特別企画03

自動車業界のあり方が変わるなかで

カーボンニュートラル、CASE(Connected:コネクティッド、Autonomous:自動運転、Shared & Service:所有から共有へ、Electric:電気自動車)など、自動車業界は、100年に一度という大変革期を迎えている。そんななか、自動車の生産ライン向けシステムもドラスティックな変化を求められている。その最前線で営業活動を担う社員を通して、自動車業界のいまをレポートする。

オートモーティブ事業部 国内営業

M.N

2007年新卒入社。経済学部卒。入社後、オートモーティブ事業部に配属され、以来、国内の複数の大手自動車メーカーへの営業を担当している。「当社は国内の自動車メーカーすべてと長年にわたるお取引があり、その信頼関係やネットワークを活用して営業できることに強みがある」と語る。

100年に一度の大変革期を睨みつつ、
いかにガソリン車からEVへ
シフトしていくか

自動車メーカー各社は、CASEへの対応を、既存事業の延長ではなく、業態の変革という観点でとらえている。とりわけカーボンニュートラルの観点から、EV(電気自動車)へ移行するための取り組みは待ったなしの課題だ。それに伴い必要となるのが、EVの生産ライン向けシステムだとM.Nは語る。「エンジンとガソリンの代わりとなるモーターとバッテリーは、自動車の床下面積をほぼ占有し、重量もエンジン以上に重くなります。そのため当社では設備の重量対策や、大きな負荷がかかる作業の自動化・アシスト装置の開発を行うことで、お客さまに貢献しています」。

そんななか自動車メーカー各社が頭を悩ませているのは、ガソリン車とEVの両方の生産を継続するなかで、いかに投資を抑えながらEVへの変革期を迎えるかだという。「現時点ではいつまでにどれくらいEV車の需要が増えるかは非常に流動的です。そこでお客さまから求められているのが、生産変動を吸収できるラインの実現です。例えば、生産量の増減に応じて、AGV(無人搬送車)の台数や能力を調整するなど、生産ライン全体として変化に追従できるようシステムを構築すること。それは、長年にわたって自動車の生産ライン構築に携わってきた私たちだからこそできることだと思っています」。

ガソリン車とEVの混流生産を行うなか、
効率的な生産を実現できる
システムを構築

自動車メーカー各社がEV製造を加速させるなか、M.Nが担当したのが、ある大手自動車メーカーのEV生産設備の開発だ。それは同社にとって、ガソリン車を生産する工場をEV仕様に切り替えていく足掛かりとなる取り組みでもあった。「自動車の床下フロア全体にバッテリーを搭載するマウント装置はEV製造の要です。従来のマウント装置は、車体の搬送をある停止位置で止めて、その間にバッテリーを搭載するのが一般的。しかし、今回は上空搬送する車体に同期追従して搭載できるようにすることで、流れ作業のように構築したいというのがお客さまの要望でした。その目的は、同期作業により、作業者の待ち時間ロスやラインサイドの占有面積をなくすことです」。

さらに重要だったのは、現在はまだガソリン車とEVの混流生産であるため、ガソリン車の製造を行う時は、EVの生産設備を退避できるようレイアウトする必要があるということ。そこでM.Nは、大きなマウント装置が作業者の間を縫って退避する際、事故が起きないよう、レーザースキャンを活用して作業者の侵入を感知し止まるシステムを提案した。「最終的に1年半という短期間でマウント装置を導入することができ、お客さまからガソリン車、EVともに生産効率が向上しているという声をいただいています」。

新たな発想が求められる
自動車生産ライン向けシステム。
そんな現実の先で、
ダイフクの視線は何を捉えるのか。

自動車業界の枠を超えて
広がるニーズを顧客の間近でつかみ、
新しい答えを提示していく

これまで自動車メーカー各社の多種多様なニーズに応え、それぞれに適したマテハン設備を提供してきたダイフク。そんなダイフクに今後求められるのは、CASE加速による自動車業界の変化に柔軟に対応できるシステム開発だ。「前述した導入事例のマウント設備も、実は今後の変化を織り込み済み。現在は小さなバッテリーを搭載する車種の製造を行っていますが、大型のEV車種にも対応できる発展性のあるマウント設備となっています」。

また一方、既存のメーカー以外にも自動車を生産するメーカーが台頭し、自動車に求められる性能もより複雑化・多角化していくなど、まさに業態の変化が起こっていくことが想定されるとM.Nは見ている。「将来的には自動車の売り方が、バッテリー容量で値段が変わるスマホのようになるかもしれません。そうならないとしても、自動車業界にどんな未来が待ち受けているのか、誰にも予測困難であるからこそ、ダイフクの存在価値は大きくなると思っています。ダイフクの強みはお客さまに寄り添い、お客さまが実現したい今後の自動車生産のあり方を十分に把握できること。そのなかで変化に柔軟に対応し、革新的なソリューションを提供できるよう私たち自身も進化していくことで、既存の自動車業界の枠を超えて広がるニーズに応えていくことができると思います」。ダイフクはいま、自動車業界の未来に向けて新しい答えを模索し、提示していこうとしている。