特別企画01

物流の新潮流がもたらすもの

経済活動を営むうえで「物流」は絶対不可欠な機能であり、ECが普及する現代社会ではその重要性がますます高まっている。なかでも倉庫内物流(物流センター内における保管・ピッキング・仕分け・出荷などのシステム)はいま、大きな変革が求められており、その最前線で奮闘する社員を通して物流の新潮流を追う。

イントラロジスティクス事業部 国内営業

Y.K

2010年新卒入社。経済学部卒。入社以来、一般製造業・流通業向け物流システムの企画提案営業に携わり、主に流通業を担当。大手の家電量販店やホームセンター、出版社などを顧客としている。「自分が企画提案した物流システムが、社内の専門チームの力によって具現化され、お客さまの物流センター内に出現する。それは本当に壮観であり、まさにこの営業の醍醐味」と語る。

労働人口減少という社会課題に、
物流センターはどう応えていくべきか

いまや生活に必要な商品は、なんでもネットで購入できる時代。コロナ禍の影響もあって、ECはすでに社会になくてはならない仕組みになっている。しかし、この仕組みを支える物流の現場は、深刻な問題を抱えているとY.Kは語る。「大手の流通業が自社でECを展開するようになり、物流センターが各地で続々と建設されています。そこでは大量の商品が倉庫内に保管され、注文に応じて必要な商品をそろえて出荷しているのですが、その作業を担う人手が圧倒的に足りないのが実情です。多くのEC事業者が危機感を抱いています」。

今後、日本では少子高齢化によって労働人口が減少し、人手不足にいっそう拍車がかかっていく。そうした社会課題に対応しつつ、ECを効率的に運営するための変革が物流センターに求められているのだ。その物流システムを最前線で提案するY.Kのもとにも、EC事業者から切実な要望が寄せられているという。「キーワードは“省人化”“自動化”です。ECを手掛ける企業のお客さまは、『できるだけ人手をかけずに物流センターを運営したい』と。それに応えていくことが、いまの私たちの最大のミッションなのです」。

急拡大するEC事業に対応しつつ、
省人化を実現する物流システムの
構築に挑む

EC物流に革新が求められるなか、Y.Kが先日手掛けたのが、ある大手家電量販店の物流センターのシステム構築だ。同社のEC事業は、家電から日用品まで数万点のアイテムを取り扱って急成長中であり、物流センターでは日々膨大な受注に対応している。しかし、年末の繁忙期には作業がオーバーフローして現場がパンクする事態に陥っていた。「その物流センターでは、受注が入るたびに、作業員が倉庫内を巡って商品をピッキングして出荷する方式でした。そのため、受注が急増すると短時間で何度も倉庫内を行き来せねばならず、一人が担える業務の限界を超えてしまい、抜本的に現場を改革したいと私のもとに相談が寄せられたのです」。
そこでY.Kは、社内のエンジニアリング部隊と連携し、受注一件ごとに商品をピッキングするのではなく、百件単位でまとめてピッキングする方式を検討。そして、一気に集めた商品を高性能なシャトルラック(※)を使って個別の受注ごとに仕分けるシステムを企画提案した。「これによって作業員の倉庫内での移動回数が減り、さらにシャトルラックで容易に商品を仕分けられる設備を構築することで、少人数でも多くの物量をさばける物流センターを実現しました」。

(※)シャトルラック:レールつきラックのなかを台車が走行し、パレットの入出庫を行う保管システム。

さらなる革新が求められている
ECの物流システム。
そんな現実の先で、
ダイフクの視線は何を捉えるのか。

完全自動化が絶対解ではない、
顧客の経営視点から
最適な物流をデザインしていく

物流における省人化・自動化へのニーズがますます高まるなか、ダイフクの優れたマテハン設備は各地の物流センターから引き合いがあり、大きな成果を上げている。前述した大手家電量販店の物流センターも現在、受注のピーク時でも円滑に出荷が行われているという。そして、ダイフクはEC物流をさらに進化させるべく、先進のテクノロジーを駆使したマテハン設備の開発や、止まらない物流センターを実現する柔軟性の高いシステム構成、さらにはAIやIoTを活用した予防予知保全にも注力している。

その一方、物流の現場が抱える問題は、マテハン設備の進化だけで単純に解決できるものではないとY.Kは言う。「物流センターをすべて自動化するには莫大な投資が必要であり、経営にも負担となります。特にロボットは万能なイメージがありますが、実は人手のほうが作業効率がいいケースもあり、需要の変化に柔軟に対応できるよう、拡張性のあるシステムを望むお客さまも多い。なんでも自動化すればいいというわけではなく、現場での作業を分析し、ふさわしいシステムを組み合わせて物流をデザインしていくことが重要なのです」。

物流の進化がそのまま社会の発展につながるいま、高度なマテハン設備で最適なシステムを実現する「知恵」がいっそう求められていく。その「知恵」を発揮する余地は、未来に向けてまだまだ大いに残されている。