ダイフク流課題解決自動化と省力化がもたらす本質的な価値

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無添加化粧品やサプリメントで知られる株式会社ファンケル様(以下敬称略)は、研究開発から製造、流通、販売までを自社で手掛ける製販一貫体制を敷いています。2008年に稼働した関東物流センターに続き、2021年には大阪府門真市に関西物流センターを新設。関東の経験を盛り込んで計画した関西物流センターの特長と同社の物流戦略について、同社上席執行役員の永坂順二様に伺いました。

御社は無添加化粧品をはじめとする自社開発製品を、多彩な販売チャネルで販売されていますね。

創業当初から続けている通信販売の取り扱いが売上全体の50%と最多です。あとは直営店舗が23%、ドラッグストアやコンビニエンスストアなどの流通が18%、海外出荷分が9%となります。当社の強みはメーカーでありながら自社で販売機能を有し、お客さまと直接つながっていることです。

一時期はインバウンド効果で店舗・流通の売上が通信販売に匹敵するまでに拡大しましたが、コロナ禍で店舗販売が一気に落ち込み、そんな時でも通信販売があったおかげで他社より優位性を発揮できました。しかも、当社は通販システムも自前ですから、いち早くデータを分析して、市場環境の変化に対応することができるのも強みだと言えます。

自社ですべてを手掛けることの大変さを上回るだけの利点があるわけですね。

「新鮮・つくりたての商品をお客様にお届けしたい」という、創業者のシンプルな考え方に基づくものです。当社製品は無添加で、化粧品には珍しく製造年月日を明記し、使用期限も設定しています。お届けまでのリードタイムが長くなれば、鮮度が落ちますから、通信販売限定で創業し、当初は百貨店からの取り扱いオファーも断っていました。その後、お客さまの声にお応えして直営店舗や百貨店などで販売を始め、コンビニエンスストアからのお声掛けでサプリメントの卸を始める、という具合に徐々にチャネルを広げてきました。

海外にも卸販売をしています。海外向け商品は一部を除き、船便でまとめて出荷しており、商品は物流センターを介さずに工場からの直送を基本としています。

2021年6月から関西物流センターが稼働を開始しました。拠点新設の背景について教えてください。

以前は無添加化粧品やサプリメントなどファンケル製品は千葉県の関東物流センターで、エイジングケア化粧品を販売するグループ会社アテニアの製品は滋賀工場の近隣の物流拠点で、それぞれ扱っていましたが、いずれも出荷能力が限界に近づいていました。関東物流センターは数年後に関西にも物流拠点を造る前提で建てたセンターです。業績の影響で関西の新設計画は想定より遅れましたが、インバウンドの好況もあって業績は回復、2018年3月期にプロジェクトを再始動することができました。

今回の計画は、当社が50周年を迎える2030年にグループの目指す姿を描いた「VISION2030」をベースにしています。ビジョン実現のために関西物流センターはどうあるべきか、物流全体をどうすべきかを考え、ひっ迫している関東の負荷分散とアテニアの物流改革を中心に、BCP(事業継続計画)の観点も盛り込んで計画を取りまとめました。

関西物流センターの計画に当たってこだわった点を教えてください。

一番のこだわりはマテリアルハンドリング(マテハン)システムを自社投資で導入することでした。関東はサードパーティー・ロジスティクス(3PL)の投資で造ったので、初期投資が抑えられましたが、設備の減価償却が終わってからも管理費の支払いは続きますし、設備更新も自社の都合だけではできません。

何より自社投資のメリットは、私たちの思いを形にできることです。当社はお客さま起点で物流の最適化を考えますが、3PLは生産性や投資効率も重要なので、意見が折り合わなければ、当社が目指す物流を実現できません。今回は自社投資が最善と判断しました。

ピースピッキングロボットなど関東にはない設備も多数導入されています。

関西物流センターでは省人化と省力化を進めると同時に、物流の品質とスピードの向上を目指しました。ダイフクさんにはその条件で最大限の提案をいただき、最新鋭の設備を入れるとどのくらい省人化ができるのか、自動化やロボット化のメリットはどの程度かなどを意見交換しながら仕様を決めました。

ピースピッキングロボットを導入したのは1人でも人員を減らすことに価値があるからです。ダイフクさんには「投資に見合わないのでは」との助言をいただきましたが、当社の意志で導入を決めました。関西で取り扱う2割の売れ筋商品は全体の物量が多いですし、通販でまとめ買いするお客さまも多いので、特に高頻度品の集品には繰り返しの作業に強いロボットの特性を生かすことができています。

4階では高頻度品の集品を行うピースピッキングロボットが2台稼働。

自社投資だからできた
長期的視野に立った投資判断

省人化に強くこだわる理由を教えてください。

日本の労働人口はどんどん減っていきます。人が行う方が早い作業は多いのですが、人任せの仕組みにすると、人が採用できなくなれば物流が止まり、商品を出荷できなくなります。人材難は今後も続きますし、外国人の方を雇用する機会もあるでしょう。誰でも働けるように、難しいことはシステムと仕組みですべて賄えるように、これからは自動化・ロボット化していかざるを得ないと考えています。

自動投入ピッキングラインも省人化に貢献するシステムですね。

はい。以前にダイフクのショールーム(日に新た館)で拝見し、次の物流拠点では導入したいと思っていました。理由は作業者の商品へのタッチ回数が減らせるからです。物流の生産性は作業者が商品に何回触れるかで決まります。関東物流センターの場合は商品を棚からピッキングして仮置き台に載せ、コンテナに投入し、梱包ステーションでまた商品を取り出しスキャンするなど、5~6回は触れています。接触1回あたりは数秒間でも、積算すれば相当な作業時間になりますから、タッチ回数はできる限り減らしたいと考えています。

自動投入システムなら商品をピックして台に置くだけでコンテナに自動的に投入され、同時に重量検品ができますから、1商品あたり2~3回の接触が減らせています。

スタッカークレーンによる自動補充システムを備えた通信販売向けの集品ライン。
棚からピッキングした商品を自動投入装置に置くとコンテナの到着に合わせて投入される。

また、直営店舗向けの集品フローも、シャトルラックMを導入したことでピッキングから梱包までを1カ所で行うことができ、タッチ回数が減るだけでなく、省力化にもつながる良い仕組みだと思っています。

直営店舗向けの商品提供に活用しているシャトルラックM(写真左側)。
さまざまな形状の段ボールケースとコンテナが格納され、スピーディかつ正確なハンドリングが行われている。

お届け明細書、送り状、パンフレットなどを24点から選択丁合して集品コンテナに投入する自動丁合機。

実際に稼働してから気付いたことや課題だと感じておられることはありますか。

物流拠点では固定費が一番気になるので、空間を最大限に活用したいと思っています。関西物流センターは天井高が7mありますが、上部の空間はほとんど使っていません。今後は改善したいポイントです。

総じて、関西物流センターの出荷能力には満足しています。丁合機は他社製ですが、ダイフクさんがうまく連携させてくれて、省人化につながっています。人手で行っている梱包はもっと自動化できたと思いますが、時間的な制約や費用対効果も含めて考えると致し方ないところもあります。あとは、保管効率を上げたいですね。

「もっと何かできるはず」の想いで
お客様満足を向上する物流を実現したい

関西物流センターの稼働により、西日本エリアへの商品の翌日配送を実現した。

関西物流センターの稼働による効果について教えてください。

自動化・省人化を追求した関西物流センターの稼働により、関東物流センターとの比較で、入荷や保管、補充に携わる作業人員を約65%、集品ラインの作業人員を約40%削減できました。また、出荷能力を増強でき、1日当たりの出荷量は従来の3.4万件から5万件と1.5倍に拡大。出荷リードタイムを最小限にしたことで、九州、中国、四国エリアへの翌日配送を実現し、同エリアへの配送距離を短縮できたことにより年間2億円の配送費削減も見込みます。

「マテハンシステムを大規模に導入したことで、迅速かつ安定的に商品をお届けする体制を強化できました。現在、さらなる売上拡大を見据えて、新関東物流センターの建設を計画しています。当社が経営理念に掲げている『もっと何かできるはず』という想いに沿って、お客様満足をより高められるよう、さらなる物流の高度化・効率化を目指していきます」(永坂様)

株式会社ファンケル
上席執行役員 管理本部長 健康支援室長
永坂 順二 様

2005年、株式会社ファンケル入社。2008年8月から稼働している関東物流センター設置のプロジェクトリーダーを務める。その後、人事部給与厚生グループマネージャー、人事部長などを経て、2015年7月に執行役員人事部長に就任。2020年6月より現職。

  • 所属、役職名は取材当時のものです。
  • 当記事は「DAIFUKU NEWS No.234」(2022年4月発行)掲載の「創流」をもとに再構成したものです。

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