲアリ 1
植物 キンラン、キキョウ 2
準絶滅危惧(NT) 鳥類 マガン、ハチクマ、ハイタカ、オオタカ 4
爬虫類 ニホンイシガメ 1
両生類 トノサマガエル 1
昆虫類 ネアカヨシヤンマ、キイロサナエ、フタスジサナエ、オグマサナエ、ミヤケミズムシ、コシロシタバ、スジヒラタガムシ、ミユキシジミガムシ、クロマルハナバチ 9
植物 ヒメコヌカグサ、イヌタヌキモ 2
合計 22

結いの森整備

「結いプロジェクト」の一環として、「結いの森」(滋賀事業所内の保全池・学習広場等)を整備しています。地域特有のアカマツ林や希少種であるヤマトサンショウウオなどの生物多様性保全を行うとともに社内外の学習の場として活用しています。

保全池(人工池)でのヤマトサンショウウオの繁殖

  • 保全池

    保全池

  • 保全池で産卵を確認

    保全池で産卵を確認

  • ヤマトサンショウウオの成体

    ヤマトサンショウウオの成体

絶滅が危惧されるヤマトサンショウウオの保全に取り組んでいます。安定した生息環境を確保するため、2014年に保全池を造成し、事業所内に生息する幼生や卵の移殖を続けてきました。2021年度以降、保全池で産卵・孵化したことを毎年継続して確認しています。2024年度以降、滋賀事業所の再開発により野生のヤマトサンショウウオの生息地が減少するおそれがあったため、保全池以外に新たな生息地を造って幼生を放流するなど、生息環境の維持・改善に向けて継続的な取り組みを行っています。

「自然共生サイト」への認定

30by30ロゴ

2024年9月に「結いの森」が、環境省の「自然共生サイト」へ認定されました。「自然共生サイト」とは、民間の取り組み等によって生物多様性の保全が図られている区域が認定されるもので、当社の生物多様性に対する取り組みや社内外との交流活動が評価され、今回の認定につながりました。

ハッチョウトンボの生息地確保

  • ハッチョウトンボ

    ハッチョウトンボ

  • 造成した湿地

    造成した湿地

  • 成虫の移動

    成虫の移動

滋賀事業所の再開発に伴い、ハッチョウトンボの生息が確認された湿地の一部が消失するため、影響を最小限に抑えるとともに、新たな生息地の確保に取り組んでいます。2023年度には、事業所敷地内に新たな湿地を造成し、既存の生息地から湿生・水生植物や表土とともに、ハッチョウトンボの卵・幼虫・成虫を移殖しました。移植した植物は順調に成長し、ハッチョウトンボが定着しやすい環境が整備されています。2024年度から実施している新たな湿地での生息調査でも、成虫の定着が確認されています。

自然と触れ合う機会づくり

イベントの様子

滋賀事業所では、生息する多くの動植物に従業員が触れ合う機会として専門家を交えた自然観察会、事業所にある自然の素材を使ったクリスマスリース作りイベントなどを開催しています。

海外子会社における保全の取り組み

海外現地法人の取り組み

インドの海外子会社であるDaifuku Intralogistics India Private Limitedでは、10年以上にわたり、植樹を通した生物多様性の保全に取り組んでいます。地域の気候や土壌に適した在来植物を積極的に植樹することで、地域の生態系保全に貢献するとともに、緑に囲まれた快適な労働環境の整備にもつながっています。

自然関連のイニシアチブへの参加

当社グループは「ダイフク環境ビジョン2050」達成に向けて、自然関連問題の解決を目指すイニシアチブへ参加し、情報共有や政策提言の働きかけなどに関与しています。

参加しているイニシアチブ

  • TNFDフォーラム
  • 30by30アライアンス
  • 経団連生物多様性宣言イニシアチブ
  • 一般社団法人ブルーオーシャン・イニシアチブ
  • しが生物多様性取組認証制度
  • 企業連携によるトンボ保全活動「生物多様性びわ湖ネットワーク」
  • 大阪湾ブルーカーボン生態系アライアンス
  • おおさか生物多様性応援宣言

地域社会との連携

ヤマトサンショウウオを滋賀県立琵琶湖博物館へ寄贈

ヤマトサンショウウオ寄贈

当社では、地域社会と連携して生物多様性保全活動に取り組んでいます。2019年には「地域個体群の保全」を目的として、滋賀事業所内の保全池で産卵したヤマトサンショウウオの卵を滋賀県立琵琶湖博物館へ寄贈し、生息域外保全を行っています。2025年には、同博物館で開催された「ヤマトサンショウウオの幼体」に関する水族トピック展示に合わせて、滋賀事業所内で孵化した幼体を分譲しました。

企業連携によるトンボ保全活動「生物多様性びわ湖ネットワーク」への参画

企画展示(琵琶湖博物館)の様子
企画展示(琵琶湖博物館)の様子

滋賀事業所の近隣企業で「生物多様性びわ湖ネットワーク」を2016年に立ち上げ、県内で確認されている100種のトンボを指標とした生物多様性保全活動を展開しています。「トンボ100大作戦~滋賀のトンボを救え!~」と題したプロジェクトでは、①滋賀県のトンボ100種を探そう、②守ろう、③みんなに知らせよう、の「3つの作戦」を掲げて、企業敷地での定期的なモニタリング、ビオトープの整備や外来生物の駆除、自然観察会や活動の展示・発表、周辺地域の自然の現状把握、などに取り組んでいます。

  • 現在は、旭化成株式会社、旭化成住工株式会社、積水樹脂株式会社、ダイハツ工業株式会社、株式会社ダイフクの5社で活動

一般社団法人ブルーオーシャン・イニシアチブ

BOI

当社は、企業連合によるブルーアクション・プラットフォームである一般社団法人ブルーオーシャン・イニシアチブ(BOI)に2023年から賛助会員として参画しています。BOIは、「海」に関わるあらゆるステークホルダーとの多面的交流と事業共創を通じ、持続性・実効性のある「海の保全と繁栄」を目指して活動の幅を広げています。

大阪湾ブルーカーボン生態系アライアンス

当社は、2024年から大阪府の「大阪湾ブルーカーボン生態系アライアンス(MOBA)」に賛同しています。本アライアンスは大阪湾をブルーカーボン生態系(CO2を吸収・貯蓄する藻場・干潟等)の回廊でつなぐ「大阪湾MOBAリンク構想」の実現に向けて、大阪湾におけるブルーカーボン生態系の創出等について賛同し、活動に協力する企業、団体、研究機関、行政機関等を会員として活動しています。

おおさか生物多様性応援宣言

おおさか生物多様性応援宣言

当社グループの株式会社コンテックは、大阪府の生物多様性保全活動に賛同しています。2023年、「おおさか生物多様性応援宣言」を大阪府に提出し、登録が認められました。本登録制度は、大阪府が、生物多様性の保全に積極的に取り組むことを宣言する府内の企業や団体に対して、取り組みをサポートする制度です。

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