東日本大震災(東北地方太平洋沖地震:M9.0)では、揺れの影響が広範囲にわたったことと、これまでの地震より継続時間が非常に長く、また大きな余震が連続して起きたことで、保管貨物の荷崩れがクローズアップされました。保管貨物自体の価値の損失、復旧費用の発生はもちろんのこと、物流の停滞といった被害が発生したことは、社会生活あるいは産業構造へ大きな負の影響を与える結果となりました。

このことを踏まえ、2013年度に改正された国土交通省の「物流総合効率化法」では保管貨物の荷崩れ防止対策が新たに追加されています(図1)。物流設備専業メーカーとして、特に保管のためのラック設備の開発・設計に長年携わってきた者として、地震による保管貨物の荷崩れ防止への取り組みと新たな対策機器について紹介します。なお、パレットなどを使った保管貨物を対象としています。

■ 保管貨物の荷崩れ防止策(国交省「総合効率化計画 認定申請の手引き」より)

地震による貨物の荷崩れのおそれがある場合は、これを相当程度防止するために次のいずれかのものを有すること(保管スペースの大半をカバーすること)。

  • *免震構造または制震構造である場合は、貨物の荷崩れのおそれがないものとし不要。
物流総合効率化法改正のポイント

図1: 物流総合効率化法改正のポイント

地震による荷崩れの状態と対策概論

まず、地震による荷崩れの状態を整理してみます。

1. 保管貨物の荷崩れとは

  • a. 倉庫床に直置きの貨物が建物の揺れでパレット上の荷が崩れる
  • b. 保管棚上の貨物が保管棚の揺れでパレット上の荷が崩れる、あるいはパレットごと落下する
  • c. 保管棚など本体が転倒、倒壊する
  • d. 建物が被害を受けて、保管されている貨物が荷崩れする、あるいは保管棚などが転倒、倒壊する

2. 荷崩れを防止するには

上記1を踏まえて対策を考えてみます。何といっても、保管貨物自体つまりパレット上の荷を崩れにくくすることが第1です。その手段としては、ストレッチフィルムなどを使って荷がずれないようにすることです。ただし、これは流通過程でのピッキング作業などへの阻害要因となります。この場合、上部だけのストレッチフィルム巻きであったり、バンドで鉢巻きしたり、袋状のものをかぶせるなどの荷の形態、流通過程での作業の状況に応じて、適切な対応をすることで荷崩れ被害を最小にする対策が望まれます。

一方、建物については免震、制振構造を採用することで大きく揺れる、倒壊するといった根本的な被害を最小限にすることができます。特に、免震構造の建物の場合は保管貨物、保管設備、さらには情報設備など建物内すべてのものの被害が最小となり効果は絶大であるといえましょう。しかし費用はそれなりに必要であり、効果とのバランスを検討する必要があります。

保管棚については、保管貨物を物理的に落下しないようにする、揺れた場合に保管貨物への衝撃を少なくする、保管棚が揺れないようにする、などの対策が研究・開発され、実際に納入されています。

保管棚での対策について

では、今回の法改正により対象となった「保管貨物の荷崩れ防止策」について紹介します。

1. 保管棚自体を揺れにくくするために

a. 保管棚の免震化

建築床の上に免震層を設け、その上に保管棚を設置するものです。これにより建築床は地震動によって激しく揺れても、免震層により縁を切られた保管棚はゆっくりと揺れる程度でその加速度は大きく減じられます。この免震層の機構については、数種類の方式が開発され(図2)、提案・納入されています。

ただしこの場合、地震の後に元の位置に戻るのか、その必要があるかは免震機構を選択する上で重要なファクターになります。また保管棚の背が高いラック式倉庫では、保管貨物の格納状況によって鉛直荷重やその固有周期が大きく変動することになるので、積層ゴムなどを使った周期依存型の免震機構は好ましくありません。

弊社の免震ラックと称した商品では、土間や構造スラブなどの床(建築床)の上にアイソレーターという装置で支持された鉄骨造の床(免震床)を設けて二重床とし、免震床の上にラックを構築します。アイソレーターには低摩擦のボールベアリング式支承を採用し、360度の柔軟な水平移動を可能とするとともに、支承の移動方向に軽い上り勾配を付けることで、地震振動が収まれば原点に復元するようになっています。

ラック式倉庫の場合はほぼ完全に元の位置に戻らないと、免震部分の搬送システムと非免震部分の搬送システムの間にズレが生じ、搬送物の移載に支障を来たす可能性があることから、システムを継続利用するためにも「復元機能」は重要なポイントとなります。

また、もう一つの重要な機能として地震エネルギーを吸収するダンパーを設けています。ダンパーには粘性減衰を利用したオイルダンパーを用いることで、機構としては速度依存型となります。この組み合わせにより上部の荷重変動による影響を受けず、上部構造の自重により原点に戻る免震装置は、ラック式倉庫に適した免震装置であると考えています。

免震機構代表例比較(ラック式倉庫に対する評価)

図2: 免震機構代表例比較(ラック式倉庫に対する評価)

b. 保管棚の制振化

ラックに制振材を組み込むことで保管棚の揺れを抑えるものです。制振による揺れ防止効果は免震ほどではありませんが、より安価で既設のものへの追加も可能ということで開発されました。制振材も多種あり、ラックへの取り付け個所もさまざまですが、これも揺れの大きさで固有周期が変わるといったラック式倉庫独特の振動性状を理解した上で、採用することが肝要です。

弊社ではラック上部の梁とトラス柱の接合部に制振部材を組み込むことで、変形に対して効果を発揮するシステムとしました。「減振ラック」(図3)と呼んでいます。これは、ラックの固有周期の変化であるとか、それぞれの地震波の特性がどうかといったことによるラックの応答がどうであろうと、ラックが変形すればするほど効果を発揮するため、明確なシステムといえます。

2.荷受部でのパレット落下防止、荷崩れ低減策

従来より機械通路部への飛び出し防止およびパレットの落下防止のため、荷受部に固定ストッパーを設ける対策は行われています(図4)。これは、パレットとその上に積まれた荷がストレッチフィルムなどで一体化されている場合は特に効果的です。そうでない場合は、ストッパーに当たった時の衝撃でパレット上の荷がずれて、最悪の場合荷崩れが起こることが考えられます。

社内で実際に効果を確認するために加振実験を行っています。固定ストッパーとストレッチフィルム巻きを施した場合には、600gal程度までの揺れでは荷崩れ、格納物の飛び出しはありませんでした(ラック上部600galは、地表面の震度階5弱程度の中地震相当)。その結果の一例を図5に示しています。

このようにストレッチフィルム巻きが施されている保管貨物は、固定ストッパーが設置されていれば、パレットの機械通路側へのはみ出しや荷崩れに対して非常に効果的です。しかし、実際には後工程や流通過程でのピッキング作業や積み替え作業への不便さにより、完全なストレッチフィルム巻きが実施しにくい場合もあります。上部のみを巻く場合でも、社内の実験ではそれなりに荷崩れに対して効果があることは分かっていますが、パレットが荷受材の上を滑ってストッパーに当たった場合に上の荷がずれて、それが累積することで荷崩れすることは十分想像がつきます。そこでストッパーを改善することでパレットをソフトに受け止め、上部の荷のずれを抑える仕組み「減崩ストッパー」が開発されました。減崩ストッパーは、パレットの機械通路側へのはみ出しや落下の防止に加え、荷崩れによるケースの落下を低減する効果があります(図6)。その上、製品が安価に提供できるようになりました。

このようにラック式倉庫などの保管棚では、免震システムを組み合わせて保管棚自体があまり揺れないようにすることが最も効果的です。一方、制振システムを組み合わせる場合は、免震システムほどではないですが揺れを抑えるということでは効果があります。ただし、ラックで構成された保管棚と各棚に置かれているだけの保管貨物は、揺れた時に荷が動いたり、保管の量、位置の関係でその構造的状況は振動という切り口では、その時々で異なります。さらに、ラックの特性も静的に評価する剛性(硬さ)と動的な状態とは違っていることが経験的に分かっています。机上の計算と振動台で揺らした時の挙動が違って、一から開発を見直した経験もあります。メーカーとしてそのような特殊な条件を持つ構造物であることを理解した上で、免震、制振システムを研究、開発してきました。

以上、保管棚を揺れにくくする対策と、荷受部でのパレット落下防止、荷崩れ低減策について説明しましたが、これらの対策から選択したり、組み合わせることで保管貨物の荷崩れを減らすことができます。ただしその効果については定量的に説明しているものもありますが、あくまで最大の効果であり、完全に荷崩れを起こさなくする対策ではないことをご理解ください。

  • 固定ストッパー

    図4: 固定ストッパー

  • 固定ストッパーでの保管貨物の挙動比較

    図5: 固定ストッパーでの保管貨物の挙動比較

おわりに

保管貨物の荷崩れ防止の対策については、ストレッチフィルム巻きなどを行うことが一番効果があります。しかし、現実的にはできないものもたくさんあるため、保管棚を揺れにくくしたり、荷受部のストッパーでの衝撃緩和を設けることで荷崩れを低減することができます。

その効果については、地震というさまざまな要素を含む外力を対象とするため、対策を提供する側はラックなどの保管棚の特性を理解した上で、開発、提供する必要があります。その時、その場所での地震動が持っているいろいろな周波数の波のうち卓越している周波数と対象の構造物の固有周期が近いと、大きく揺れて地震被害に結び付くものです。

一般的な建築物などは、構造剛性に対して固定荷重と自重でほぼ固有周期が決まります。ところがラック式倉庫では、ラック自体の剛性も揺れの大きさで変化していき、荷重については積載荷重が固定荷重を含めた全体荷重に占める割合が非常に大きいため、その時々の荷の格納状況により固有周期の変動幅が大きくなります。また、荷が荷受材に載っているだけなので、揺れがある程度大きくなると滑りが生じたり、パレット上の荷も動揺することで、共振して大きく揺れ始めると固有周期がずれて共振しなくなるといった自己が持つ制振性能が報告されています。よって、固有周期にあまり左右されない仕組みの免震、制振システムがラック式倉庫には向いているといえます。

地震動には振動数の変化形状、分布、その中での卓越周期、振動の強さ、継続時間という入力条件と、受ける側の保管貨物の形状、積み付け状況、各接触面の摩擦係数、重量、それらから決まる固有周期が絡んできます。どういった条件であれば荷崩れしないのか、落下しないのか。その評価は非常に難しいため、一般的には何も対策しない場合の応答加速度や応答変位がどのくらい減じられるかという表現になります。この荷崩れを起こさない条件の追求は今後の課題といえましょう。

< DAIFUKU NEWS No.207 (2014年1月)より >

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