自動認識技術のなかで、RFIDは今や実証実験段階から徐々に実用化段階へと移行しつつあります。標準化の動きとしては、EPC Global*1のTLS-BAG*2がサプライチェーンにおけるRFID標準化技術(データ形式・周波数帯・データベースとのインターフェース)と利用方法の検討、物流フィールドでのEPC技術適用による業務高速化、効率化、顧客サービス向上を目的とした活動を行っています。現時点では国内外を問わず、特に世界標準をにらんだ企業の多くは、EPC Globalの動向を静観しているように見受けられます。

一方、当社はマテリアルハンドリングにおけるRFID活用の観点から各周波数帯でのパッシブタグの特性調査、および各研究機関との連携による活用調査を進めています。本稿では、当社が現在までの実証実験から得たパッシブタグに関する見解と、これまでの納入事例についてご紹介します。

  • *1Electric Product Code Global
  • *2Transportation & Logistics Services Business Action Group

1. 実証実験で判明したこと

米国ではWal-Martや米国防総省(DoD)が先陣を切って実用化へ歩み出しているなか、国内では実用化事例が多数公表されてきたとはいえ、まだまだクローズドなエリアでの実施例が多いように見受けられます。

例えば、マテハン領域に限っても、配送センター内の特定エリアでカテゴリー(酒、アパレル、家電など)に限定した入出荷検品システム、レンタル業におけるリターナブルな商品の追跡・履歴管理システム、工場内の生産工程管理システムなどであり、プレス発表での情報はいまだ実証実験花盛りといったところです。

当社も数社のSIベンダーと共同で13.56MHz、2.45GHz、UHF帯それぞれのタグに関し、搬送コンベヤ上での読み取りにおける実証実験を進めてきました。これまでの実験で判明した内容は次の通りです。

【13.56MHz】

国内ではUHF帯の使用が認可される前から主に利用され、産業・科学技術・医療用で世界共通に割り当てられた周波数帯(ISMバンド:Industry Science and Medical Band)で動作するパッシブタグ。実験では、25m/分のローラーコンベヤ上で搬送中にタグを貼付したケース(段ボール)の読み取り/書き込みテストを行いました(写真1、2)。

  • 写真1: 13.56MHz、2.45GHz帯実験ライン

    写真1: 13.56MHz、2.45GHz帯実験ライン

  • 写真2: 13.56MHzアンテナ

    写真2: 13.56MHzアンテナ

コンベヤがもたらす影響

タグが空中にある場合、読み取り範囲はきれいな楕円形を示します(図1上)。一方、金属質のコンベヤ上で は金属の影響を受けて読み取り範囲が変形し、特に下部(コンベヤ面)では読み取り範囲 が縮小する現象 が見られます(図1下)。

タグの特性

読み取りデータ量が多く、かつコンベヤの速度が上がるほど読み取り不良率が増えます。タグへの書き込みに関しては、読み取りのみの場合の約3倍程度の時間がかかり、またスピードに対する反応も相乗的に減衰します。今回の実験では、100%読み書き可能な範囲はコンベヤスピード17m/分で56Byteでした。この結果から、走行中におけるタグへの書き込みは運用上回避するほうが望ましいと思われます。

【2.45GHz】

13.56MHzと同様、ISMバンドの1つに割り当てられた周波数帯を利用したパッシブタグ。この周波数は指向性が強い特徴があるため、リーダ/ライタの正面でしか読めない、他の周波数帯域のタグに比べて水分に極端に弱いという問題を抱えています。また、無線LANやBluetoothはこのタグと同じ周波数を利用しているため、同時に利用した場合、電波干渉が起こるという問題があります。実験は、13.56MHzと同様の環境でタグを換えて実施しました。

タグの特性

指向性が強いためかコンベヤ走行中の読み取りは、13.56MHzとあまり差はないように見受けられましたが、書き込みを行ったときは15m/分以下の速度でも100%の書き込みができませんでした。また、13.56MHzと同様に読み取りデータ量が多く、かつコンベヤの速度が上がるほど読み取り率が下がる傾向があります。

【UHF】

最大数mとパッシブタグの中では最も通信距離の長い周波数帯で、主に欧米で利用されているRFIDタグ。国内ではたった2MHz枠ですが、ようやく利用できることになりました。ただし、水分、金属に弱く、電波の飛びすぎや反射波による複数のリーダ/ライタ間の電波干渉(2006年1月にLBT:Listen Before Talk方式による回避策が法令化された)、また一括読み取りのため不要なタグまで読み取るなど、問題点も多く存在しています。

ISO&ISO/IEC StandardsのThe Layers of Logistics Unitsでも、Layer 0~Layer3までがUHFタグを前提とした形でまとめられています(図2)。

実験では、走行中(80~140m/分)のローラおよびベルトコンベヤ上のケース、コンテナに貼付したタグを読み取る実証実験を行いました(写真3、4)。

  • 写真3: UHF帯実証実験

    写真3: UHF帯実証実験

  • 写真4: UHF帯実証実験

    写真4: UHF帯実証実験

アンテナ特性

実験では、側面読みよりも上面読みの方が良い結果が出ました。これは金属コンベヤの影響を回避するために、極力離れた場所からの読み取りが必要ということなのかどうかは、今後とも掘り下げた検証を行っていく必要があります。

荷間ピッチ

荷間ピッチが狭い場合、複数個のタグを一括読み込みしてしまい、処理時間が単一読みに比べ増加。その結果、読み取り不良率が高くなりました。つまり、走行スピードの問題より、荷間ピッチを狭くし、かつ複数同時読み取りを行わない工夫をする必要があります。今回の実験では、コンベヤスピード140m/分、読み書きの最良状態で約4mの走行範囲内でタグを認識していたという結果が出ています。

書き込み特性

RFIDの大きな特徴である書き込み機能に関しては、極端に大きいデータ量でない限り、コンベヤ上を流れる搬送物に取り付けたタグに対しての書き込みは実用化レベルにあると思われます(32バイト時R/Wトータル400ms)。ただし、同じUHF帯タグでもメーカー、形状、アンテナの特性の違いで、一概にすべてが合格とは言えません。実用化のためには必ず選定商品に対しての事前確認が重要です。

搬送物特性

搬送物特性による読み取り精度は、段ボール詰めのペットボトルがやはり不良率が高く、折り畳み式コンテナなどの容器搬送に関しては、内容物(特に水、缶類)にかかわらず読み取り不良は見受けられませんでした。

これらの実証実験から得た問題点は、マテハンシステムにタグが入り込んでくる限り、必ず解決しなければならない内容です。タグを導入した結果、生産性の低下、運用の大きな変更を招くようでは普及もままならないでしょう。また、金属の塊であるマテハン機器の中で、無数のタグが泳いでいるさまを想像すると現状の問題点の解決が急務であり、使命感を持って取り組まなければならないことを痛感しています。

2. 物流システムへの応用事例

当社がこれまで納入した半導体業界(工程間搬送)、自動車業界(組立ライン)、流通業界(配送センター)の中から、2件の事例を紹介します。本事例は、クローズドシステムで少々特殊な使用方法ですが、今後RFIDの本格的ブレークと流通システムへの活用に向けての助走となり得えます。

【自動車生産ラインシステム】

1980年代終わりころからエンジンや車体の組立ラインでRFIDが利用されており、多仕様・混流生産の中で1台1台の識別管理が行われ、コンベヤ制御・仕様指示・品質情報収集などに使用されてきました。

まずエンジン組立・検査ラインや車体塗装ラインでは、油や塗料による劣悪環境の中での分散制御/信頼性の向上のために、RFIDが浸透しました。当初から通信距離20mm~1m、常温/200C°耐熱タイプ、パッシブ/アクティブタグも存在し、ライン特性に合ったRFIDが採用され、利用されてきています。

また、タグの記憶容量の増加に伴い、当初は主にコンベヤ制御や仕様指示に使用されていましたが、現在では車両組立ラインでの仕様指示や品質情報収集にも使われています。

現状のRFID利用はあくまで生産ライン内に留まっており、出荷段階ではエンジン・車両ともバーコードに置き換わっているようです。一方、カンバンに代表される部品調達物流では依然としてバーコードラベルが主流ですが、一部の重要内製部品ではレーザー打刻によるロット管理、およびRFIDを利用当社では、自動車メーカー各社のRFIDのインターフェースを制御システムや情報システムに組み込み、一括システムとして納入してきました。また、搬送台車制御ではRFIDを採用した独自のアンテナ・コントローラを開発、制御コンポーネントとして納入しています。

【選果場搬送システム】

2001年に納入したJAの配送センターにおいて、搬入されたケースはものの特性上、

  • これまでのバーコードでは生産者が正しく貼付できない
  • ラベルをはがす必要がある

などの問題がありました。そこで果実の選果システムにおいて、RFIDの利用が検討されました。

センターに搬入された生産物の生産者コード・品種・コンテナ数を設定器で入力することで、この情報をRFIDタグに書き込みます。書き込んだタグを果実と同じ形をしたプラスチックケースに入れ、生産者単位の先頭コンテナの中に投入した形でコンベヤ搬送します。選果ラインの手前でこのタグを読み、生産者コンテナ単位に該当ラインへ自動仕分けを行いますが、タグが載せられているコンテナに段差があるため本来ならばアンテナを複数台設置して読み取るところを、逆にアンテナを高さ方向に可動させて調整しています。当時はタグリーダがまだ高価で、複数リーダを取り付けるより可動式にしたほうが安価でした。選果は1個単位で行われますが、ここでボール型のRFIDタグを回収する仕組みです。なぜボール型なのかはご理解いただけるでしょう(図3)。

3. 今後のRFID活用の課題

人、もの、情報のコラボレーション

RFIDの活用を考える場合、ものにタグを付け、単に読み取りをかけるだけでは済みません。情報システムおよび人とのかかわりをいかに連動するかが重要です。例えば図7に示すように、人、もの、情報が一体化することにより、効率的な運営、生産性の向上、業務処理レス、最適人員配置が見込まれ、全体の物流コスト削減に寄与することができるのです。

物流センターの概念の変化

RFIDの発展により、まずどこに、何が(誰が)、どれだけあるか(どこにいるか)がリアルタイムに分かることになります。また、現在何がどうなっているかが分かるようになり、変動事由が加わることでリアルタイムな予測が可能になってきます。このような変化により、全体在庫の圧縮が起こり、全体生産性が飛躍的に向上、さらには自動化(自動検品など)の流れに繋がっていくと考えられます。

自律走行ロボット

ケース単位に貼付したICタグにケースサイズ、重量を書き込み、物流データとして活用すると同時にケース位置データとして利用。これによりパレット位置検知とあわせてロボットによる自動ランダム積み付け、トラックからの自動積み下ろしなどに利用することが可能となり、省人化、省力化に大きく貢献することが期待されます。

このように、RFIDの潜在的能力を引き出すことにより、マテハンシステムとRFID(含むセンサ)が融合します。当社では国内はもとより、グローバル市場に対してマテハンシステムの生産性を飛躍的にアップさせるシステムモデルを2~3年のうちに実現するため、今後とも技術開発を進めていきます。

図4: 人、もの、情報のコラボレーション

図4: 人、もの、情報のコラボレーション

< DAIFUKU NEWS No.180 (2006年6月)より >