PROJECT
プロジェクトから知る職種間連携
イントラロジスティクス

エンジニアリングを核に ソフトウェア・機械の知恵を結集し、 流通業の新ビジネスを加速させる エンジニアリングを核にソフトウェア・機械の知恵を結集し、流通業の新ビジネスを加速させる

日本経済を支える製造業や流通業の倉庫内物流のマテハンシステム構築で、豊富な実績を誇るダイフクのイントラロジスティクス事業部。プロジェクトの現場では、さまざまな専門性を持つメンバーが集結し、若手社員も裁量をもってお客さまの要望に応えるシステムの実現に奮闘している。その最前線を追った。

イントラロジスティクス事業部
設計(機械)

Y.M 2020年入社

大学時代は機械工学を専攻。社会課題の解決に貢献できる機械設計がしたいとダイフクを志望し、入社後は、標準品では対応できない特殊仕様のコンベヤシステムなどの設計開発を担当している。

イントラロジスティクス事業部
エンジニアリング

H.H 2015年入社

入社後、エンジニアリング本部に配属となり、最初の3年間はシステム計画部で受注獲得ための技術提案活動に従事。4年目からシステム設計部に異動し、受注した案件の詳細設計を担当している。

イントラロジスティクス事業部
設計(ソフト)

E.O 2020年入社(キャリア入社)

前職は家電メーカーでソフトウェア開発を担当。今後成長が期待されるグローバルな企業でキャリアを高めたいとダイフクに転職し、以来、マテハン管理システムのエンジニアを務めている。

エンジニアリングの主導のもと、
ネットスーパーのマテハン構築に挑む

昨今、食品や日用品などを実店舗で販売する小売業もECに進出し、インターネットで注文を受けて商品を配送する“ネットスーパー”の市場が拡大している。国内有数のある大手流通業も2010年代後半からネットスーパーを展開し、事業の体制をいっそう強化しようと新たな物流センターの建設に着手。そのセンター内のマテハンシステム構築の依頼がダイフクに寄せられ、2019年にプロジェクトはスタートした。

営業担当がお客さまとの窓口となって折衝し、そこから得られた情報をもとに、エンジニアリング部門のシステム計画担当がどのようなマテハンシステムを導入すべきかを技術的に考案。そして提案・受注後、決定されたプランをもとに、エンジニアリング部門のシステム設計担当が、お客さまと打ち合わせを重ねてそれを現場で具体化していく。今回のプロジェクトで、そのシステム設計担当を託されたのは、当時入社5年目のH.Hだった。

「それまで、その大手流通業のお客さまはネットスーパーを運営するにあたって、物流倉庫内に店舗を再現し、陳列された商品を人手でピックアップしてエンドユーザーからの注文に応えていました。しかし、事業が拡大するにつれて、すべて人手では対応しきれなくなってきた。そこで、4温度帯(常温、冷凍、冷蔵、青果)の商品を別々に自動倉庫で集品・仕分けし、注文に応じて荷揃えして出庫できるマテハンシステムの導入を決断されたのです。まったくのゼロからのシステム構築で、しかもスケールの大きな案件でしたので、設計担当をメインで任された時は『大変なプロジェクトになりそうだ』と武者震いしましたね」。

若いうちから責任ある仕事を委ね、成長を促していくのがダイフクの企業文化だ。彼もその期待に応えるべく、お客さまとの打ち合わせに臨んだ。

「客先の担当者の方々と毎日のようにコミュニケーションをとり、システムの詳細な仕様を詰めていきました。建設中の物流センターの図面から、自動倉庫をどこに配置して、そこから出庫された商品を運ぶコンベヤをどのようにレイアウトすれば効率的に運用できるかを考えて検証。センター内には冷蔵品や冷凍品の保冷設備なども設置されるため、マテハンシステムがそうした設備と干渉しないよう、注意深く設計していきました。一筋縄ではいかず、仕様が決定するまでの数ヵ月間は絶えず頭を悩ませていましたね」。

ソフトウェア開発、機械設計が加わり
プロジェクトは大きく加速

H.Hがマテハンシステム全体の仕様を固めていく一方、そのシステムを動かすソフトウェアの開発は、社内の専門部隊が対応していく。そこで中心的な役割を果たしたのがE.Oだ。彼女は当時、家電メーカーからダイフクに転職してきたばかりであったが、実力を買われてこのプロジェクトにアサインされた。

「入社後いきなり大きな案件を先輩と二人で担当することになりました。私の役割は、H.Hさんが定めた仕様に沿って、どんな情報をどのように処理すれば、マテハンシステム上でお客さまの希望通りにモノが流れていくかを考え、それを実現するソフトウェアを企画設計していくこと。お客さまと打ち合わせを重ねて、実現したいことが現状のレイアウトでは難しいと判断すれば、H.Hさんに仕様の変更を相談して協議。こうしてお互いにお客さまと向き合い、常に連携しながら開発を進めていきました」。

そこで彼女がいつも意識していたのが、お客さまにわかりやすく説明することだ。
「これまでマテハンシステムを使ったことのないお客さまでしたので、私たちが当たり前だと思っていることも、根本から丁寧に説明しなければ理解いただけません。その点、私は異業種からのキャリア入社なので、お客さまとほぼ同じ境遇だった。ですから、未経験の自分がわかるように説明できればお客さまにも伝わると思い、そうしたコミュニケーションを心がけました」。

こうした彼女の努力もお客さまからの信頼につながり、プロジェクトはスムーズに運んでいった。そして、システムの仕様がほぼ固まると、次は工場サイドで製作工程に入る。H.Hから仕様を渡され、実際にコンベヤなどの機械設計を担ったのは、当時まだ入社2年目のY.Mだった。彼はこう振り返る。

「大きなプロジェクトに参加するチャンスを与えていただき、重要な設計を任せてもらえたのはうれしかったのですが、反面、プレッシャーもありました。というのも、そのお客さまが倉庫内で使われている集品コンテナはサイズが特殊であり、それを扱うコンベヤシステムを製作した実績がなく、一からカスタマイズして設計しなければなりませんでした。どうすれば現場の作業員の方々にとって負荷の少ないコンベヤを実現できるのか、自分なりにいろいろと構想。H.Hさんとはオンラインで絶えずミーティングを行い、自分のアイデアを図案化したものをお見せして、お客さまに了承をとっていただきました。そして、設計・試作したコンベヤは生産本部のいろんな部署から意見を伺い、仕様を本当に満たしているか評価していきました」。

総力を挙げてつくり上げたシステムが
目の前に現れる興奮と感動

まだ機械設計技術者としてキャリアの浅いY.Mにとって、今回のプロジェクトは非常にチャレンジングだったものの、先輩のH.Hのおかげで存分に力を出せたと語る。

「H.Hさんは、わからないことを質問するとすぐに対応してくださいましたし、お客さまにもこちらの考えをしっかりと伝えていただいて、イメージ通りのシステムを実現することができました」。

H.Hも、今回のプロジェクトは関わったメンバー全員が、高いパフォーマンスを発揮してくれたからこそ成功したと話す。

「Y.Mさんは、お客さまと詰めた仕様を形にするために一生懸命に知恵を絞ってくれた。彼の頑張りにこちらも応えなければという気持ちでした。そして、E.Oさんも、まだダイフクに入社したばかりなのに、マテハンシステムの細かい部分まできちんと理解されて、お客さまのご要望に的確に対応するソフトウェアをデザインしてくれました。まさにチームの力を結集して成し遂げたプロジェクトでしたね」。

現在、お客さまの新物流センターへのマテハンシステムの導入はほぼ完了し、半年後の本格稼働に向けて、お客さま社内で準備が進められている段階だ。E.Oは、このプロジェクトを経験して、ダイフクならではのSEのやりがいを味わったという。

「私は以前、家電のソフトウェア開発を手がけていましたが、不特定多数に向けた製品だったので、自分の仕事がユーザーにどう役に立っているのか、あまりリアルに感じることはありませんでした。しかし、ダイフクは目の前にお客さまがいらっしゃって、お客さまがやりたいことを自分が叶えているのだと実感できる。もともと私は課題を解決することが好きなので、その面白さを直に堪能できるいまのポジションをとても気に入っています」。

若手のY.Mも、工場で製作したコンベヤシステムがお客さま先に納入され、設置工事に立ち会った時、自分が苦労して設計した機器が目の前に広がっているのを見て思わず感動したという。全体のシステム設計をリードしたH.Hも同じ思いだ。

「この仕事の醍醐味は、やはりプロジェクトが完了した瞬間。チームの意見をまとめながら仕様を決めた巨大なマテハンシステムが、お客さまの物流センター内でとてつもない存在感を放っている。それを目の当たりにした時は本当に興奮します。特に今回はお客さまが国内でも屈指の小売業だったこともあり、多数の関係者と折衝しながらシステムを形にしていきました。私はもちろん、E.OさんもY.Mさんもこのプロジェクトを経験して大きく成長できたと思いますし、さらに高いレベルの案件に挑戦していきたいですね」。

日本の小売業の物流現場には、改善の余地がまだまだ残されており、高度なマテハンシステムへのニーズもますます高まっている。どんな難題であろうと、意欲あるメンバーが集うチームの力で、ダイフクはそれに応えていく。