労働者の安全衛生を最優先に。ダイフクの現場教育事例

安全体感道場で、回転速度の見かけによらず強い力でベルトが巻き込まれる感覚を体感

当社グループは、労働者の安全と健康を最優先する企業文化を各職場に定着させるため、安全衛生管理の推進体制を整え、従業員はもちろん、パートナー企業やサプライヤーとも連携して安全活動を行っています。安全に作業するためには技能や知識だけでなく、安全に対する高い意識を持ち、適切な行動を取れる人材育成の取り組みが重要です。その一環として、日常業務に潜む危険を疑似体験し安全の啓発・教育を行う安全体感道場の取り組みを交えて紹介します。

安全衛生活動はサプライチェーン全体で

当社グループでは、「安全は企業活動の基盤であり全てに優先する」というスローガンを掲げています。この企業文化を定着させるため、定期的に安全衛生に関する状況報告と共有を行う社長直轄の中央安全衛生委員会を設置し、国内外の拠点で働くすべての従業員および請負事業者、サプライヤーの安全衛生活動を推進し、労働災害の撲滅に取り組んでいます。

厚生労働省が公表している「令和5年労働災害発生状況の分析等」では、製造業の死傷災害について、「事故の型別」を「挟まれ・巻き込まれ」「転倒」「墜落・転落」「動作の反動・無理な動作」「切れ・こすれ」の5つに分類して労働災害の動向をまとめています。令和5年(2023年)に、製造業の現場で発生した被災人数の多い事故の型別は、「挟まれ・巻き込まれ」が最も多く、次いで「転倒」となっています。

当社グループの労働災害発生状況についても、こうした国内の動向に共通する部分があり、直近数カ年では「挟まれ・巻き込まれ」「転倒」「墜落・転落」といった類型の事故発生件数が多い状況です。これらの労働災害は繰り返し発生する傾向があるため、グループとして事故を未然に防ぐための安全教育に注力しています。

実際の危険を刷り込む安全体感道場、受講者数は9,500人に

株式会社ダイフク
安全衛生管理本部 安全統括部 安全教育センター
センター長
福田 幸司

当社グループでは国の法令に則った安全一般教育、現場責任者向けの現場力向上教育といった座学中心の教育に加え、安全体感道場でルールを知っているだけでなく、実際の危険を刷り込んでいく教育を行います。「学んだ内容をもとに受講者が行動を変え、安全を意識して動けるようになることを目指しています」と安全教育センター長の福田幸司は話します。

安全体感道場は2010年6月に大阪本社で開講し、現在はマザー工場の滋賀事業所内にある施設です。当社グループ内で発生した労働災害の再発防止をコンセプトとし、「労働災害展示」「電気関係体感」「挟まれ・巻き込まれ体感」「飛来/落下・墜落体感」「一般作業による体感(転倒・腰痛)」「危険作業発見」のコーナーを設けています。どのような危険が潜んでいるのか、どのような場合に危険に巻き込まれやすいのかなどを疑似体験できます。

安全体感道場で行われる研修の主な受講対象者は、国内グループ会社およびパートナー会社の従業員で、受講者数は2023年度末で累計約9,500人に達しました。研修は安全教育センターの担当者が講師となって年間60回ほど開講し、定期的な受講を推進しています。

日本で培った安全管理手法を海外へ展開

労働災害の発生状況を評価する場合、被災者の数以外に、度数率や強度率といった指標が用いられます。2022年度における日本の製造業の度数率は1.25、強度率は0.08となっているのに対し、当社の度数率は0.45、強度率は0.006で、平均より下回る水準となっています。

2014年に安全衛生管理本部を設立して以降、安全活動を強化してきたことがこうした成果に着実につながっています。「国内平均に比べて労働災害の発生を抑えられていると自負していますが、それでも類似の災害が繰り返し発生しています。さらに減らしていきたいという強い思いを持って取り組んでいます」と福田は話します。

安全意識徹底への思いを語る福田

また、海外グループ会社でも安全体感道場の設置を進めており、現在は中国、タイ、インドネシアに同様の施設を整備しました。「海外グループ会社では日本に比べて、労働災害の発生頻度が多く、程度も重い傾向にあるため、日本での安全管理手法を横展開していきたいと考えています」(福田)

  • 度数率:100万延べ実労働時間当たりの労働災害による死傷者数のことで、労働災害の発生頻度を表す
  • 強度率:1,000延べ実労働時間当たりの延べ労働損失日数のことで、労働災害の重さの程度を表す

疑似体感を通して作業に潜むあらゆる危険への意識を高める

安全体感道場では、ダイフク内で繰り返し発生している「挟まれ・巻き込まれ体感」「墜落・転落体感」「一般作業による転倒体感」について、事故を未然に防ぐための教育を強化しています。

木の棒で巻き込まれ事故を疑似体感する様子

「挟まれ・巻き込まれ体感」では、工場などの現場での作業時、作動する機械に手や腕が巻き込まれてしまう様子を複数のシチュエーションで体感します。疑似体感を通して、回転する機械がものを巻き込む力の強さや、手や指が機械に挟まれた人間がとるとっさの反応、作業への慣れが危険に対する意識を薄れさせることなどを学び、作動する機械への注意を改めて喚起し、作業ルールが制定されている理由を再確認します。

「墜落・転落体感」では、高所作業時に必ず安全帯を着用することの重要性を伝える内容として、重さ75kgの人形が3.5mの高所から落下する様子を間近で見て墜落時の衝撃を感じるとともに、VRゴーグルを用いて墜落・転落事故の起こる状況と感覚を疑似体験して、高所作業に潜む危険の再認識を促します。

  • 3.5mの高さから激しい衝突音とともに落下するマネキン人形

  • VR機器を活用して墜落・転落事故の起こる様子をシミュレーション

少しの間隔のずれが昇り降りの動作に作用する

「一般作業による転倒体感」では、一見すると感じにくい潜在的な危険のリスクを体感します。ステップの間隔や傾斜に加工を施した階段を、荷物を運搬したり、スマートフォンに見立てた手元のメモを見たりしながら昇り降りすることで、手すりをつかむ重要性を学び、また意識が散漫なときは何気ない動作にも注意が働きにくくなり、転倒につながりやすい状況を体感します。

安全体感道場では、今回紹介した体感プログラム以外にも、受講者が自分ごととして危険を捉え、日々の業務に生かせるような気付きを与えられるよう、さまざまな観点で設備を設け、継続的に体感内容の更新・充実を行っています。

労働災害防止の取り組みに終わりはない

労働災害は一時的に発生件数が低減したとしても、現場には災害のリスクが常に潜んでおり、継続的な安全衛生意識の啓発が不可欠です。当社グループでは、安全体感道場の取り組みをはじめ、事業を持続可能なものにするため、今後も「安全専一」を重視しサプライチェーン一体となって安全衛生の取り組みを徹底していきます。

  • 「安全専一」は、古河機械金属株式会社の登録商標です。

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