Online Daifuku Report 2018

対談:トップ選任に見るダイフクのガバナンス

社外取締役/独立役員 柏木 昇 × 社外取締役/独立役員 小澤 義昭
諮問委員会
代表取締役、社外取締役で構成される任意の機関。経営陣の指名、報酬などを議論し、議長は社外取締役が務める。

ダイフクが価値を創出し続けるための道筋や、リーダーにどのような資質が必要か、また、諮問委員会でのトップ選任時の議論などについてお聞かせください。

2018年4月から、下代新社長のもと、新たな経営体制がスタートしました。

― 取締役会において、戦略の妥当性や経営トップの選任を正しく判断するために、社外取締役が知っておくべきことはどのようなことでしょうか。

柏木:戦略の妥当性を正しく判断するためには、戦略立案の段階からなるべく参画させていただくことです。中期経営計画についても、その策定の段階から参加させていただくことが重要だと考えます。また、経営トップの選任については、やはりその人物を知ることが一番大切です。人物を知らないと的確な判断ができません。

小澤:経営トップの選任においては、会社が原案を作成した後に社外取締役の業務がスタートすると考えています。私たちに求められているのは経営をモニタリングする機能です。その候補者の普段の行動を見て、リーダーとしてふさわしい人物であるか、本当に会社の将来を決定付ける判断として最適かどうかを見極めることが肝要だと思います。

戦略についても、私どもが立案するわけではありません。中長期的な企業価値向上が今回のテーマですが、サステナブルな戦略として妥当かどうかという意識に基づいてデータを見せていただきます。また、過度にリスク回避的になっていないかどうかも、もう一つの重要な観点です。

― トップマネジメントに必要な資質について、どのようにお考えでしょうか。

柏木:倫理観ですね。例えば他社において、トップが法に違反することを部下に押し付けるというような倫理観が欠如しているケースが時々見受けられます。

小澤:ピーター・ドラッカーは、トップマネジメントの資質に関して、「愛想良くすること、人付き合い良くすることではない。真摯さ、真面目さ、ひたむきさ、いわゆる、インテグリティである」と語っています。「うまくいっている組織には、好かれているというよりも尊敬を集めるボスが必ずいる。そのボスは部下に一流の仕事を要求し、自らにも要求する」という言葉もあります。私は、真摯さ(インテグリティ)がマネジメントの資質としては一番大切であると考えます。そして、ダイフクはそうした資質を持ったトップを有していると思います。

― 経営トップ選定時に諮問委員会で行われるべき議論とは、どのようなものでしょうか。

柏木:例えば、適切な人選ではないと判断した場合は、きちんと反対を表明するといったことです。根拠なしにCEOや会社が推薦した人をひっくり返す、というようなことはやり過ぎですが、明らかに倫理観が欠如していたり、明らかに不公正に選抜された候補者に対しては、社外取締役の進退をかけて反対する、ということなのだろうと思います。ただ、伝家の宝刀はめったに抜くものではありません。

小澤:その通りだと思います。社内の取締役や経営者が、候補者の選任の原案を作成し、私たちはそれが妥当かどうかを判断しているわけです。そのために、候補者の方々との面談等における質問を通じて、比較検証しています。

― ダイフクのガバナンス強化に対する取り組みの評価をお聞かせください。

柏木:とても感心したのは、役員の倫理観が非常に高いことですね。私がダイフクの社外取締役に初めて就任した当時の竹内会長が「清く、正しく、透明性ある企業体質が大切である」とおっしゃっていました。その考えは現在も脈々と続いていると感じています。そして役員が自らの地位や権力にしがみついていないことも大変良い特徴かと思います。

小澤:本当に真摯な方が多く、皆さん生真面目、そしてひたむきです。私どもがこうした点を改善してほしい、と意見を言うと、速やかに対応してくださいます。例えば、取締役会の資料を従来よりも早いタイミングで見せてほしいと望めば、手配してもらえます。ガバナンスの強化に関しても、ひたむきに推進されていると感じています。

― 業績が順調に推移する今こそ、ダイフクが取り組むべき優先課題とは、どのようなものでしょうか。

柏木:世界的に広がった事業のシナジーをどのように創出していくかが、一つの課題です。また、不祥事を起こしている会社に共通しているのは、独立した事業部門で人事が停滞していることです。そうならないように、オープンな組織を維持していく努力が必要であると考えます。

小澤:「良いことは長くは続かない、必ず業績が落ち込む時がある」というのが私の持論です。その時のために、原価をきっちりと管理し、固定費の肥大を防ぐことが大切です。そして企業は時代によって変化しなければ生き残れないので、事業の先行投資も重要です。ある程度のリスクがあっても、新しい事業に投資する必要性は常にあります。

― 最後にステークホルダーに向けたメッセージをお願いします。

柏木:ステークホルダーの立場に立ったモニタリングとは、内部の論理に取り込まれることなく、外部の株主からの目として客観的なモニタリングを心掛けることだと思っています。

小澤:まさに私も同じような考え方です。会社は透明性を高めるために努力しています。株主・投資家の皆さまには、長期的な観点で会社を見て、投資していただきたいと願っています。

対談:トップ選任に見るダイフクのガバナンス
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