河川の環境保全に向けて、より効果的なプラスチックごみ回収を目指す

ダイフクは2024年8月、「北之庄沢を守る会」と連携し、河川に漂流するプラスチックごみの調査・回収を行うことを発表しました。北之庄沢は、ダイフクのマザー工場と同じ滋賀県にある地区の名称で、かつては泳げるほど水のきれいな水郷のある自然豊かな地帯でしたが、社会の変化に伴い、自然環境が損なわれつつあります。地域が抱える課題に対して、どのような取り組みを行っていくのか、「北之庄沢を守る会」の副会長を務める角田純一郎様、藤本英樹様と、ダイフク ビジネスイノベーション本部の松田靖、柴田良則に、環境保全にかける思いを伺いました。

かつては泳ぐこともできた水郷の原風景を未来に受け継ぐ

ダイフク滋賀事業所から車で40分ほど離れた場所にある近江八幡市は、滋賀県のほぼ中央に位置し、琵琶湖の東岸にあたります。戦国時代から安土桃山時代には城下町として発展し、楽市楽座や近江商人が生まれた地であり、このころに琵琶湖から八幡堀への水路が整備され、水郷の街と呼ばれるようになりました。

そうした水郷地帯の1つである北之庄沢地区で環境保全活動に取り組む「北之庄沢を守る会」の角田純一郎副会長は、「1905年に治水対策として、琵琶湖から宇治川へと流れ込む瀬田川に洗堰が造られました。洗堰とは川の流れや水量を調整するために設置する構造物のことで、これにより琵琶湖の水位が平均90cmほど下がり、水深の浅かった場所に陸地が生まれたことで、内湖と呼ばれる小さな湖がたくさんできました。第二次世界大戦のころに食糧不足解消の目的で干拓事業が行われ、8割以上の内湖の水が抜かれてしまいましたが、北之庄沢につながる西の湖は干拓されなかったため、水郷地帯としての北之庄沢が現在に残っています」と、この地域の歴史を語ります。

その後、日本が高度経済成長期に入ると地域の人々の生活様式も変わり、移動や物資運搬には船ではなく車が使われるようになり、かつては生活を支えた水路に生活用水やごみが流れ込みました。1970年代には水路が環境汚染の原因だとして近隣の八幡堀の埋め立て計画が動き出しましたが、貴重な景観を保護するための反対運動も起こり、結果として水郷は守られることとなりました。

「八幡堀に続いて北之庄沢でも保全活動が始まり、2000年に北之庄沢を守る会が設立されました。当会の一番の目的は水質を守ること。昔の北之庄沢は泳げるくらい水がきれいで、司馬遼太郎の本にもここの水郷の水を茶碗ですくって飲んだという記述もあったほどです。そうした歴史のある風景を取り戻していきたいと思っています」(角田副会長)

  • 豊臣政権時代に造られた八幡堀に残る水路

  • 北之庄沢の水郷をめぐる手こぎ舟

河川に溜まるごみの回収・分別は負担の大きな作業

北之庄沢を守る会は、発足当初から続けている水辺の清掃活動を中心に、会員同士が意見交換をする総会、ごみ問題に詳しい専門家らを招いて行う研修会などを実施しているほか、岸辺に芝桜を植える活動や、子ども向けの自然体験ワークショップなども開催しています。

「水辺の清掃活動は現在、毎週日曜日の午前中に10人ほどの会員が集まって行っています。北之庄沢に広がる水路には枯れ草や落ち葉などをはじめ、さまざまなごみが漂流しており、船の上からごみを引き上げて回収しています。汚泥をまとった草木は重く、回収には体力が必要ですが草木はいずれ自然にかえるものですし、水路に流れ込むのも仕方のないことだと考えています」(角田副会長)

それに対してやっかいなのは人為的な要因によるごみだと、北之庄沢を守る会の藤本英樹副会長は話します。

「人工ごみはペットボトルが一番多く、あとはカンやビン、ビニール袋、飲料パックなどが漂流しており、回収したごみからカンとビンを分別したのち、すべてのごみを指定の集積場に持ち込んでいます。過去にはソファや応接セット、バイクなどの大型ごみのほか、ペンキ缶の不法投棄もありました。大型ごみは人の手で持ち上げることができませんし、流れ出したペンキの回収には専門知識が必要ですから、こういった場合は行政に支援を要請して対処しています」

地域の環境を守るには、北之庄沢を守る会のようなボランティアによる草の根活動だけでなく、行政をはじめ、地域に携わるすべてのステークホルダーがそれぞれの役割を果たすことが大切です。

ダイフクでは、『未来を見据えた新たな発想での取り組みを強化し、ステークホルダーへ革新的な影響を生み出すことにより、目指すべき経済・社会価値を実現する』との強い想いを込めて、長期ビジョン「Driving Innovative Impact 2030」を設定し、環境を含む新たな領域における社会課題解決へ貢献するべく検討を重ねてきました。ビジネスイノベーション本部 担当部長の松田靖は、「環境に関わるテーマとして、ごみ問題について部署内で意見交換をした際に、社員から北之庄沢地区の話題が出たので、早速見学に行かせていただきました」と、当時を振り返ります。

「実際に北之庄沢地区に訪問してみたところ、水路のオイルフェンスにペットボトルなどのプラスチックごみが多く引っ掛かっているのを目にしました。普段からお世話になっている地域への貢献を考えたとき、この課題は避けて通れないと感じました」(松田)

北之庄沢を守る会との交流を重ねる中で、主幹技師の柴田良則はもう一つの課題として「人的負担の大きさ」を実感しました。会員の平均年齢は70歳を超えており、そのほとんどは兼業農家で、農業と直結するため環境活動の重要性は十分理解するものの、定期的にボランティア活動に参加するにはハードルがあるのが現状です。

「会員の高齢化は大きな課題だと伺っていましたし、我々も清掃活動に参加させていただいて本当に大変な仕事だと実感し、ごみ回収作業の負荷を低減させる手段が必要だと思いました」(柴田)

北之庄沢を守る会の清掃活動。河川に設置したオイルフェンスにさまざまなごみが漂着する

モノづくり企業として社会の根幹となる自然を守りたい

北之庄沢を守る会との出会いをきっかけに、ダイフクは河川に漂流するごみの中でも、プラスチックごみの課題解決に取り組むことを決めました。自然界に投棄されたプラスチックごみの問題は全国共通の課題であり、ウミガメなど海洋生物への影響がよく知られています。

「当初は、プラスチックごみは海の問題で、外国から漂流するごみも多いと思っていましたが、詳しく調べてみると、日常生活から出るごみは川から海に流れ出ているため、河川に漂流するごみの対策が重要だということが分かりました。当社グループではサステナビリティの観点からESG(環境・社会・ガバナンス)の取り組みに力を入れており、その一環としても意義があると考えています」(柴田)

プラスチックごみは、長い年月をかけて微細化したマイクロプラスチックと、その前段となるペットボトルやレジ袋のような製品に近い状態のマクロプラスチックに大別されます。今回、ダイフクは比較的回収がしやすいマクロプラスチックに着目。環境省発行の「河川ごみ調査参考資料集」に基づいて、陸域から海域へ流出する河川を浮遊する、原則で長径25mm以上のプラスチックごみを含むマクロ漂流ごみの調査・回収を実施します。こうした調査に一般事業者が主体的に取り組むのは国内初の試みで、マテリアルハンドリングの総合メーカーであるダイフクにとっては新たな一歩となります。

「北之庄沢を守る会の皆さんは当然のことながら、自分たちが生まれ育った地域の未来を守ろうと長期的な視点を持って取り組んでおられます。それに対して企業として長期的に活動を続けるためには何を目指すべきかと自問する中で、やはり大切なのは経済循環を生み出すことだと気づきました。これから河川に漂流するごみの回収作業の負荷低減と、有効な対策について検討を重ね、より持続可能な事業への転換を目指します」(松田)

ごみは回収してリサイクルすれば、資源となって再び活用することが可能になります。ありとあらゆるモノづくりには資源が欠かせず、その資源は元をたどればすべて自然から生み出されたもの。自然環境を守り、資源循環に貢献することは持続可能なモノづくりの根幹と言えるでしょう。

その第一歩として、ダイフクでは北之庄沢を守る会とともに、河川を漂流するプラスチックごみの課題解決に向けて取り組んでまいります。今後も随時、取り組みの進捗についてダイフクスクエアにてお知らせしていきます。

角田 純一郎 様

北之庄沢を守る会
副会長

藤本 英樹 様

北之庄沢を守る会
副会長

松田 靖

ダイフク ビジネスイノベーション本部
担当部長

柴田 良則

ダイフク ビジネスイノベーション本部
主幹技師

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