社会インフラを支えるダイフクの技術AGVを活用した手荷物検査台「MIT」が米国で空港スタッフの負担軽減に貢献

検査ステーションへ自走するMITはAGVであると同時に、検査台としての役割も果たしている。
台の高さはスタッフが検査を行いやすいように調整されている。

空港では安全な運航のために、搭乗客から預かった手荷物を機内に積み込む前に爆発物検知システムによるスクリーニングを行っています。追加検査が必要になった手荷物は、米国の空港においてはTSAスタッフが検査ステーションに運び、安全性が確認できたらコンベヤに戻すといった作業を行っています。こうした作業の負担軽減に貢献するのが無人搬送車式手荷物検査台「MIT」です。MITで使われている技術や導入による効果について、開発を担った当社グループ会社であるDaifuku Airport America Corporation(以下、当社)のExecutive Manager of Sales, Marketing, and EstimatingのGarrett Kelly と、Executive Manager of Autonomous Technologies and SoftwareのNick Ellensが紹介します。

  • TSA:米国運輸保安庁。米国の空港で保安検査業務を行う。

MITで運搬業務による身体の負担を軽減

「無人搬送車式手荷物検査台(MIT:Mobile Inspection Table)」とはどのような製品でしょうか。システムの全体像を教えてください。

空港内は旅客用ルートと機内預け入れの手荷物用ルートに分かれています。旅客はチェックイン手続きの後、搭乗口に向かい、預け入れられた手荷物はコンベヤに載せられてメイクアップエリアへと運ばれ、飛行機への積み込み準備が行われます。その途中、手荷物は爆発物を検知するスクリーニング検査を受けます。スクリーニング検査はコンベヤに載せたままで行われ、合格したらそのままメイクアップエリアに搬送されます。
一方、不合格になった手荷物は別のルートを通って受託手荷物調整エリアに向かい、個別に追加検査を受けます。
米国の空港では、TSAスタッフが手作業でコンベヤから手荷物を下ろし、検査ステーションまで運んで検査を行い、合格した手荷物をコンベヤに戻すという作業を行っています。20kgを超えることもある手荷物を上げ下げする作業は身体への負担が大きいため、腰痛などに悩まされるスタッフも多く、運搬業務による労働災害が長年にわたる課題でした。

MITを活用したソリューションでは、無人搬送車(AGV)が追加検査のための手荷物の運搬作業を担います。MITは不合格の手荷物を載せてTSAスタッフのもとへ搬送し、TSAスタッフは手荷物をMITに載せた状態で検査します。この検査に合格したら、MITは手荷物を載せたまま再び自走し、メイクアップエリアに向かうルートに手荷物を戻します。
こういった一連のMITの働きによって、スタッフの労働負担を大幅に軽減でき、受託手荷物調整エリア内の省人化にも貢献しています。さらに、スタッフは手荷物を運ぶ作業から解放されて検査業務に集中できるため、その点においてもMITによって作業効率が向上したと好評を得ています。

MITの導入例を教えてください。

ミシガン州デトロイトのメトロポリタン・ウェイン・カウンティ空港の事例を紹介します。同空港は、年間3,300万人以上の旅客が利用する全米で忙しい空港の1つです。空港ではシステムの自動化や効率化に取り組んでいますが、手荷物検査でもMITを導入することによって、効率化だけでなく重い手荷物を扱うことによる作業負担が改善されました。

米国の空港として初めてMITを導入したメトロポリタン・ウェイン・カウンティ空港では、旅客数の多さに比例して使う手荷物の量も多い。
多くの手荷物をタイムリーに搬送し、安全かつ確実に目的地まで届けるには人間とテクノロジーとの協働が欠かせない。

実績ある当社の産業用AGVを空港向けに開発

AGV自体はさまざまな場所で使用されていますが、MITにおけるAGVに何か特色はありますか。

MITは、当社が開発した産業用AGVを空港向けに手を加えたものです。例えば、検査が終わった手荷物をコンベヤに戻す際、人手を介さず下ろせるように、手荷物を自動的に滑らせて戻す傾斜式のテーブルを採用しています。素材はステンレス製で機能性に優れ、清掃も簡単に行うことができます。

開発におけるブレークスルーの技術について教えてください。

コンベヤからMITに手荷物を載せるトップローディング技術は、当社のバゲージトレイシステムに使われている制御システムをAGVに適用させたものです。さらに、障害に対する回避の許容範囲を設定できる制御システムにより、効率的な搬送が可能になっています。これらの技術と、AGVの車両管理を行うフリートマネージャ、機器を自動制御するPLCを組み込んだことで、MITは空港向けソリューションに新たな価値を生み出すシステムとして誕生しました。

MIT導入で、空港ではどのようなメリットが期待できるのか、ポイントをまとめて教えてください。

まとめますと、MITシステムには以下のような利点があります。

  • TSAスタッフが重い手荷物を検査台まで運ぶ必要がなく、腰痛などの負担を軽減できる
  • 定位置で検査を行えるため、作業効率を高められる
  • 従来のコンベヤシステムよりも電力消費を抑えられる
  • 従来のコンベヤシステムと比較して、騒音レベルを低減している
  • 床面の磁気テープの貼り直しだけで、走行ルート変更にも柔軟に対応できる
  • MITの検査台は従来の検査台とサイズが同じで扱いやすい
  • 複数の手荷物を並行して検査可能なため、作業時間を短縮できる
  • 複数のAGVで運用するため、1カ所でエラーが起きても、手荷物搬送が滞らない

改善を続け、さらに良いシステムに

MITはどのような空港にも導入できるのでしょうか。

MITは、中~大規模の空港ターミナルを新設する時や、手荷物検査ステーションを刷新する時に導入するのがおすすめです。複数台のMITが安全に行き来できる十分な広さを確保する必要があるためです。
ただし、コンベヤシステムを設置するのに比べて工事も簡単で、床にレールなどを敷設する必要もなく柔軟にレイアウトを組むことが可能です。導入後のレイアウト変更にも対応できるので、長期的な視点でご検討いただくのも良いと思います。

技術的に改善の余地はありますか。

MITはバッテリー駆動の電動車両で、搬送ルートの床面に設置された充電ポイントで充電が行われます。現在は大容量の電力を蓄えることができるリチウムイオンバッテリーの導入に加えて、チャージバランスのアルゴリズム改良に継続的に取り組んでおり、さらに良いシステムを目指しています。

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