社会インフラを支えるダイフクの技術より高い信頼性と生産性向上へ、ダイフクの半導体生産ライン向けシステム

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半導体製造においては24時間365日の稼働を実現する信頼性の高い搬送・保管システムが欠かせません。生産設備の稼働率を最大化するクリーンルーム用搬送システム「クリーンウェイ」や、半導体の微細化に対応する窒素パージ式の保管システムなど、ダイフクの半導体生産ライン向けシステムについて、クリーンルーム事業部のエンジニアリング部門および設計部門の担当者が解説します。

半導体工場のトレンドは集約化と大規模化

パソコンやスマートフォンなど、身近なところに多用されている半導体。自動運転技術や電気自動車(EV)、人工知能(AI)などの成長分野でも必要不可欠であり、半導体メーカーは旺盛な需要に対応するため、世界各地に生産拠点を増やしています。日本を含む各国政府も域内投資を補助する方針を打ち出していることから、今後も半導体メーカーによる設備投資は堅調に推移する見込みです。

主要な半導体メーカーは旺盛な需要に対応するため、工場の集約化による大規模化を推進しています。工場は立地を分散させるよりもエリア内に集約する方が建設コストを抑えられ、製造時の電力や水などの資源も節約可能です。また、高価な最先端装置を運用する際にも、装置を共用しやすい集約化の方が適しています。

このような市場動向を前提に、当社グループでは工場内の搬送だけでなく、複数の工場をつなぎ半導体のウエハを円滑かつ効率的に搬送するソリューションを提案しています。

大型化する半導体工場のイメージ

ダイフクは前工程と後工程のそれぞれにシステムを提供

一般的に半導体の製造は、空気中の埃や塵などが一定以下になるように厳密に管理したクリーンルーム内で行われ、最初に原料のシリコンを溶かしてインゴットと呼ばれるシリコンの塊を作ります。これをスライスしたものがウエハで、昨今の主流は直径300mmの円盤状の「300mmウエハ」です。このウエハに露光や現像、エッチングなどの加工を何十回も繰り返して回路を焼き付けることを前工程といいます。一方、ウエハからチップを切り出してCPUなどに加工する工程を後工程といいます。

当社では、半導体製造において前工程向けの搬送システムと後工程向けの搬送システムのどちらも扱っています。いずれのシステムも核となるのはビークル(電動台車)を使ったクリーンルーム用搬送システム「クリーンウェイ」です。前工程では、ウエハをFOUP(フープ)と呼ばれる密閉容器に格納しクリーン度を保った状態で、加工を施すさまざまな装置の間を往来する必要があり、クリーンウェイはそれらの装置間でFOUPの搬送をすべて自動で行います。搬送用レールを床ではなく天井に張り巡らせるため、クリーンルーム内に装置を数多く配置できることから、同システムは半導体工場で広く使われています。また、ビークルの車輪に使用する素材は何度も改良を重ねるなど、半導体の大敵である粉塵の発生を最小限に抑える工夫がなされています。

後工程向けクリーンウェイのデモライン

このクリーンウェイに組み合わせるのが一時保管用の「クリーンストッカー」です。前工程では加工作業を繰り返し行いますが、それに要する時間は一律ではありません。そのため、次の工程を待つウエハを格納したFOUPを安定的に一時保管するためにストッカー内に格納しておくのです。また、製造期間の長期化や半導体の微細化を背景に、FOUP内に酸化防止のための窒素を充填することが増えています。

窒素パージストッカーを備えた、半導体生産ライン向けシステム

ストッカーはFOUPをまとめて保管できるメリットがありますが、搬送ルートから離れたところに設置することが多く、工場のレイアウトによってはストッカーとの往復に時間がかかります。そこで最近では、搬送用レールの間の空きスペースに荷受け台を設置する「サイドトラックバッファ(STB)」が主流になりつつあります。製造に180日間ほどかかる最新のCPUでは、STBを利用すれば5日間ほど短縮できるケースもあります。180日のうちの5日というと、わずか3%と思われるかもしれませんが、効率化と生産性向上を追求してきた半導体工場において3%の納期短縮は劇的な成果といえるでしょう。

STBはサステナビリティの観点でも意味があります。ストッカーは設置に一定の床面積を必要としますが、STBは空中に設置された台に置く構造のため、クリーンルームの省スペース化が図れ、電力や水の使用量の抑制につながることから、省エネ、効率化が見込める手法として注目されています。

AIで1万台超のビークルを制御し、渋滞を回避

半導体工場の大規模化に伴い、クリーンウェイのレールの総延長が200km、ビークルの数が1万台を超える規模になることもあります。半導体工場ではウエハの加工手順は決まっていても、個々の作業時間は一律ではないため、ある装置周辺にビークルが集中して渋滞が発生することがあります。渋滞すると生産性が低下するため、当社では渋滞を回避して搬送効率を高められるように、クリーンウェイのシステム全体を動かすソフトウェアにAIを導入しています。カーナビゲーションシステムのように、AIが渋滞を回避する経路を計算し、それぞれのビークルが迂回も含めた最適なルートを走行できるように設計しています。旧システムは最短距離の選択しかできませんでしたが、AIを採用したことで遠回りに見えても最適な経路を動的に選択できるようになりました。AIはさらなる進化が期待できる技術ですので、今後もよりよいシステムを探究していきます。

半導体製造を支える高度な制御技術

また、大規模の設備を24時間365日絶えず運転させることは容易ではなく、当社では長期使用に耐えられるハードの耐久性はもちろんですが、安定稼働を支えるソフトウェアの開発やシステムの運用にも力を入れています。
例えば、クリーンウェイは摩耗による粉塵の発生を抑えるため、非接触給電搬送システム「HID」を使用しています。HIDは同じ機能を持つ設備をもう1つ用意しておく二重化対策を施し、継続的な電力供給を行います。他にも、システムの運用に欠かせないコントローラーやサーバーなども同様に、各2台を用意して並列処理させておき、一方に不具合が発生してももう一方が稼働して運転を継続できるようにしています。

また、レールの合流地点には、これまではビークルの衝突防止のためのコントローラーを設置していましたが、現在のシステムではコントローラーを置かず、無線対応としました。ビークルが合流地点に近づくと、無線で情報をやりとりし、他のビークルと衝突しないことが確認できると通過するようにしたのです。レールに付随する装置を減らせるため、コスト削減や工期の短縮化などの効果が得られ、必要な資材やエネルギーの削減にもつながり、環境に優しい技術でもあります。

後工程での自動化ニーズに対応

現在、半導体業界では新たに後工程の自動化ニーズが高まっています。これまで半導体はシリコンウエハを加工する前工程の進化により生産性向上を実現してきましたが、さらなる効率化のためにはウエハの切断やチップのパッケージ化を行う後工程の進化が欠かせません。後工程は前工程に比べて人間の手作業に頼っていた部分が多かったのですが、クリーン度を保った環境の中で、工程間搬送を自動化することで、より高品質な製品を作ることができ、効率化が期待されます。

もう1つのニーズがパネルへの対応です。前工程では円形のシリコンウエハに回路を焼き付けていますが、後工程では製品に合わせて四角く切り出したチップを扱うので、必ずしも円形である必要はありません。そこで、後工程ではなるべく無駄な部分ができないように、製品と同じ四角いパッケージの利用が注目されています。
当社の場合は有機ELパネルの搬送で培った技術を応用し、600mm角基板を扱えるパネル・レベル・パッケージ(PLP)用FOUPの搬送技術を確立しました。これは単に四角い形状に対応するということではなく、基板に使用する素材なども改善したことで実現しており、半導体工場の一層の効率化に貢献し得ると考えています。

半導体後工程向けのソリューション

世界各地に拠点を持ち、現地での対応を可能に

さらに、クリーンルーム事業部門ではマザー工場となる滋賀事業所の他に、中国、台湾、韓国に生産工場があり、米国とシンガポールにも現地法人を有していることが大きな特長です。設備のコアになる部分は日本から送っていますが、搬送用のレールなどは現地で設計や組み立てを行っています。これを我々は「地産地消」と呼んでいます。現地法人には営業担当者だけでなくエンジニアもおり、密にコミュニケーションを取ることができ、お客さまからのご要望やご意見などに対して、日本から設計担当者が現地に赴かなくとも現地法人のエンジニアがお客さまと連携できる体制になっています。お客さまのご要望にすぐに対応できる体制を敷くとともに、お客さまの生の声を設計や開発に生かせることはダイフクグループならではの強みといえるでしょう。

2023年にリニューアルした中国の生産拠点(左)と、韓国の生産拠点(右)

中島 真一

株式会社ダイフク
クリーンルーム事業部 営業本部 エンジニアリング部 部長

伊井 太津喜

株式会社ダイフク
クリーンルーム事業部 生産本部 設計部 搬送設計グループ
VHL設計2課 係長

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