当社では、お客さまへマテハンシステムを提案する際、専門のエンジニアがさまざまな角度から計画案を検討し、より最適なシステムを提供できるようにしています。その手法の1つがシステム・シミュレーション。マテハン専用のシミュレーションソフトを使用し、計画中のシステムや実存するシステムをコンピュータ上にモデルとして作成。設備の数量や仕様など各種の条件を設定し実験を行います。これにより、システムの動きを把握するとともに、作成したモデルに対しての評価や問題点を抽出することによって、システムの最適化が考察できます。導入設備の妥当性や投資対効果などを計る判断材料にあてることが可能でお客さまにとっても有効なツールとなっています。本稿では、システム構築における当社の強みの1つでもあるシミュレーションについて概観するとともに、その特長および事例を紹介します。

シミュレーションとは

システムの挙動を理解したり、運用についての種々の方策を評価する目的で、現実のシステムに関するモデルを設計し、そのモデルについて実験を行うもの。複雑なプロセスあるいはシステムの設計や運用の検討に用いられる最も強力な解析ツールの1つであり、さまざまな分野で計画、設計、管理の各段階における極めて有益なツールとして広く認知されてきました。

当社マテハンシステムにおいては、信頼されるシステムをより多くのお客さまに提供できるようにするため、早くからシミュレーションをエンジニアリングやシステム設計に利用。特に近年では、1つの軌道上を2台の高速搬送台車「STV」や、スタッカークレーン「ラックマスター(RM)」が走行する“デュアルタイプ”(写真1)が採用されるなど、システムは複雑化の傾向にあります。その能力・性能評価はさらに難しくなり、事前の検証が必要となる場合が多くなってきました。また、お客さまから、設備導入前の段階でシステムの問題点を把握し、対応策を用意しておきたいという、リスク管理上のニーズも出てきています。

写真1: デュアルタイプの STV。

写真1: デュアルタイプの STV。

1.システムの効率化を見極める

当社のシミュレーションでは、導入前の設備がお客さまの要求する搬送能力を満足しているかどうかを評価しています。各設備が効率的に機能するように検討するとともに、搬送量やリードタイムなどを評価指標として、システム能力の検証を行っています。

例えば、図1 のようなシステムを想定します。このシステムは、パレット用自動倉庫、STV、ピッキングステーション、入出庫ステーションで構成される、ピッキング~再入庫のシステムです。基本的な物の流れは、

  • 1)入庫サイクル
    入庫ステーション→STV→自動倉庫
  • 2)ピッキングサイクル
    自動倉庫→STV→ピッキングステーション→ピッキング→STV→自動倉庫
  • 3)出庫サイクル
    自動倉庫→STV→出庫ステーション

という3つのフローです。

このモデルにおけるシミュレーションの目的は、各設備が効率的に機能するよう、設備仕様や制御、運用などを検討し、要求処理量を満足できるかどうかの検証を行うことにあります。主な出力項目として、自動倉庫の稼働率、ピッキング作業者の負荷率、ピッキング処理パレット数などがあります。ここではSTVの搬送量(図2)を例に挙げ、 要求処理量に達しない場合の結果と評価内容、その対策を例示します。

〔評価〕

自動倉庫の稼働率が低く、出庫量を増やす余地があるにもかかわらず、要求出庫量をみたしていない。

〔対策例1〕

STVの能力不足のため出庫アイルコンベヤが、常に満量に近い状態になっており、出庫できない。→STVの台数を増やす。

〔対策例2〕

自動倉庫の出庫側アイルコンベヤのバッファ数が十分でないため、STVによる搬送タクトのばらつきに自動倉庫が追従できない。→アイルコンベヤのバッファ数を増やす。

〔対策例3〕

ピッキングステーションの能力不足のため出庫要求がかからない。→ピッキング作業者を増やす。

例で示す通り、シミュレーションを実施することで、要求処理量を満たすかどうか検証することが可能です。もし、要求処理量を満たさなかった場合、これらのうち1つあるいは複数の要因によって、全体の効率が落ちている可能性がありますが、シミュレーションによって、その原因を追究します。また、どの改善策を取れば良いのか、いろいろなケースを試行することで、その効果を見極めることも可能です。
このように、シミュレーションを活用して、システムの計画段階において設備の効果を把握すると同時に、ボトルネックの把握→原因の追究→問題点の改善といった一連のプロセスを踏み、システムの効率を上げるための検討を行っています。

2.シミュレーションの特長

システムの有効性を高めるために行っている当社シミュレーションの特長を紹介します。

シミュレーションの精度の向上

シミュレーションにおいてモデルと実機の整合性は重要なポイントです。当社では、①速度や加減速度など設備のハード面における数値を合わせること、②ピッキング作業や現場の運用、実機の制御を組み込むなど、ソフトの面で考慮をすること、③納入後に現場調査を行い、シミュレーションと実機の比較を行う(図3) といったことを行っています。こうしたことによって、第3者機関からモデルの妥当性を認定されるなどの評価を受けた実績もあります。

図3: シミュレーションと実機の比較

図3: シミュレーションと実機の比較

個々のシステムごとにレイアウトやロジックを検討

また、個々のシステムに適したレイアウトやロジックの検討を行っている点も特長のひとつです。マテハンシステムはお客さまごとのニーズを反映した、いわばオーダーメイド品であり、システムごとに個性があります。
当社の標準的なロジック以外にも、個々のシステムに合わせたレイアウトやロジックなどを検討し、システム構築にフィードバックしています(図4)。

図4: システム計画へのフィードバック

図4: システム計画へのフィードバック

製品開発にも利用

新機種を開発する際にシミュレーションを使用している点も特長の1つです。開発中の機種をシミュレーションで評価し、そこから得られた問題点を開発機種にフィードバック。実機の制御レベルで改善策を提供しています。このようにして、製品をより有効なものにするとともに、社内の試作やテストなどの工数を削減。開発期間を短縮してよりよい製品を迅速に供給できるようにしています。

3.シミュレーションの事例

事例として、物流センター、生産工程、人を対象とした3つのシミュレーションを紹介します。

物流センター

1つ目は、海外大手スーパーの物流センターの事例です(図5)。
本センターは、パレットを自動倉庫から出庫し、ケース単位にデパレタイズした後、カゴ車別品種単位に自動で出荷するシステムです。シミュレーションでは、システム全体のプロポーション決定はもちろんのこと、RMのスペック、STVの台数算出などを行い、設備の仕様を確定しました。また、シミュレーションを行う過程で、単体設備としてみれば処理能力が十分足りていたケース反転装置がボトルネックであることを発見し、装置の能力アップや装置前後のストレージ数を追加するなど対策案を計画にフィードバックしました。
システム計画時にこのような検討を行ったので、システムに対する負荷が大きいクリスマス時期のフル稼働にも順調に対応することができました。

生産工程

2つ目は、生産工程における搬送システムの事例です(図6)。
生産工程の搬送では、搬送量だけでなく、生産装置への供給にかかる時間(リードタイム)も重要です。これは、生産装置への供給が遅れることによって、装置が停止することにつながり、お客さまの生産量に影響を及ぼすからです。

本事例の搬送システムは、自動倉庫から生産装置に対して原材料を供給し、処理終了後、製品を回収し再び自動倉庫へ格納するというシステムです。通常、生産装置を停止させないためにはバッファを確保することが多く、この事例では運用上、妥当なバッファ数を求めました。搬送要求が集中するような悪条件を想定し、バッファ数を変更して実験を行い、リードタイムが間に合うのかどうかを検証しました。(図7)

また、生産工程における搬送システムでは、「生産量増加による影響を調べて欲しい」など、納入後に再びシミュレーションを依頼されることが多い分野です。一度シミュレーションモデルを作っておけば、将来における依頼にも迅速に対応することができます。

このようにしてお客さまの要望に対応できるのも当社の強みになっています。

“ヒト”の動き

3つ目の事例は、病院における人を対象としたシミュレーションで、筆者によって米国シミュレーション学会のヘルスケア部門で報告したものです(図8)。

事例の病院では、病棟の建て直しがあり、現在の病棟から新病棟にレイアウトが変更されることになりました。これによって、外来患者の動線がどのように変化するか、また、診療の待ち時間を短縮するにはどうしたら良いかといったことが問題点でした。診療時間や会計時間など現状のデータを基に将来的なレイアウトをモデル化し、患者の待ち時間を減らすために、予約システムの導入によって患者の到着間隔が変化した場合の効果の測定や、窓口数の数量を検討するなど、患者・スタッフ両面から、待ち時間短縮の分析を行いました。

こうした、患者の診療待ち時間削減をはじめとする病院の効率性を対象とした研究は、シミュレーション分野において近年注目されています。

4.おわりに

シミュレーションには、

  • ①システムの動作や能力を事前に予測できる
  • ②システムに影響を与えている要因の把握や追求ができる
  • ③複雑なシステムを取り扱うことができる

などのメリットがあります。当社では、シミュレーションを活用し、提案システムがお客さまの望まれる最適なシステムになっているかどうか検討するとともに、さまざまな変動要素に対する影響を事前に検証しています。さらにこうした検証結果をリスクの回避や、経営的な意思決定に役立てていただきたいと考えております。

今後もお客さまの要望に応えながら、よりスピーディでより精度の高いシミュレーションを行えるよう技術的な発展に努めてまいります。

[参考文献]
C.D. Pegden, R.E. Shannon, R.P. Sadowski著、高桑宗右エ門訳
「生産・システムシミュレーション -アプローチとSIMAN-」(コロナ社、1993年)

< DAIFUKU NEWS No.188 (2008年7月)より >