特別企画02

半導体プロセスの次の形とは

情報通信技術の発展に伴い、急成長を続ける半導体業界。そこでは世界規模で半導体メーカー各社間の競争が激化している。そんななか、半導体生産ライン向けシステムもさらなる技術革新が求められている。エンジニアリングの一員として日々半導体メーカーと向き合う社員を通して、半導体業界の次代への挑戦を追う。

クリーンルーム事業部 エンジニアリング

T.S

2013年新卒入社。理工学研究科 機械システム工学専攻修了。入社後、クリーンルーム事業部に配属され、製造部にて組み立て、試運転に従事した後、設計部に異動し、設計業務を担当。2016年よりエンジニアリング部に異動し、現在、韓国担当としてエンジニアリング業務を担っている。

さらなる性能向上に向けて、
積層化が進む半導体を
いかに確実に運ぶか

半導体メーカー各社はこれまで、性能向上に向けて「微細化」を競ってきた。しかし近年、その微細化も限界を迎えるとささやかれている。そこでいま注目されているのは、「積層化」だ。半導体生産のシリコン工程、前工程、後工程のうち、後工程を担当しているT.Sは語る。「微細化によってつくられた回路を、積層化する動きが加速しています。それに伴い、製造工程の装置間で搬送物のウエハを運ぶための自動搬送システム(ビークル)も、より多様化する搬送物を運ぶ必要が出てきます」。

そのなかでの課題は、後工程ではメーカーによって異なる規格の物を搬送する必要があること。前工程ではほとんど自動化が実現しており物も共通の規格がある一方、後工程では物の規格が決まっていないため自動化は難易度が高く、非常に高い技術力が必要とされるからだ。「規格がないため、装置メーカーは任意で装置を開発します。さまざまなメーカーの装置間を動く自動搬送システムは、それらに合わせることが求められるのです。そのような厳しい条件のなかで、客先が要望する搬送物を確実に搬送するのは至難の業。そこにマテハンのトップメーカーとしてのダイフクの力が問われます」。

多種多様かつ新しい搬送物に合った、
最善の自動搬送システムを提供

半導体メーカー各社の競争が熾烈を極めるなか、T.Sが担当したのが韓国の半導体メーカーの後工程での搬送機器開発だ。「やはり大きな課題となったのは、前工程のように規格で搬送物が決まっていないことです。これまで当社でも扱ったことのない、サイズも形も異なる多種多様な搬送物に対して、自動かつ高精度で搬送・保管ができる装置をつくっていくには、新たな考え方が必要です。そこで既存の技術をできるだけ生かしながらも、新技術を取り入れる努力を重ねました」。

顧客の要望はあくまで、後工程であっても、前工程と同じように自動で搬送・保管・判別できること。その実現のために重要になるのは、搬送物情報の把握だ。「新しい搬送物を搬送した場合の問題点の抽出、どこに開発の必要性があるかの確認を、営業や工場と連携して検討、さらには搬送ルート上にあるさまざまなメーカーの装置とのスムーズな連携の構築など……やるべきことは数多くあります。それらすべてについて、確認漏れや伝達漏れがないよう、エンジニアリング内で何度も確認したうえで、仕様を決める段階からお客さまの工場側と相談を繰り返し行うことに注力。その努力が実を結び、それぞれの搬送物に合った最善の自動搬送システムを提供することができました」。

性能向上、生産拡張が求められる
半導体生産ライン向けシステム。
そんな現実の先で、ダイフクの
視線は何を捉えるのか。

半導体プロセスの革新に向け、
より信頼性、拡張性、
効率性に優れたシステムを

半導体の性能向上に向けて、どんなに搬送物の内容が変化しても、それらに合った最善の自動搬送システムを提供する。それが実現できるダイフクの強みは、営業からエンジニアリング、設計、工事、サービスまでを一貫して行うトータルソリューションにある。「機器・設備を納入後も問題なく稼働し続けられるよう、お客さまの要望を伺った時点から、サービス体制づくりまで見据えて計画しています。この連携により新しい搬送システムを実現し、お客さまの要望を満たしています。前述の韓国の半導体メーカーさまから、納入後すぐに他の搬送物に関する引き合いをいただいたのはその証左だと思います」。

その一方、生産拡張に向けて、「ギガファブ」と呼ばれる巨大な半導体製造工場が増えてきており、それに追随した自動搬送システムの開発も喫緊の課題だとT.Sは考えている。「どんどん工場の建屋面積が広くなり、複数の工場をまたがった搬送もいま以上に増えてきます。そうなった時に想定される新たな課題はいくつもあります。その一つは、自動搬送システムの渋滞発生率の上昇。そこでダイフクでは、AIを活用し渋滞の事前予測を行うことで、自動搬送システムの加減速や最適なルート検索を実現し、渋滞を回避するシステムの開発を進めています」。世界的に半導体不足が叫ばれるなか、搬送システムがなければ大量の半導体生産は遂行できない。その重要性を強く意識し、たゆまぬ技術革新で半導体業界の成長を支える。それがダイフクの使命だ。