フレキシブルな自動車生産ラインの構築へ、けん引能力6.5トンのAGV「TRVS」

ダイフクは、持続可能なモビリティ社会の実現に向け、次世代の自動化システムの提供を目指しています。これまでにないフレキシブルな自動車生産ラインの構築を可能にするAGV「TRVS(トラヴィス)」は、全方位の走行ができることに加え、最大6.5tのけん引能力が特長です。システムの詳細や開発の狙いなどをオートモーティブ事業部 技術本部長の林信浩に聞きました。

TRVSについて教えてください。

従来の自動車の組立工程では大きな台車にボディを載せ、台車の上に組立作業者も一緒に乗った状態で低速で搬送します。この台車が最大20台ほど連なり一定間隔で動くのです。動力は台車の下のフロアコンベヤでしたが、TRVSがこれに代わります。今までラインを止めて長期連休での工事が必須だったルート変更がQRコードの張り替えなど数日でできるようになり、柔軟性が圧倒的に高まります。また走行は、前後進、横行、斜交、旋回、回転を含めて全方位にできます。

全方位に走行できる仕様にした狙いは何でしょうか。

従来システムでは、ラインがいわば「一筆書き」になり、現在はEVと内燃機関車(ICE)を同じラインで流し、バッテリーの取り付け工程をICEは素通りしてその先でエンジンを搭載するような混流生産が主流です。ただEVやICE、FCV(燃料電池自動車)など多様な自動車を1つのラインに混流すると、非共通な工程のエリアにも搬送する必要があり、ラインの長さが間延びします。全方向に動くTRVSなら特殊な工程のみ分岐させ再び合流させるなど、合理的なライン構築が容易に実現可能になるほか、従来のコンベヤと組み合わせたライン構築もできます。この自由度が最大の利点です。

  • 従来は台車上の車体をコンベヤで搬送する

  • AGVが車体を載せた台車をけん引する方式を新たに提案

EV化を含めたあらゆる可能性に対応

導入が期待できるのはEV化が先行している海外市場ですか。

海外ももちろん期待できます。ただ付け加えておきたいのは、TRVSはEVに限った設備ではないということです。EVはあくまで自動車の選択肢のひとつに過ぎず、モデルやオプションが異なる車を混流生産する場合も分岐・合流は有効です。要するにEV化を含めたあらゆる可能性に対応できるようになります。

柔軟なラインを作りたいという要望が寄せられていたのですか。

要望というより、今後の自動車産業を見据えた時にダイフクとして『必要になるはずだ』という視点で開発しました。生産方式を大きく変える製品なので、すべてのラインが今すぐ置き換わるとは思っていません。とはいえ自動車メーカーさまも変革期の車づくりは大変、悩まれているはずなので、どこかのタイミングでこの設備が必要になると考えています。EVやFCVの台数が少ない現状においては、既存ラインの改造による混流生産が合理的です。しかし今後、対応が難しくなり、生産方式自体を変えなければ効率化できないフェイズが来るのではとみています。

ダイフクが目指す自動車生産ラインのイメージ

長さ3m×幅44cm×高さ27.5cmの薄く細長い構造を採用

TRVSはスキー板のような薄く細長い構造です。どのようにして最大6.5tもの台車とその上のボディを搬送するのでしょうか。

台車中央に車輪があり、TRVSは片側に潜り込み台車全体をけん引します。単にけん引するのでは車輪がスリップしてしまうので、内蔵のバネで接地点の摩擦力を向上させました。6.5tのけん引能力は車体の重いEVを視野に入れており、一般的な乗用車ならすべてのボディサイズをファイナルライン(ほぼ完成車状態になる工程)まで搬送できます。

車体搬送以外への活用も考えていますか。

まずは自動車です。一方、2台のTRVSを連携させることで10t以上のけん引が可能になり、将来的には鋼材などの様々な重量物搬送の提案も視野に入れています。例えば自動車生産工程以外で巨大で重い搬送物は、車体に限らずニーズはあると考えています。また理論上は1つのシステムで100台程度まで制御可能です。

最後に、変容が著しい自動車業界において、どのような方針で技術開発に取り組みますか。

オートモーティブ事業では、2030年を見据えたダイフクグループの長期ビジョン「Driving Innovative Impact 2030」で掲げたありたい姿の実現に向けて、次世代の車づくりに合わせた搬送設備や自動化設備の構築に注力しており、TRVSはその中で核となるシステムです。

われわれはこれまで長年にわたり、システムの納入後も定期点検や改造工事などを通じて自動車メーカーさまのニーズを分析し、そのデータをもとに付加価値の高いサービスを提供してきたと自負しています。お客さま満足度の向上を図り、良い関係を構築してきたからこそ、潜在するニーズや課題まで気づくことができます。グローバルで変容が著しいモビリティ市場において、今後もさまざまなニーズに適応する自動化システムを提供することで、新たな価値を生み出していきます。

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